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16章 記述する状況

 僅かな時間とはいえ<囁き>の力でシスターと交信し、知り得た情報。

 一つ、残りの村人は怪我をしているものの無事である。

 二つ、自分達を洞窟に拉致してきたのは羽根の生えた魔族の力。

    (おそらく幻覚と催眠作用のある鱗粉ではないか、との考察)

 三つ、上記の力が効かない者は死なない程度に痛めつけられた後、強靭な

    粘着性の糸によって束縛されている、とのこと。

 以上をミラナさんはシスターテルマから聞き出すことに成功していた。


「良かった……生存者がいて。

 わたし達の……サリアの努力は無駄じゃなかった……」

 赤く腫らした目元をこすりながら彼女は微笑んだ。

「でもどうしますか、ミラナさん。相手はおそらくかなりの手練れ(中~上位魔族)。

 エメリアさんやメルと連絡をとって連携を図った方が良いのでは?」

「あ、そのことだけど。今丁度二人から連絡が<記し>で着たみたい」

「<記し>?」

「そう。運命石には幾つかの秘められた「力」がある。

 有名なところだと「石」を通じて「意思」を伝える<囁き>。

 石を通して意志ある者を探索できる<導き>。

 その数ある中でも<記し>は発動条件が難しい。

 縁を結ぶべき相手と共に、運命石を一部とはいえ永遠に失わなくはならないから。

 でもその効果は抜群よ。

 一度きりの<囁き>とは違い、文章とはいえ<記し>は幾度も使えるから。

 シャスくんも見てみる?」

 胸元のペンダント型の運命石に手をやりながら応じるミラナさん。

 雨に濡れた僧衣が身体のラインを艶かしく浮き上がらせていた。

 結構大きい。

「え、ヤダもう! シャスくんのエッチ! そういう意味じゃないってば!」

「あ、えと、あの。すみません」

 何だか最近、頭を下げてばかりな気がする。

「む~……でも、今のはわたしが悪いよね。誤解を招く言動だったし。

 はい、これが<記し>の力だよ」

 言って運命石に手を乗せ滑らせる。

 するとどうだろうか?

 石自体が淡く発光し、宙へ文字を描き始める。

 それは複雑な曲線を描きながら、やがて意味ある文章となった。

 そこに書かれていたのは、

『ミラナへ。これを読んでいるという事は、無事に魔族を撃破できたという事ですね。

 どうやら辺境を境に、魔族による同時多発侵攻が始まったようです。

 私の執務室にも次々と聞きたくない報告が上がってきてます。

 サーフォレム魔導学院の漆黒の魔人が危惧していた事がついに起こってしまいました。

 配下の者を急ぎ向かわせたものの、間に合えばよいのですが……。

 戦力が圧倒的に足りない今、神官隊をすぐに村へ派遣するのは難しい模様です。

 申し訳ありませんが、集団転移の法陣を村に刻んでおいてくれませんか?

 状況が落ち着き次第、配下の者を向かわせます。

 くれぐれも無理はしちゃ駄目ですよ?』

『という文章を読んで大人しくできる貴女達ではない、とメルファリアは指摘します。

 サリアは無事に教会に保護されました。

 王都も辺境で勃発し続けている魔族侵攻の知らせに浮足立ち始めてます。

 ギルドの他のメンバーに<記し>を行いましたが、皆さん事態の収拾にてんてこ舞いな御様子。

 メルファリアも有力な冒険者達に交渉し、辺境へ討伐に向かわせるよう各機関からの要請があった為、動かざるを得ません。

 村人の解放の為に自由に動ける戦力は今現在貴女達3人だけです。

 最善を尽くしても万全には至らない我らですが、いかなる時もそこで諦めるんじゃなく自らの為せる事を全力で為す。

 その鉄則を忘れず事態に立ち向かって下さい。

 ただ、命だけは大切に。

 また皆で夕食を囲みましょう』

 という文章であった。

「同時侵攻とは……やってくれるわね。

 やっぱりわたし達で何とかするしかないみたい。

 魔族撃破の為、もう一度力を貸してくれる、シャスくん?」

「聞くまでもありません。当然です」

「ありがとう……本当に、もう少年じゃないのね。

 何だか……心強いな……」

 不安、だったのだろう。

 いつの間にか追い越し、私より低い位置にあった頭をコツン、と胸元に当てられた。

「さっ、そうとなれば早く洞窟へ向かいましょう。

 早く残りの人を解放してあげたいしね!」

 思わず撫でようとした手を擦り抜け、後ろ手に悪戯めいた微笑を浮かべるミラナさん。

(本当に風の様な人だな……)

 苦笑を浮かべると同時に先程の<記し>を思い返す。

 おそらく私にもミラナさんが文章を開示すると「読んで」いたのだろう。

 共通語でなく、私だけにしか読めないであろう東方語で書かれたメルの一文。

『追記 精神Sということは、貴方は「  」の使い手でしょうか?

 もしそうなら、申し訳ありませんが二人を宜しくお願いします』

 ……どうやら隠し事はできないらしい。

 メルファリア、凄腕の交渉人の名に恥じぬ恐ろしい御婦人だ。

いつも閲覧して頂きありがとうございます。

実は目に見えて内容が劣化してきているので、更新速度を落とすか

どうか思案中です(マメに手直しはしてますけど)。

毎日更新と3日くらいに量を読めるのではどちらがいいのでしょう?

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