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9/23

悪魔

素材の買取には行った。

……けど、あっさり終わったわ。


確かに、Bランクの魔物を仕留めたってだけでも相当な出来事だ。

だけど、俺の名前が広まることもなけりゃ、ギルドがざわつくこともなかった。


「【銀鷹】の素材? へえ、珍しいね」

って、その程度。

いや、マジで!? もうちょっとこう、驚いてもよくね!?


……まあ、仕方ねぇか。

討伐の瞬間を誰かに見られてたわけでもなし。

どでかい死骸をまるっと持ち帰ったわけでもなし。

容量無制限の魔道具? んなもん、買う金ねぇよ!!!


もちろん、一部の素材だけでもそれなりの値段がついた。

普段の収入より桁がひとつ増えたってだけでも、大快挙だ。

だけどよ……


「運良く死体見つけて、ついでに剥いできただけ」

──みたいな扱いは、ちょっと我慢ならん……!!


「一度戻って、丸ごと引きずってきてやろうか……」

って思ったけどさ、あそこ、もう魔物湧き始めてんだよな。

俺が素材剥いでる間にも集り出してたし、今から行ってももう遅ぇだろ。


でもな──


今回、質の高い魔石が手に入った!!

大鷲を解体してる時に感じた手応えを頼りに探った結果、普段は手の届かない値段である中級品質の魔石を見つけた。


普段使ってる低級魔石を素材にしても、せいぜい初級魔法の陣紙しか作れない。

でもこいつは違う。

中級魔法陣が視野に入る!!


……まあ、量は少ないし、今すぐ加工できるほどの腕もねぇけど。

でも、次のステップが見えてきたって感じだな。


さて、どうするか。

魔石の扱い、ちゃんと習うなら──

やっぱ【先生】に相談か?

いちおう、カル先生……なんだかんだであの人、俺の話ちゃんと聞いてくれるし。


あー、そうだ!あの人に褒めてもらえばいいんじゃね!?

『自力で魔物討伐したんですよ!!よしよししてください!!』つって………

いや、あの人ロリコンだから甘やかされるには一度人生をやり直す必要があるか。


つーかさ、でもさ?

まったくもって我ながら面倒くさいけど、こういう時くらい、自分に甘くてもいいよな!


だって、Bランクだぜ!?!?(台パン)

俺、ほんとに!マジで!頑張ったんだから!!!(台パン)

頑張ったんだよ!!うわあああああ!!!!(台パン)


「さっきからそんなに机を叩いてどうしたの?」

カル先生は、手にしていた書類をぱさっと伏せて、俺を見た。

俺は今、カル先生の研究室にいた。


「……これ見よがしに“銀鷹“の素材を広げて。ああ、君が討伐したのかい?それはすごいね」

「でしょ!?でしょ!!」

「うん。褒めてあげるから騒ぎ立てないこと。セノちゃんが怖がるでしょうに」


──うわぁ……褒められたけど、トーンが保護者だった。


「はいはいはい、じゃあ先生も静かに褒めて!ほら、もっと心から!」

「やれやれ……」

先生は、軽くため息をついてから──俺の頭をぺちんっ!と書類で叩いた。


「いてっ!?」

「ふーん……なんだか翠陽石と紅雷石を混ぜ合わせた時のような匂いがするね。君、戦いの中で学んだことを応用したのかい?」


「えっ、そんなこと分かるんすか!?」

「僕は平凡な学者だけど、専門家ではあるからね?」

にこっと笑って、カル先生は当然みたいに言う。

……かっこいいじゃねえかよ!!!!


「でも、禁忌の組み合わせはあまり使うべきじゃないよ」

「え、なんで?」

「素材同士の組み合わせなら大したことはないけど、それを魔法陣に転化するとね──良くないことが起こるからね」

「良くないこと?」

「そうだね……まあ、まだ気にする必要はないよ」


──なんだその言い方ッ!!気になるじゃねーかッ!!!


