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将来の超絶最強軍師である俺が勇者を堕として最強の料理人を飼い犬にしてとにかく最強  作者: Os


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侵食



バタン、と扉が開かれた


「おい、誰かいるか……って、何だ?」


三つ編みをした青い髪と、以前見た時とは違う神聖な白いローブ。

その鋭く赤い瞳も以前見た通りだ。

ヴィーゴ……イオのセコムくん!!いや、セコムってなんだ?

彼一通り部屋の中を見回した上で俺と目を合わせる。


「……自称軍師野郎か、何してんだテメェ」


そう、みんなの天才軍師だ!

俺が笑みを返すと、腐ったゴミでも見るかのような目を向けられた。


「“聖人”様!?何でこんな場所に!?」


俺の襟を掴んでいた男は驚愕の表情を浮かべた後、俺を放り出して取り繕うように会釈をする。

聖人。

事務員の男はあまりピンときていないようだが。斯くいう俺も全然知らない。


「何だ?お偉いさんか?」


「聖人様だよ!1人で天候を変えて村を救ったり、腕を再生したり!実力Sランクモンスターを仕留められるとかの英雄で、ディーゼス出身!教会からも認定された本物の聖者であり我が国の誇りだ!……だが、何故此処へ?」


俺もそんな話は初めて聞いたけどな。

それなりに上位の魔法使いとは知ってたけど。この間討論した時、自分の魔力だけで【転移】出来るぜってマウント取られたし。

【転移】って本当に消費魔力多いんだよな。

まあ兎に角……ヴィーゴ。お前は俺の味方だよな?

俺はヴィーゴの隣に立ち、受けた屈辱と痛みを思い出して涙しながら彼らを指差す。


「助けてくれ!イオが此処にくれば船で行けるって言ったんだ!!でも船出してもらえないどころか強請られてるんだよ!!」


「……そもそも、あんたは何で向こうへ行こうとしてんだ?」


「そんなん川を渡ってみたかったからに決まってんじゃん」


「聞いた俺が馬鹿だった。なんかイオに言われたってのも嘘くせぇけど……おい、そこのお前。船は出せないってのか?」


ヴィーゴが胡乱なものを見る目つきで俺たちを交互に見るも、諦めたかのように護衛の男の方を見る。

一瞬事務員が何かを言おうとするも、それより前に「いえいえ!」と口を開く。


「料金さえ支払っていただければ船くらいいつでも出しますとも!俺が手配しておきます!ほら、あんたも早くこっちに来るんだ」


「ぐえ」


唐突に手を引かれた所為で近くに積まれた書類に腕が当たって事務員の男が書類の下敷きになった。

俺は護衛に引っ掴まれてそのまま連行されるが、ヴィーゴもその後ろに着いてくる。

護衛は困惑したように後ろをチラチラ見ながらも、無線機のようなものを使ってやりとりをしながら川に係留してある船へ案内された。


「俺は船頭出来ないんですが、代わりにマシなやつが直ぐに此処にくるんで!お題は結構です!俺は此処で!」


男がそそくさと帰って行ったのを見てから、ヴィーゴは口を開く。


「おい。この間俺と会った時、俺の首に妙な細工をしただろ」


ヴィーゴがバッとローブの襟首をずらして指を刺す。

そこには確かに、薄く小さな魔法陣が描かれている。


「この間俺が討論で勝ったから、勝利の印に少しな」


この間、コイツと【悪魔の門】へ向かっている時……彼の首元に少しだけ悪戯をした。

この魔法陣を発動すれば、魔法陣が眩く光る。それだけだ。

だがかなり、いや結構目立って鬱陶しいのでストレスであることは間違いない。


「いや絶対俺が運転してる時に後ろから描いただろ!人体に魔法陣を描くアホがいるか!今回は確認の為に残してきたが、身体に影響する材料や魔法を使ったら“禁忌“だろうが!」


「まあまあ、その魔法陣にお前が気づいて魔力の逆探知か何かで来てくれたおかげで、お前の大好きなイオは俺に嘘をついたことにならず済んだだろ」


俺がそう言うと、彼は心底疲れたような顔をして額を摘んだ。

まあ、イオがこのふざけた場所を紹介したなんて言葉も否定はできないだろうからな。

イオに罪悪感を抱かせる可能性があるから我慢してんのか。殊勝な奴。


「チッ……兎に角、次にやったらお前は川に沈める!!今回はほぼ実害もなかったしイオの関係者ってことで許してやるが!!」


よし、少し機嫌が回復したか。じゃあ船乗りが来るまでの雑談として、ついでにさっき気になったことも少し聞いておくか。


「……ところでヴィーゴ。お前聖人とか言われて実は結構凄かったりする?」


俺が指先を合わせて尊敬を表現した輝く目で彼を見つめると、満更でもなさそうな顔をして前髪を掻き上げる。


「……イオの奴、俺のこと話さなかったのか?まあ俺が噂の聖人ってのは事実だ。理解したんならお前ももう少し俺に敬意を……」


「でも俺がちょっかいかけたら直ぐにきたよな。実は結構暇なのか?」


俺がそう言った途端、ずっと彼の腕が俺の頭上に伸びてきた。


「暇じゃねえからわざわざ【転移】してきてんだよアホが!!俺はもう帰る!!」


「がぼっごぼぼぼぼ」


溺死する!!



