第17話 仲間とは
――雷装が消え、石造りのホールにようやく静けさが戻った。
シーナはひとしきり笑い転げたあと、涙を指で拭いながらライナの肩を軽く叩いた。
「いやぁ、まさか研究者がそんな切り札持ってるとは思わなかったよ。危うく焦げ肉になるとこだったじゃないか」
ライナは困ったように剣を収める。
「……あれでも、出力は最低限に抑えていたんですが」
「最低限であれか!? 冗談じゃないよ」
シーナはまだ笑いをこらえつつ、腰を伸ばした。
「さて、あたしも本気を出す場じゃないしな。もっと知りたいなら、うちの仲間の所に来るといい。あたしだけじゃ、竜やワイバーンの話に付き合える知識も限界があるから」
2人はホールを後にし、仲間がいる冒険者ギルドへ,向かう。
ギルドの重い扉を開ける。喧騒の中を進み、木の卓を囲む2人の前に、シーナはライナを連れてきてどっかり腰を下ろした。
「紹介するよ。こっちが〈風牙の牙〉の仲間だ」
シーナが顎で示すと、最初に口を開いたのは弓を背にした女性だった。
弓使いは明るい栗色の髪を肩で揺らし、にこやかに笑う。
「リュミナだよ。弓使いってほど大層なもんでもないけどね。竜ってのは……残念ながら生で見たことはない。噂話くらいさ。
でもワイバーンなら何度か依頼で狩ったことあるよ。空飛ぶトカゲ、って感じでさ」
続いて、眼鏡をかけた魔術師が、椅子に肘をつきながら静かに口を開く。
「アドルフ。魔法使いだ。俺も竜は見たことがない。見聞きしたのは古書や吟遊詩人の唄に出てくる程度だな。」
彼は淡々とした声のまま、視線をライナに向けた。
「今回の黒い飛行生物――ギルドから調査と、危険なら討伐を依頼されている。だから竜に詳しい者を探していたんだ。ライナの話は変わりますが飲み屋で聞いたんだ。まさか本当に研究している奴がいるとは思っていなかったが」
リュミナが身を乗り出す。
「そうそう! 噂じゃ“黒い竜”だとか“影を裂く飛行獣”だとか言われてるけど、実際に見たって人はまだ少ないんだ。正体をはっきりさせたいのさ」
シーナがにやりと笑い、ライナの背を軽く叩いた。
「だから、あんたに白羽の矢が立ったってわけ。どうだ、研究者殿。あたしたちと組んでみる気はあるかい?」
――ギルドのざわめきの中で、ライナは仲間たちの視線を受け、答えを迫られていた。