「知りたければ、そこの棚にある『魔法陣圧縮術』でも暗記してきなさい」

「出たぁ!!!!そうやって、焦らして生徒を苦しませるのが趣味なんですね!?そうやって性格悪いことしてると先生の大好きなセノちゃんが悪い影響受けますよ!!」

「僕の可愛いセノちゃんは、そんなふうにならないもん!」

「“もん!”じゃねーよ先生、可愛いなチクショー!!」

「なんだ、いきなり口説かれるとびっくりするよ」


……ったくもう!

俺、どんだけ頑張っても、いつもこの扱いだわ!!!

でもまー……


悪くねぇんだけどな……!!


「くそっ……セノちゃん!あんたは俺のことを応援してくれるか!?」

!!

俺はしゃがみこんで、カル先生が愛してやまない美幼女──セノちゃんの視線に飛び込むようにして問いかけた。

もうそれなりにこの研究室に来て顔を合わせてんだ。

話したことは一度もないが、少しは俺に親しみと好意を持ってくれてることだろう!!


が。


「……図が高いですよ、羽虫」


カル先生の腕にいた時の大人そうな雰囲気が一変。

さらりとピンクブロンドの髪をかきあげ、年齢不相応なほど冷ややかな瞳で笑いながら彼女は言った。


「あなたみたいな矮小な存在は、他人に優しさを求める前に蟻にでも頭を下げて、慈悲を乞いなさい。“生きてていいですか”って」


情緒が死んだわ俺。

お……おや……??俺、今罵倒された?


「……ふふっ……」


え?次は滅茶苦茶穏やかそうに笑ったけど!?感情表現どうなってんの!?


「あの……先生……」

「君、この子は人見知りなんだ。気にしないでくれ」


「いやいやいやいやいや!! 人見知りの定義どこ行った!!なんか違うって!!人の顔見ただけで即裁きの言葉叩きつけてくる系の可愛い子素敵ですね!?!?」


こんなびっくりしたのなんて、ほんと久しぶりだぞ……!

衝撃だった。

この前依頼行った時に寝ぼけて拾ってきた猫の魔物で机を拭くライアスを見た時以来の…いやそんな事実はなかったけど。今意味のない嘘ついたけど。


セノちゃんの無慈悲な圧に危機感MAXを覚えた俺は、そそくさと自習用の分厚い本を抱えて教室から撤退を決意した。


くそっ……こんなことでくじけてる暇はねぇ!

俺には、他にもすべきことがあるッ!!!!!



宿の自室に戻ってきた俺は、袋の奥に突っ込んでいた戦利品のひとつを取り出す。


──【下級悪魔の従属印】。

手にしたときはドロドロで、どこぞの胃液か血か油かわかんねー液体で濡れてたが、洗浄と浄化を施した今では、銀光を放つ美しい指輪に早変わりだ。


指輪の表面には赤黒い魔印のようなものが刻まれていて……これがまた、厨二心をくすぐるかっこよさだ。

悪魔のくせに、デザインセンスは人間よりあるんじゃねえの?


「……使ったら上級悪魔に通知が行く仕様とかねえよな?」


さすがにそのあたりは不安なので、慎重に【魔道具鑑定】を使用。


すぅ、と魔力を指輪に流し込むと、光のスキャンのような演出と共に情報ウィンドウが展開される──


【下級悪魔の従属印】

上級悪魔によって生成された特殊な魔具。悪魔の眷属の中でも“下級”とされる存在を二体まで支配・召喚・使役可能。

指輪に魔力を込めることで召喚が発動。指輪の所有者が変わった場合、従う主も変更される。


「……ふむふむ。特に心配はなさそう、か?」


少なくとも、上級悪魔に通報されるような防犯仕様はないな。

じゃあ、早速お試しに──


「【下級悪魔召喚】!」


声と共に、指輪が一瞬淡く光る。


部屋の空気がピキ、と張り詰めた。床に魔法陣が浮かび上がり、紫黒の霧がぶわっと噴き上がる!!


指輪が淡く発光する。


部屋の空気がピキ、と張り詰めた。

床に浮かぶ魔法陣、噴き上がる紫黒の霧!そして──


「……うお、なにその血まみれ」


出てきたのは、見るからにボロボロの悪魔だった。

傷だらけで、片腕ちぎれかけてんじゃん!?!?


