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それから後のこと
慣れぬ山道で擦り傷だらけになりながらも、イツキとハルヤはナギの村へとたどり着いた。突然現れた都人の姿に村は驚いたが、彼らがナギの友だと知るとあたふたとスグリを呼んだ。
ナギが自分たちを守るためにその身を投げ打ってくれたのだと……イツキがそう告げれば、スグリは俯いて目を閉じた。
「そうですか……本当に、弟は立派になった」
スグリは泣き笑いの顔でイツキとハルヤを見、手を握った。弟が大切にした人たちだからと、彼らを家に招いた。
数年の月日が流れた。イツキはハルヤとめおとになり、共にスグリの家を盛り立てていた。
ハルヤと並んで畑を耕しながら、イツキは思う。彼が過ごすことの出来なかった残りの人生を、自分は代わりに歩んでいる――ならば精一杯生き抜くことが己の定めなのだろう。そう、胸のうちで呟いた。
「イツキ兄、ハルヤ、昼餉だよ!」
家のほうからナミの呼ぶ声がした。玄関口ではスグリとミツ、彼らの母が並んで立ち、こちらに向かって手を振っている。イツキは額の汗を拭った。
「行こうか、ハルヤ」
「はい!」
手を取り合い、二人は家族のもとへ向かった。