表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/49

第38話 事件とは


――ロステル村・広場。


調査を終え、昼を過ぎた頃、ライナは落ち着いた足取りで村へ帰ってきた。


村人たちが自然と輪を作り、好奇と安堵の入り混じった視線で彼を見つめる。


ライナは背負い袋を整え、低く声を発した。

「謎の魔物の正体は、スタグライドオウルである。本来の生息域は北方だが、今回は何らかの理由で南へ出現した。研究上の異常点も確認できた。これにて調査は終了する」


村人の一人、トーヴァンは大きく息を吐き、ほっと胸を撫でる。

「ふぅ……疲れました……」


ライナは淡々と背負い袋を担ぎ直す。

「……帰る。以上だ」


その時、村長がどこからともなく現れ、手を組みながら近づいてくる。

「お疲れさまでした。で、殺人事件の方はどうするのですか?」


ライナは一瞬視線を止めた。

「…………」


トーヴァンが小声で不安そうに口を開く。

「え……? ライナさん、帰っちゃうんですか?」


ライナは背を向け、淡々と答える。

「魔物の正体は突き止めた。事件は……誰かに任せるべきだ」


トーヴァンの顔色が真っ青になる。

「えぇぇぇ!? それって、事件放置ってことじゃないですか!?」


彼は大きくため息をつき、頭を抱える。

「いやぁぁぁ……俺、村一番の心配性なのに! これは心臓に悪いですって!」


ライナはため息を返す。

「はぁ……早く研究を進めたいのに。では、村人を全員集めてください」


昼過ぎ、村長の号令が村中に響く。


村人たちが広場に集まると、ライナは魔導剣を抜き、静かに前に立った。

「今から皆さんにこの剣を向ける。最近王都で発見された魔法だ。私の質問にもし嘘偽りがあった者は、この剣で真っ二つにされる」


村人たちは悲鳴をあげる者、怯える者、逆にドンと構える者などさまざまだが、広場は緊張感で満ちた。


ライナは一人ずつ剣を向ける。

「汝、人の道を外してはいないか?」


剣を向けられた初老の村人は恐る恐る答える。

「は、外しておりません」


ライナは淡々と次の村人へ向け剣を振るう。


その瞬間、並んでいた若い男が突然走り出し、ライナの下へ膝をついた。

「待ってください!言います!俺です、俺がやったんです!」


ライナは声を張る。

「彼を取り押さえなさい!」


若い男は魔物騒動に乗じて、自らの犯行を魔物のせいにしようとしていたと告白する。


ライナは剣を納め、小さく呟く。

「魔物以上に、人間というものは恐ろしい」


トーヴァンは目を丸くし、驚きと興奮で言った。

「すごい魔法ですね! 剣だけで真実が見抜けるなんて!」


ライナは肩をすくめ、淡々と答える。

「はったりだ」


村人たちからざわめきが起こり、ロステル村の広場は奇妙な空気に包まれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