「何でそんなに怪我してんの!?」

「……人間ト、戦ッテタ」

「今丁度!?てかここ宿!血を撒くな……!!」


焦って陣紙を取り出して回復魔法をかけようとし……はたと止まる。


「……回復魔法って光属性だから悪魔にはダメか」

「新タナ主人……光魔法ハ……駄目ダ……マ……魔力……」

「あー魔力か! ならこの辺の低級魔石でどうにかなる?」


差し出した魔石に、悪魔がコクリ。


「ソレデ……十分」


なんとか血の清掃も済んで一安心。

さて、と俺は悪魔の前にしゃがむ。


「なあ。この指輪作ったやつのこと、知ってるか?」

「言エナイ」

「じゃあ……悪魔って他人との契約内容、勝手に喋っちゃダメ?」

「駄目ジャナイ。血族ト契約シタ人間ナラ、契約書ミレル。デモ俺……文字、ヨメナイ」

「……伝えられないってことか。でも“見える”なら、書いてもらえばいいか?」


ちょっとゴツすぎる手だけど……ペンくらい持てるだろ。

悪魔といえば契約!契約こそが全てを握る鍵!!俺の希望的感想!!


「お前、姿を隠して、相手に近づいたりできるか?」

「デキル」

「じゃあ、契約書の文字、紙にそのまま書き写してきてくれ」

「命令、ヤル」


おっしゃ、決まり!じゃあ……

「よし、んじゃシャトロでも探しに行くか」


あいつ、仕事ない時は広場近くの商会のあたりにいるからな。

冒険者にして商会の重役みてーなことして──くそ充実しやがって。


……


「いた。あいつだ。バレないように行って、模写してこい」

「ワカッタ」


ふっと、悪魔の姿がかき消えた。

透明化……やるじゃん?


シャトロはいつも通り仏頂面で、商人連中と話したり、書類を読み合ってぶつぶつ言ったり、してる。

さて、ここからは待機……待機……飽きた。


「なんか売ってる惣菜パンでも食うか……」


一口かじって──ガリッ!!!


「歯ァ欠けるわ!?何これ!?ミニ人形!?ガレットデロワの亜種かよ!?」


……ガレットデロワ?何だそれ?しっかりしろ俺。

と、そこへ


「終ワッタ……ケド」


「あ、よくやった!撤退撤退!!透明のままで帰るぞ!」


宿へ戻ってきて──提出された模写を見た俺は。


「うおぉおおおうげぇえええ!?!?」


何これ読めねえ!!!!!


芸術的に崩壊した文字列。

あの手で書いたから仕方ねえけども!!


しかも……俺の知ってるどの言語体系にも完全一致してない。

全くピンとこないわけでもないけど。


「この文字って悪魔言語的な何か?」

「魔界言語ダナ」

「ふむ……これは……解読するっきゃないか」


カルせんせーのとこに本が沢山あるけど『悪魔語の本ありますか?』つっても何で?って言われそう。

……いや、あの人割と知識欲に甘いから気にしないか。


って……いや!!冷静に考えて、悪魔語の本なんてのは出回らねえよな。

悪魔は図鑑や歴史書でも危険視されてたしタブー扱いされてる気がする。

……もうちょっと例文が欲しいな。


「なあ、さっきのシャトロの周りにいた奴らで、契約してるのがいたら、そいつらの契約書の文字も全部写してきてくれ」

「ワカッタ」


がんばれ、悪魔くん。

さて俺は……この魔法陣言語に似た……いや、もっと複雑で絡み合った、暗黒の文字列に挑むとするか。


「これは……まずは、文字の分解からだな……!」






「ふっ……俺は流石、天才軍師になる男……並みの軍師とは頭の出来が違うぜ……」


そう、言いながら俺は宿の床をドンと踏みしめる。

なお──俺は“並みの軍師”に出会ったことは一度もない。


でもまぁ、いい。

今回ばかりは言わせてくれ。


俺、マジで頑張った。

悪魔語というクソみてぇな暗号をこの短期間で解読し、

召喚した悪魔くんのかき集めてくれたメモを照らし合わせ、

契約内容の大筋を読み解くに至ったのだからな……!!


