ライナの研究報告 スノーヴァインド・リザード(変異種)
種名:スノーヴァインド・リザード(変異種)
発見場所:北方ガルド高原・氷谷地帯
観察日:コド暦23年・枯花月 下旬
1. 外見的特徴
体長:約3メートル。通常のスノーヴァインド・リザードに比してやや小型。
体表は灰色を基調とし、表層の鱗には霜結晶が走る。鱗間より魔力性の冷気が漏出し、呼吸のたびに白い蒸気を発する。
背部には凍結した結晶状の突起が連なり、外光を反射して淡く青白く輝く。
観察中、鱗片の表面温度は氷点近くで推移。明確な冷気耐性を持つ
2. 生息環境と行動特性
主な生息域は氷谷の奥部、気温−20度前後の環境。
谷壁の氷層や岩陰を住処とし、日中は活動を控える傾向。
行動は極めて静かで、威圧行動を見せるが攻撃性は確認されず。
特筆すべきは、周囲の風の流れと鳴き声が共鳴し、**「風鳴りの竜」**と呼ばれる自然現象を生み出している点である。
この鳴音が人々の間で“竜の咆哮”として伝承されていた可能性が高い。
3. 食性
直接的な捕食行動は未確認。
体構造から推定するに、魔力循環および冷気吸収によって代謝を維持する可能性がある。
一部資料では、氷中に閉じ込められた小型生物を融解吸収するとの報告もあるが未確認。
4. 繁殖・個体群構成
本観察では、二体の個体を確認。
小型個体(子)を護るように行動する大型個体(親)が存在。
明確な巣構造は認められず、氷壁の亀裂を利用して生息していた。
親子間に防衛本能が見られるが、観察者への直接的攻撃は行われなかった。
5. 生態的特記事項
通常種のスノーヴァインド・リザードは寒冷地適応型の亜竜であるが、
本個体群はその中でも極地順応の度合いが著しく、魔力構造そのものが冷却特化に変化している。
魔導伝導率は高く、体表からの魔力放出量も一般よりも多いと思われる(推定)
この特性が周囲の空気を振動させ、風鳴り現象を誘発していると考えられる。
6. 人間社会との関係
周辺村落では「竜の鳴く谷」として恐れられていたが、実際には当個体群による自然共鳴現象の誤認。
現在まで人間への被害報告は存在せず、攻撃性も皆無。よって討伐・干渉の必要は認められない。
むしろ不用意な接近や捕獲は、個体群の消失および氷谷生態系の乱れを招くおそれがある。
7. 補足観察
・威嚇時に体表の霜結晶が微振動し、青白い光を放つ。
・鳴声は「グォォン」と低く共鳴し、距離を誤認させる特徴あり。
・観察終了時、個体は風の中に姿を消した。知性中度。
・離脱直後にも鳴声が一度だけ響き、これは**“別れの呼応”**と推定。
結論
スノーヴァインド・リザード(変異種)は、極寒環境における魔力的適応の最終段階と考えられる。
その存在は、かつての「風鳴竜伝承」が自然と生命の融合によって生まれた証左である。
人との共存が可能な希少個体群であり、今後も観察継続を推奨する。
竜研究家 ライナ




