表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/49

第22話 川とは

――翌朝。


ザムラはまだ眠りの中にある。薄明の空に淡い光が差し込み、石畳や木造家屋に朝露が光る。鳥のさえずりだけが静かな空気を破る中、一行は朝食前に村付近の調査に出ることにした。


「まだ朝だ。手始めに村の周囲を確認しよう」

シーナが提案すると、皆が頷き、軽い装備だけを身に着けて外へ出る。


リュミナは遠くの森を見渡しながら、空に視線を泳がせる。

アドルフは杖を握り、辺りの地形を観察している。

シーナは鋭い目で空と森を交互に探す。


しかしライナだけは別の方向へ向かっていた。近くを流れる細い川へ、足早に歩み寄る。石をひとつひとつめくり、水面に映る朝光を凝視する。手には小さな筆記具とノート。


「……川の流れ、石の配置、水生生物の種類……」

ライナは低く呟きながら、石の隙間や水面下に目を凝らす。


それを見たシーナが眉をひそめ、呆れた声を上げる。

「また竜雑学かと思ったら、今度は川を調べるのか? 」


アドルフも腕を組み、苦笑する。

「竜博士、川で竜の羽を見つけられるのか?」


リュミナは軽く笑って言う。

「まぁ、あなたが熱心なのは分かったけど……どうして川なの?」


ライナは足を止め、しばらく黙って川面を見つめた後、静かに言う。

「……心当たりがある生物がいるのです。」


その言葉に、三人は少し顔を曇らせる。

「生物?」シーナが問い返す。

「そう。先日の少年の証言――“羽が四枚”という話。空だけでなく、この川流域にも、関連する生物の痕跡が残されている可能性があるのです。」


ライナは川の石をひとつ持ち上げ、小さな殻や藻類の塊を丁寧に観察する。

「大型飛翔生物が空を舞うには、一定の水域や生態圏との関わりが必要です。特に四枚の翼を持つ生物は、生活圏に川や湖などの流体環境を含むことが多い……」


アドルフは呆れたようにため息をつきながらも、ちらりとライナを見る。

「……また未知生物論か。お前、本当に止まらんな。」


ライナは微笑みながら筆を走らせる。


シーナは小さく笑い、空を見上げる。

「じゃあ、私たちは森と空、あなたは水域。面白くなりそうね。」


ライナは頷き、川沿いを慎重に進みながら、小さく心の中で呟いた。

「……確かめなければ。あの四枚の羽の正体を。」


そして、まだ朝靄の残る川辺で、ライナの調査が静かに始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