666通りもある文字を文脈に応じて使い分けて?

文章ごとに文字の属性値を均衡させて?それで云々。

世界共通語を使った方が良いぞ。いや、実はデカいメリットもあるんだけど。

ともかく!!


そして分かったことは──シャトロの周囲の商人ども、

全員ほぼ悪魔と契約済み。


情報漏洩の禁止。

商会への奉公の継続。

それから──素材の闇ルート仕入れや、

魂や能力の一部を担保にした代償型ステータス強化。


自分の能力まで対価にし始めるといよいよ悪魔契約感あるよな。


で、気になるシャトロ本人はというと……


『ジーク・ジェミニが契約違反をした場合、対象者と共に悪魔へ魂を引き渡す』

「おっ、お前の家族が人質とかじゃなくて……本人が人質……ッ!?」


いやいやいや、笑えねぇ!!!

黒幕かと思いきや、ガチで縛られてる側!?


なんだこの爆弾設定。

シャトロの真意はともかく、

こりゃ下手に動けば“シャトロくんまでジ・エンド”ってオチもある……。

はは、そんなの笑えなさすぎて笑いが止まらない。

つーと、次にちょっかいかけるには……


「よし、決めた。ジーク・ジェミニの契約を探る。俺の尾行でな!!」


直接聞く? 論外だ。

聞き込み? バレたら一発アウト。

悪魔くん? ……便利だけど、透明化の痕跡が読まれたらジ・エンド。

ついでに色々検証した結果、意外と記憶力も観察力も心許ないので諜報に向かない。


──ここはやはり、俺自身が動くしかない!!


え?でもお前は悪魔の下位互換だろって?

褒め上手だな。


とりあえず、簡易陣紙を用意し、

目眩まし魔法を発動させる。


俺の魔力痕跡が残らないように、今回は魔石多め魔力ほぼ不要の特別調合魔法陣だ。


「うおっ!?な、なんだ!?ガキの悪戯か!?」


よしよしよし!!

商会の見張りがざわつき始めた!今だ!!


俺は屋根沿いからするりと影に溶け込み、裏口から中へ──

シャトロを尾行して潜入成功!!


過去に一週間シャトロのストーカーをしてた俺からの豆知識なんだけどな。

奴は屋内でこそ本命のやりとりをするタイプ。

外ではにこりともしねぇくせに、室内に入った途端結構おしゃべりなんだよな。


さあ……俺の張り込みが実を結ぶ瞬間はいつだ……!


「あ……いた。来たぞ……」


廊下の奥、静まり返った応接室。

薄く開いた扉の向こうに、シャトロの姿があった。


肩で息をつき、上着を脱いで椅子に投げる。

片手には、以前も見た通信用魔道具。


【魔道具鑑定】……っと。


【灰鳴鳥の声】

通信専用。片方の持ち主と音声・魔力をリアルタイムでやり取り可能。

現在3人の相手との通信が登録されている。


で……今から会話するその1人が、“ジーク・ジェミニ”か?そうだよな?頼むぞ?


シャトロが魔道具を耳に当てる。


「……聞こえるか。今日は随分と連絡が遅かったな、ジーク」


きたきたきたきた!!あまりにも俺の予想が直撃しすぎている!!密偵の才能もあったりするの俺!?


魔道具の向こうから、落ち着いた声が応答する。


『ごめんな。ちょっとだけ時間を取るトラブルが起きた。でも心配しないでくれ。まだ魂はあるだろ? シャトロ』


「当たり前だろ」


くっそ、軽口叩きやがって……

何だよ……そのテンポ良く噛み合った会話……


『信頼してくれよ。君を失望させることはしない』


「この商売に手を染めていた時点でかなり失望はしてるがな」


『……刺さるなぁ……。まあ、それは悪かったってことで。今日は明日のルート確認だけだよ』


「……ああ。以前は不明な理由で輸送中に事故が起きて最悪だった。原因も分かっていない以上、安定性を優先して──

まずKの山脈を抜けて、W14を通って……」


……暗号か?

