表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~  作者: ぱすた屋さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/53

第18話:中間決算(ミドル・クローズ):罪人たちの自白

 


 16時30分。

 旧館の電源が落とされ、ルークとの通信が途絶してから15分。

 私は暗闇の中、予備の魔導ランタン一つで窓口に座り続けていました。


「……ルーク、返信がないのは減点対象ペナルティですよ。ですが、あなたが命がけで『同期』させた断片的なデータ……確かに受け取りました」


 私は手元のメモに、ルークが最後に叫んだ名前を書き記しました。

 十年前の報告書、黒塗りにされていた受取人の名前。……そこには、『セレン・アリス』と記されていました。


(やはり。あの少女の名前は偽名ではなく、英雄アリス様の正当な血筋……本名だったわけですね)


 私は呼び出しベルを三度、静かに、しかし威圧的に鳴らしました。

 生き残った五人の代理人たちが、怯えた顔で広間に集まってきます。


「……何の真似だ、受付嬢。ルークという小僧はどうした?」

 ジャイルズが震える声で尋ねます。


「ルークは現在、物理的なアーカイブ(旧館)にて、皆様の『不備』を修正するための作業に従事しております。……。さて、皆様。これより緊急の中間監査ミドル・クローズを開始します。全員、カウンターの前に並びなさい」


 私は冷徹な事務官のオーラを全開にし、彼らを一列に並べさせました。


 ---


  【中間監査:十年前の『不正アクセス』】


「現在、本件の手続きは致命的なシステムエラーにより『無期限凍結』の状態にあります。理由は、皆様が十年前、アリス様の『死亡』に際して行った、大規模なデータ改ざんです」


「な……何を馬鹿な! 私たちは正当な手続きで……!」

 マリウス商人が叫びますが、私は【残響の波紋】で、彼の声に混じる「油ぎった嘘の灰色」を正確に射抜きました。


「マリウス様。あなたはアリス様の隠し資産を横領するため、偽の請求書インボイスを乱発しましたね。

 ファスト医師。あなたは『事故死』に見せかけるため、虚偽の死亡診断書を発行した。

 エレノア様。あなたはギルドの監査官という立場を悪用し、生存記録ログインログを完全に削除デリートした。

 ……。そしてジャイルズ様、ヴァンス様。あなた方は『実力行使』で彼女をこの極北へ追い詰めた」


 私の言葉が紡がれるたび、彼らの顔から血の気が引いていきます。


「……アリス様には、娘がいたはずです。皆様は財産を独占するため、その娘の存在すら『事務的に抹消』した。……違いますか?」


 沈黙。

 その静寂を破ったのは、ファスト医師の嗚咽でした。


「……あ、ああ。そうだ。あの娘は、アリスの死後、この建物の地下に閉じ込められたんだ! だが、数日後に見に行ったら、もぬけの殻で……! 以来、このギルドには『見えない子供』がいるという噂が……!」


「……。十年間、このギルドの『空白のスペース』で、誰かが生き続けていた。……。今、皆様を一人ずつ『ログアウト』させているのは、その時に消されたはずの『八人目』です」


 その瞬間。

 広間のシャンデリアが激しく揺れ、消えかけていた魔導照明が、一瞬だけ「真っ赤なエラー色」に染まりました。


『……正解。さすが王都の事務官さん、処理が早くて助かるわ』


 天井の通気口から、あの日聞いた少女の声が降ってきます。

 代理人たちは悲鳴を上げ、パニックに陥りました。


「……皆様、落ち着きなさい。パニックは業務の非効率を生むだけです」


 私は動じることなく、虚空に向かって告げました。


「セレン様。あなたの『社会的復讐』は、事務的には理解できます。ですが、現在私の部下であるルークを不当に拘束している件……これは『業務妨害』として、見過ごすわけにはいきません」


 17時まで、残り30分。

 私はペンを置き、カウンターから一歩前へ踏み出しました。

 窓口の内側という「聖域」から出るのは、これが初めてのことです。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


本作を応援してくださる方は、ぜひブックマークや下の評価【☆☆☆☆☆】をいただけますと幸いです。


次回お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