その後代わりにやってきた船乗りに乗せられ、俺は川を横断した。

そして着いたのが、現在ジークが滞在しているというテスカ領だ。

此処はジェミニ領とは違って商業で発展する豊かな街だそうだ。

ジェミニ領の強みって何なんだろうな。

そう思いながら近くで買ったクリーム菓子を食いつつ広場を歩いていると、不意に背後からバサバサという音が迫ってきた。


「あ!そこの人!危ない!」


「!?」


大量の黒い鳩が背後から俺を覆い尽くす。

魔物ではないだけマシではあるのかもしれないが、肩や頭に乗られる所為で爪が食い込んで痛い。


「す、すいません!ちょ、お前ら!」


近寄ってきた女性は何とか鳩達を諌めたようで、別の場所に餌をばら撒いて誘導していた。

俺の食ってた菓子は……消えた?!


「ええと……ご迷惑おかけしました!ところで伝書鳩として優秀な鳩は要りませんか!?テスカ領名物です!今ならめちゃ安いですよ!」


「そんなことより俺の手の中にあったものがないんだよ」


「鳩を握りたいんですか?今なら特別価格で自分だけの鳩が握り放題です!」


その鳩の売り込みに全てのスキルを割いたような言動はどうしたんだ。

伝書鳩か……デランタでも偶に見るが、かといって必要だと思ったことはないな。

訓練も大変とかいう話は聞いたことがあるし。


「今ならたったの3000ガト銅貨!氷菓子1食分より安いです!」


「ありがたみが分かんねえ!!」


「ああっ!待って!!行かないで!!名刺だけでも!!」




ローブのポケットに無駄に名刺を詰め込まれつつ、俺はジークが泊まっている宿の近くまで来た。

壁越しに確認できる魔道具は【魔道具鑑定】で解析したが……問題ないな。

此処は下級悪魔を使おう。宿に魔術結界は貼ってある。

しかし、基本的にこうした結界は基本属性の魔法、基本属性の魔力に対してしか機能しない。

基本属性は火・水・土・金・木。

悪魔に関しては、下級ならそのほぼ全てが暗黒属性の魔力で構成されている。

階級が上がると混じり気が出てくることもあるみたいだけど。

とにかく、魔除けの結界でも貼られない限り問題なく侵入出来る。

悪魔なんてデランタで相次いで報告が出るのが異常なだけで、大陸全土で見ても数十年、数百年単位でしか観測されていない噂みたいな魔物だからな。基本。


悪魔は透明化の能力が使えるとはいえ、正面から行かせると護衛に勘付かれる可能性がある。

丁度掃除後の換気の為か裏手の窓が開放されている。


「よし悪魔、あそこから斜めに入れ」


「…………?」


「そんで、地図を見てくれ。ここら辺に【隠者の瞳】の印を設置してこい」


ジークが今日泊まる宿の地図も限定的ではあるが集めた資料の中に入っていた。

滅多なことがない限りトラブルは起こらないだろう。

やがて、無事に戻ってきた悪魔から魔道具を回収し、【隠者の瞳】で宿の中の様子を確認する。

まだジークは帰ってきていないみたいだな。

もう少しすれば午前の会談が終わって休憩時間になるよな?

ジークも外に出てくるかもしれないし、ジークがいるであろう会議所の近くでも覗くか。


そして時が経ち、会議所からポツポツと人が出てきた。

予め近くの広間や飲食店のテラス席付近にも【隠者の瞳】を仕掛けて回ったが……

確かジークの見た目は金髪での上に長髪らしいから目立つはずだ。

さて、どこに……って、見るまでもなくそれらしい奴が視界の片隅にいたな。


あれが目的のジークか。

片側の横髪を編み込み、何故だか目を閉じて歩いている。

護衛数人を近くに留めさせると、丁度隠者の瞳を仕掛けたテラスの方へと寄って行って通信機を取り出すのが見えた。

これは【隠者の瞳】で盗聴出来るか。


「……それって僕の領地での話?川沿いの区画で火災が起きた?はあ……さっさと近くの建物を取り壊すように……何、今直ぐ帰れって。そっちへの対処より今僕がしてる取引の方が重要なの分かるよね?」


川辺で火災?さっきジェミニ領の川を渡ってきた俺には親近感の湧く話だな。

通話相手は……ジークに帰ってこいとか言うあたり、ジークの腹心か、あるいは……父親とか?

