私の、
三題噺もどき―はっぴゃくさんじゅういち。
外は若干の曇り。
だが、晴れてはいるので教室内は平穏が保たれている。
いや別に、今この時間外にいる人たちが平穏を破るような人ばかりだと言うわけではなく、今この時間ここに居る人たちが大抵静かというだけの話で。
数か所にできたグループ間で変にぶつかることも、冷やかすこともあからさまにはしないというだけで……女子と言うのは恐ろしいと言う話だ。
あの中で剛速球並の重くて鋭い悪口を言い合っているのだから信じられない。
「……暑いねぇ」
「ね……」
今日の窓際は少し暑い。
昼間で、陽がてっぺんに居る時間帯な事もあって、思わず夏かと錯覚するほどには暑い。
昨日もそれなりに暑かったが、今日もそれなりに暑い。2月なのに暑いと言う事がここ数日続いている。これじゃぁ、本格的な夏が来た時が恐ろしいな。
「これなら雨降った方がいいよね」
「まぁ、ね」
いつも通りの昼休み。
相変わらず私は、あの子の教室にすっ飛んできた。自分の教室に居ても暇だし、腹も減っていたのでさっさとこちらに来て弁当を囲む方が有意義なのだ。
その弁当も食べ終わり、掃除の時間までを適当につぶす時間。
「この写真とかいいじゃん」
「どれ……」
机を挟んで向かい合う形で座っている、私とあの子。
手持ち無沙汰に、いつもならスマホをいじりながらお互い話をするのだけど、今私の手元に私のスマホはない。
あの子の机の上に置かれ、操作されている。
「これかぁ……」
画面に映し出されていたのは、去年のどこかの時期に撮った椿の写真。
こういう赤い花は写真映えするのだが、一歩間違えると少々不気味な雰囲気を漂わせるのが、これまた好きでよく撮る。同じような感覚で鳥居を撮ったりもする。あまり良くないと思うけれど。
「ね、これ良くない?」
そういいながら、私のスマホを周りにいるいつものメンバーにも見せている。
まぁ、写真用と趣味用とファイルは分けているからスクロールして変なものが映ることもないのだが、不安にはなるな。
「これ――ちゃんが撮ったの?」
「そうだよぉ」
「えーすごい」
「見せて見せて」
初めの問いに答えたのは私ではなく、スマホを見せているあの子だ。
わやわやと集まりだす。私よりうまく撮る人はこのクラスに居るので、それを見た方がいいと思うが……私の写真は正直ただの自己満足で撮っている。それをよくこうして話題にしてくれるものだ。
「……」
「これとか、これとかぁ」
「へ~」
私から私のスマホがどうなっているのか見えなくなった。
今どの写真を見せているのか全く分からない。
ヘンな写真は撮っていないが、先に言ったように自己満足なので。
「でもやっぱこれ好きかなぁ」
そういいながら、私のスマホをこちらに向ける。
そこに映っているのはいつか撮った向日葵の写真。
陽に照らされる黄色の大きな花びらが、ほんの少し水にぬれてキラキラと輝いている。
「……それは向日葵好きなだけじゃんw」
「それもあるけど、普通にいいじゃん」
これを撮ったときのことは今でも覚えている。
暑さのせいで、麻酔にでもかかったかのように若干意識が朦朧とした中で。
汗もすごくて、喉が渇いて、日陰にさっさと入ろうとしたときに。
ふと視界に入った、大きな向日葵。
太陽の下で明るく咲くその花が、あの子にそっくりだと思って。
「……でもそれは無理」
「なんでぇ……」
そういいながら、また写真を見ていく。
なぜあの子に写真を見せていたのかと言うと、大会に出す用の写真を選んでもらおうと思って見せていたわけで。私の主観のみで選ぶと趣味に走ったよくわからないものになりかねないので、他から選んでもらおうと思っての事だった。
まぁ、他の部員や顧問にも見てもらいはするけれど。
「……それは私のものだからね」
「ん?なんか言った?」
「何も言ってないよ、」
向日葵は。
私のものだから。
他に見せるなんて……ね。
お題:剛速球・椿・麻酔




