ライナの研究報告 グライオンドラゴンフライ
種名:グライオンドラゴンフライ
発見場所:ザムラ村近郊・丘陵地帯
観察日:コド暦23年・盛花月 下旬
1. 外見的特徴
全長:約7.8〜8メートル
翅は左右2枚づつ、7.5〜8メートルに及び、透明で虹色の光沢を持つ。
体表は漆黒の甲殻で覆われ、遠目には「小型飛竜」と誤認されることが多い。
頭部には複眼と鋭い大顎を備え、突進時には甲殻全体が振動し、羽音が轟音として響く。
2. 繁殖行動
繁殖期は未詳。過去の記録では小型個体群が数体で群飛する様子が観測されている。
本観察では単独個体のみであり、繁殖行動は確認できなかった。
雌雄差についても詳細不明。羽の透明度や体長に性差がある可能性あり。
3. 食性と行動
主に小〜中型の哺乳類や大型鳥類を捕食すると思われる。
直線的な突進行動を主体とするが、通常は風属性の魔力を帯びた攻撃(風刃・突風)を行う記録が残る。
本個体は「突進のみ」を繰り返すという異常行動を示した。
4. 生態的特記事項
今回観察した個体は腹部に五本の爪痕を有していた。
これは現場での戦闘によるものではなく、明らかに過去の戦闘痕である。
五指による爪痕を残す魔物は、未発見種を含め竜種以外に存在しない。
よって、本個体は竜種との交戦経験がある可能性が極めて高い。
5. 補足
本個体は手負いのため、風魔法を使用できず突進のみの行動に終始していた。
行動の単純化は、魔物の弱体化と同時に、竜種との交戦が現実であったことの傍証でもある。竜種との接触が事実であるならば、周辺環境および人々への影響は計り知れない。
ただし、現時点で竜種の存在が近傍で確認されたわけではないため、即時の避難や討伐は不要。
本調査の記録は、竜種の存在証明における重要資料として保管する。
竜研究家 ライナ