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リピート  作者: 羽越世雌
3/5

2話

 十二月六日(火)三時に起床。九時までに寝て、三時に起きるスタイルになってかなりになる。ここからが趣味の時間の始まりである。トイレを済まし、書斎のコンピュータの前に座る。先ずはニュースのチェック。新聞の購読を止めて暫くになるが、全く不便は感じない。やめた理由は広告の多さ。毎日、読みもしない大量の広告が、新聞の倍の量配達される。ネットニュースはスマホでも随時チェックできて便利だ。ざっとニュースのヘッドラインを見るが、昨日のニュースと変わらない。「なんだ昨日と同じニュースばっかり」と独り言。どうやら新しい大きなニュースはなさそうだ。

 二、三日遅れのドラマやアニメをオンデマンドや録画したもので観る。ドラマは十タイトル、アニメは五十タイトルからふるいにかけて視聴する。番組改編期は合わせて六十タイトルの第一話をチェックするのが大変である。

 一階に降りて、コーヒーメーカーをセットする。コーヒー豆にも拘りがあって、最近はケニアのガチャミ農園の豆を愛飲している。風呂の掃除をしてお湯をはる。お湯がはりが終わるまでに朝食をとる。夕べのおでんを食べようと台所に行くがおでんの鍋がない。「あれ全部食べちゃったのか」仕方がないので食パンを焼く。拘りは立て三本、横三本の切れ目を入れて焼く。焼けたら緑果オリーブオイルを垂らし、岩塩を少々ふる。パンを食べて、コーヒーを飲み、お風呂に入る。

 五時二十分、妻を起こして、身支度をして仕事に出かける。時間通りの朝のルーティンワーク。玄関を出て、隣近所を見るとゴミが出されている家がある。「あれ火曜日なのにおかしい」と思うが、「あっ、不燃ゴミだ」と納得する。「まだあまり溜まっていなかったので、次の機会でいいだろう」

 駐車場の車に乗り、まずは給油のためセルフのガソリンスタンドへ行く。こんな早朝からガス欠は嫌だ。でもなぜか警告ランプが点灯していない。「あれ、昨日の帰りには点灯していたのに」まだ大丈夫と判断して、そのままいつものコンビニへ向かう。

 コンビニに入り、雑誌のコーナーで『少年ジャンプ』を立ち読みしている人の後ろを通って、お茶、おにぎり、弁当の順番で取って購入する。再び車を職場に向かって走らせる。

 音楽を聴きながら、飛火野にさしかかる。昨日、鹿が飛び出してきて急ブレーキをかけたことを思い出し減速する。案の定、今日も鹿が同じ所から飛び出してきた。昨日と違うのは一頭だけだったので、なんなく回避する。「やっぱり。減速して正解」六時前に職場に到着。

 実はわたしの職業は高校教師だ。この時間、校舎の警備保障のセットを解除して、清掃を始めている業務員の方以外、まだ誰も出勤していない。勤務時間は八時二十分からである。先ず、出勤簿に押印しようと、教頭席に向かう。学校現場は旧態依然の紙の出勤簿に押印するスタイルである。教師の膨大な時間のサービス残業が浮き彫りになるため、タイムカードやICカードなどは導入できない。

 毎日必ず押印しているはずなのに、なぜか昨日の欄が押印されていない。こんなことを忘れるとは、「私も年かな」と実感する。月、火の両日の欄に押印し、自席でコンピュータを起動し、仕事の準備を始める。学校は今日から期末考査が始まる。自分の担当教科のテストは二日後なのだが、昨日考査問題の最終校正をして、本日印刷の予定である。校内サーバー内の考査問題のファイルを開いて、もう一度チェックする。すると、昨日最終校正をしたはずのところが、変わっていない。保存するのを忘れたのか。バックアップファイルを探そうか。「いや、少しだけだ、もう一度校正した方が速い」と、急いでかたづける。

 そうこうしているうちに、外が少しずつ明るくなってきた。早い職員が出勤してくる。挨拶をして外に出る。職場の近くの神社に参拝して、その後近辺を四十分から一時間かけてゆっくり散歩をして、学校に戻る。

 八時二十分、オルゴールチャイムが鳴り、職員全員が起立して、職員朝礼が始まる。挨拶の後、司会の教頭先生が「十二月五日、月曜日、職員朝礼を始めます。」

 「え?」慌てて、中央の黒板の日付を確認。更に携帯電話を確認。コンピュータを確認。

 「十二月五日?」

 「何故だ?」

 「そういえば今朝から気になったことがあった。おでん、ゴミ、『少年ジャンプ』、鹿、考査問題」

 「まさか、昨日へタイムリープしたのか?江戸じゃなしに」

 「とにかく落ち着こう、昨日のことを思い出しながら、同じように慎重に行動をしながら、確かめてみよう」案の定、全てが昨日とまったく同じように繰り返されている。完全に十二月五日がリピートされている。

 「どうしよう。人に相談できることではない」動揺を隠しつつ、昨日通りの仕事をこなし、昼になった。

 「このままではいけない」と、根拠のない不安に捕らわれて、恐る恐るちょっとだけ、昨日と違う行動をとってみる。歴史の修正が働くかもしれない。これもどこかの小説からの知識だ。そもそもタイムリープなんて言葉は『時をかける少女』の造語じゃなかったか。しかし、何も起こらない。

 「変化が小さ過ぎるのか?」もっと大きく変化させるために、体調不良を理由に、有給休暇をとることにする。しかし、何も起こらない。そのまま、帰宅する。途中、既に読んだ『少年ジャンプ』をもう一度購入する。家も時間は早いが昨日のままである。

 「そうだ、メニューをカレーに変えてみよう」


 おでんと同様に、酒を多めに入れた水から煮た肉は柔らかく、ルーを重ねたこくは絶品。しかし、何も起こらない。

 「修正は日にちまたぎで起こるのだろうか?いやいや、そもそも修正などは起こらない。パラレルワールドに移行したのか?それとも、永遠に十二月五日をリピートするかもしれない」ビールを飲みつつ、不思議を思うがわけがわからない。しかし、原因は月曜日にあるはずだ。自分が故意に変更した以外の違いはなかったか。唯一の違いは鹿。白い鹿が飛び出してこなかった。これが原因なのか。こんなこと、誰に話しても、信じてもらえないだろう。

 二本目のビールを取り出し、テレビの前へ。長男が帰宅し、一言二言、言葉を交わして、『少年ジャンプ』受け取り、二階の自分の部屋へ上がって行く。昨日と同じだ。妻が帰宅したので、夕食は食べずに二階へ。ベッドに横になるが、読書が手につかない。

 「せっかくのチャンスを無駄にしてしまったのではないか?」

 「同じ日をやり直せたのだから、もっと有効に使えたのではないか?」。

 「明日はどうなるのだろう。また月曜なのか?それとも火曜日になるのか?」そんなことを考えながら、数分でうとうとし寝てしまった。


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