彼は通信魔道具を胸ポケットに突っ込むと、護衛の1人を手招きした。


「ありがとう、君達が居てくれるお陰で余計に頭を働かせずに住みそうだ。他人の力を当てにしすぎるのも良くないんだろうけどね」


「此処の領主の口が軽いのもあるだろうが、相手を騙すのが上手いな。既にお前がダンジョンの所有権を得られる可能性が濃厚になっている」


「『段階的に折半する利益を変更する』なんて僕が言ったら、その“段階的に”の意味も知らずに契約を結んでくれるって」


ジークは最初から意味の拡大解釈して自分が得すること考えてんのか?

なかなかな性格してんな。


「俺も詳しくは分かっていないが……最初に卿の領民に対する差別を撤廃することも盛り込んでたろう。アレも何かに使うんだろ?」


「はは。上手くやれたら喜んでくれるかな?僕の弟」


「卿が気にしているのは弟ではないように思えるが」


「うるさい。それより、時間もあるし近くで予約していたお店に行こうよ。君の席もある」


その後彼らが入った飲食店にも貼ってみたが、残りは重要でもない雑談ばかりだ。

ジークは……まあ毒を秘めているのも間違いないだろうけど……

【魔道具鑑定】したところ、【精神防護の指輪】とか【安定のイヤリング】とかやたら感情や精神に作用する魔道具身につけてんだよな。

元から異常があるのか、それとも異常に慎重なのか。

ああ、でも……物理的な干渉を防ぐ魔道具はないんだな。



「悪魔、所定の位置にこれを配置してくれ」


俺は先程入手した袋を悪魔に渡して見送った後、宿にジークが入るのを確認する。

相変わらず目を閉じて歩いているが……いや今躓いただろ。目開いて立て直しただろ。

見えてるなら何で常時目を閉じてるんだよ。


扉の前に護衛をつけると、彼は自分の部屋へ入って伸びをする。

スーツを脱いで暫く薄目で書類を眺めた後、隣の空間の机に腰掛ける。

ジークがペンを取ろうとした時、彼はびくりと震えた。


「…………は?【霧鼠】……?」


白銀の毛並みをした鼠が、備え付けられたペンを咥えてそこに立っていた。

【安定のイヤリング】の光は彼を平静なままでいさせたようだ。

ジークは一瞬嫌そうに眉を顰めつつも、目を薄く開く。


「【水閃】」


「ギィイ!!」


魔法で出来た水の刃が鼠を切り裂く。

しかし、そこに死体や血は残らなず、そのまま姿が霧となって消える。


「ペンのインクに寄せられたのか?……また出てこないだろうな。ネズミ除けでも買わせるか」


ジークが立ちあがろうとしたとき、部屋の壁には……


「……」


小さな虫の塊。そしてその下、部屋の隅には……灰色の甲殻を持った悍ましい姿のムカデ。

窓にはカメムシのような影があり、


「どういうことだよ……衛生評価が良い宿を手配した筈……」


そう言いながらジークがドアノブを掴んだ時、ふと彼の台詞が止まる。

部屋の出口のドアノブには小さない蜘蛛が巣を張ろうとしている最中だった。


「……【氷槍】……はぁ……駄目だ」


ジークは一度魔法を発動仕掛けたが、直ぐに作った氷の槍を霧散させた。

魔法は魔法陣と違って発動した後もコントロールが効くんだよな。

ジークは暫く蜘蛛を見下していたが、そのうち口元を抑え、直ぐに部屋の外へ歩み出す。


「あ、ジーク様?どうなされました?」


そゔ聞いてくる護衛を無視して何処かへ行ったジーク。

だが、直ぐに帰ってくると、彼は護衛の肩を掴んで言う。


「宿を変えるよ。なるべく評価の良い場所を探して。僕の荷物も消毒した上で運んできて」


「ジーク様、今から予約できる宿となると……」


「いいよ、多少質が落ちても。どうせこの地方の宿なんてたかが知れてる。兎に角評判のマシなところを選んで」


ニコニコしてはいるが、ジークの態度の棘には護衛も気付いている様子。

手配を急ぐ護衛と集まってくるジークの部下。

ジークは腕を組みながらも少しソワソワした様子でロビーのソファに座っている。


「君たち、ソファじゃなくて……金属製で隙間の無いベンチは無いか?ないのか、そうか」


ジークが真顔でそんな要求をするものだから、部下たちはあくせくと魔法を使って簡易のベンチを作っていた。

その一方、新しい宿を取るために話し合いをするグループもいる。


「ええ?庶民の安宿に泊まらせるのか?貧乏で有名なジェミニ領主の息子の割に何故か金があってやたら高貴オーラ放つあの人を?」


「……てかいきなり何で……」


基本的に人は安らぎの空間に予測できない異物が入り込むと不快になるものだと思うのでひとまず色々配置してみたが……この方向性でいいか。


さて、ジークの精神破壊作戦の開幕だ!

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