くそっ、クールに喋ってるけど中身が全然クールじゃねえ。

あからさまに共犯者同士の作戦会議じゃねーか!!


でも、ルートが判明したのは収穫だ。

明日、Kの山脈──W14ルートとやらで待ち伏せすれば、ジークの何かしらに接触できる可能性が高い。


つまり、明日のチャンスを掴んだってこと!!


……いやしかし、それにしても……


「全く、お前の心配性なところは変わらないな」


『そういう君こそ、つんけんしてるくせに面倒見がいいんだから』


いや……お前ら……


イチャついてんじゃねぇ!!!!!!!!


俺なんかもう最近、誰とも一対一でプライベートな会話できてねえよ!!

せいぜい悪魔くんと会話して「ソレデ十分」とか言われるだけだわ!!


くっ……いいよ、俺には……イケメンの仲間二人いるし……

通信魔道具なしでもしもしできるしな……それは最早もしもしではない……


いやいや!!今そんなこと考えてる場合じゃないんだよ俺ッ!!


──気づけば、シャトロは通信を終えていた。

魔道具を机の上に置いて、無言で書類に目を通し始める。


……くそっ……俺、脱出ルート考えてなかったわ!!!!!!


しまった!!!!


心臓が跳ねる。

天才密偵さん、ここであっさり退場か!?


「ッ……あっぶね……落ち着け、俺……」落ち着いて、部屋をぐるりと見渡す。

出入口は……一つ。

さっき使った目眩まし陣紙は、もう効果が切れてるだろうな。


……と、そこに目についたのは──


でっっっけえ抱き枕。

お?おお?欲しい……じゃなくて、ワンチャンこれ身を隠すカモフラージュに使えるのでは!?


一瞬、どこからか「えっ」って悪魔の戸惑った声が聞こえた気がしたが……気のせいだな。

あんなのに感情があるわけない。ないはずだ。うん。


それより、今のシャトロは完全に書類へ集中している。

……チャンスだ。



発動──天才軍師流・這いずり術!!!!


角度ヨシ、距離ヨシ、死角ヨシ。

シャトロの視界から完全に外れたラインを計算し、

まるで“命を宿した抱き枕”のように滑らかに移動する……!!


(やべ……なんだこの情けない動き……でもバレてないっぽい……!)


「……は?」


ふっ……プランB。


「天より吹き来たれ、澄み渡る息吹。【風陣】」

ぼそり、と詠唱をすると、途端に室内に吹き荒れる強風。

近くにあった書類の山が崩れ、シャトロの顔面に書類が張り付く。


っし、隠れるのもやめ。全力脱出だ。

ちらりと横目をやると、シャトロが一瞬呆けたようにこっちを見た気がしたけど──

既に脱出ほぼ完了。もう後ろ姿しか見せてねぇ!


「最近働き詰めだからか?幻覚を見たような気がする……つか誰だ窓を開けたのは……」


ぼそりと聞こえたその呟きに、思わずクスリと笑ってしまった。

後でちょっと労ってやるか?よしよしでもして。


そのまま裏口へ回って、念のため人払い。

盲目魔法と拘束魔法をパッとかけて、後ろからひと蹴り──


大盤振る舞いだよ俺ったら。


「──よっし!!脱出成功!!!!」


外に出て、俺はこっそりと──でも誇らしげに、心の中でガッツポーズを決める。

任務完了。情報収集成功。天才万歳。

うん、俺はやれる男だ。やれちゃう男なんだよね!


さて……

“Kの山脈”

“W14ルート“


……ったく、

あいつらの暗号、ガキの頃の俺がノリで作ったやつとレベル変わんねえじゃねーか。


でも、“ジーク・ジェミニ“との接触に繋がる情報を掴んだのはデカい。

さて、次だ。


再接触を目指し、真相への一歩!!


悪魔にだって劣らねえ、

天才軍師兼天才密偵、出陣準備完了ッ!!


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