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将来の超絶最強軍師である俺が勇者を堕として最強の料理人を飼い犬にしてとにかく最強  作者: Os


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交渉

ストーリーに関与しない細かい箇所を修正



「初めまして大悪魔メルライト様。俺は謎めいたイケメン天才最強軍師です。今回は貴方と交渉をしたいと思っていたんです」


深々とお辞儀する俺を見て、メルライトは顎に手を添えて目を細める。


「頭を診る医者も発狂させそうな奴だな。それで……私の前であの妙な仮面を被る必要はないのか?」


「羽虫と同程度の存在の顔を一々気にかけるような性格ではないと感じました」


「……自己評価が高いのか低いのか、やはり狂っているのか判断に迷うな。自覚があるのならお前を羽虫と呼ぼうか」


うわ、冗談で言ったつもりだったけど俺ここでも羽虫って呼ばれんのか。

彼女は一度呆れたようにため息をつくと、白銀の瞳を光らせて再び口を開く。


「交渉というが……私の財に触れた償いをするか、あるいは奪った以上のものを渡すか。あるいは──死。

他にお前の出来ることはないぞ」


滅茶苦茶選択肢あるじゃん!!

さて!俺が今回彼女に提案したいのは、彼女のお気に入りである堅物シャトロを彼女の眷属にすること!


シャトロ達に張り付くにあたって、達成すべき目標。


一つ──大悪魔とコネを作り、友好な関係を築くこと。

一つ──シャトロの剣を手に入れること。

一つ──俺の行動の正当性を明らかにすること。


その全てをオールクリアする上でまず初めに試すべきはこれだ。


「はい、償いでもあります。奪ったなら代わりを渡すのは当然のことですから。それと同時に大悪魔様に更なる利益が生まれることを保証できる取引を申し出たいと思って」


「ほう。略奪を正当化するようなことを……まあいい。お前にそれが出来ると?」


「可能です。

 “あなたが本当に欲しがっているもの”を、俺は言語化できますから」



俺は口元だけで笑った。

そのまま、少し目を伏せて静かに呟く。


「“あなた自身もまだ気づいていない欲望”を、俺は言葉にできる。それが──俺の武器です」


俺は恭しい儚げ美男の雰囲気を演出しつつそう言ったのだが……

その言葉に、メルライトの表情がさっと曇った。


「……ふーん。つまり私は、自分で欲しいものも分からない、と?」


低く、静かに、怒気が混じる。


「戯れ言はここまでにしようか。口だけなら退屈だ」


唐突に、指を鳴らす音。

魔力が空間に滲み出すのを感じた。

──まずい、ここが分水嶺だ。


「俺の言い方が悪かったですよ。つまり……」


俺は腕を広げて、視線を真っ直ぐに向ける。

先ずは彼女の大好きなシャトロの話から切り込もう。


「信頼を得たいんですよね。まあ、主にシャトロのような人物の」


メルライトの目が、わずかに細くなる。


「恋愛指南でも提案する気か?」


彼女の皮肉を受け流しつつ、俺は真顔で答えた。


「シャトロのジークに対する忠誠を壊す。そのためにメルライト様に協力してもらいたい。

壊すことも、その後を描き出すことも貴方に取って容易いことでしょう?唯一欲する人材は……誰がどう見ても邪道な存在。貴方が何をしようとも悪役となれる人物」


俺がそう口にすると、メルライトは腕組みをして不敵に笑った。

ああ、これは……信用ではなくて「愉しみ」を見つけた顔だな。


「私の肩書きを知っている語り口だな。口も手もよく動くようだ」


「はい、“信念と破壊を司る大悪魔”様でしょう?

まず、俺が現在知っていることを伝えますよ。恩師の書庫で、悪魔に関する資料を読み漁ったことがありましてね」


次はメルライトに対する理解を示して信用するに足る尊敬を示す。

俺は懐から借りてきた古書を取り出し、捲りながら懐かしげに言葉を繋ぐ。

ちなみに俺がこの世界に来てからまだ一月経っていないのでそれだけの情熱で。


「ここ、“北の国で上位悪魔と契約した少年”の記録……知ってます?最終的に英雄に処理され、でもその英雄は後に謎の死を遂げた。魔力の渦、異常な流れ……そして【固有結界】の痕跡があった」


へえ、と軽い相槌が返ってくる。

そして、俺は集めた資料の中からメルライトに関する資料を取り出す。


「名前は伏せられてました。でも、時期が──当時の商人が記録した貴方の活動記録と一致します」


実際そこまで量は多くないが、実際メルライトは昔から偶に商人達の前に姿を見せていたようだからな。

違和感はないだろう。

静かに、俺は畳み掛ける。


「あなたは、事件が起こった当時に【固有結界】を発動した。悪魔の最大の切り札。

それほどまでに、あなたは“感情”に動かされた」


空気が、張り詰めた。


「……随分と簡単に言うな。奪われたことのある者だけが、“奪う”意味を知っている。

傷ついたことのある者だけが、“支配”の構造を理解している。

だが、見たところお前には“何もなさそう”だが」


そう口にしたメルライトの唇がわずかに笑った。しかし、瞳の奥は凍ったままだった。


「──お前は、そこまで知った上で……そのナリで対等に話そうというのか。

大胆というより、もはや愚かだな」


彼女の声に、冷たい刃が混じる。


「一つ聞こう。お前は──その惚けた頭で、奪われた者の感情が分かるとでも?」


俺は静かに首を振る。


「理解できているとは言えません。けれどあなたは──悪魔でありながら、“王道”を選ぶ人だと感じたんです」


「王道、だと?」


「取引の話じゃありません。人との向き合い方のことです」


俺は、ひとつ息をついた。


「貴方が今俺を“何も無いくせに交渉に挑む”と辛口な評価をしましたが、きっと俺は今まで貴方が避けてきた種類の人間でしょう?切り捨てるには尚早ですよ」


まあ言い換えれば無能だから邪も善もないだろって感じだけど。

一瞬の沈黙。そして──



「……そうだな、確かに」


メルライトは薄笑みを浮かべ、指先で宙をなぞる。白銀の魔力が小さく揺れて、空気を焦がす。

その目は俺には向けられていなかったが。


「良い。私の時間を奪うだけの“面白い”話をするのなら聞いてやろう」


俺は一礼し、声のトーンを落とす。

次からが本旨。シャトロを眷属にすることへの提案を暗に示していこう。


「まずは序章。ジークとシャトロの関係について」


俺の声に、空気が締まる。


「側近として傍に置いてる以上、彼らの間に“歪み”があるのはご存じですよね? もし気づいてないなら……それ自体が異常です」


メルライトの視線がこちらを向いた。


「だってシャトロは、冒険者としての心得も商人としての心得も真面目に守る堅物なのに、あの性格の悪いジークと楽しそうに談笑しているじゃないですか。世界の捩れとしか思えませんよね」


「は?」


「はい、本題に入りましょう。シャトロの剣──“聖女ウィルニア”の遺品が、彼の手に渡った経緯。知ってます?」


「ウィルニア、ね……母の剣を継いだ。それだけだろう」


「ええ、ただし──ジークからの譲渡です」


「……証拠は?」


俺はすっと古びた手帳を取り出す。


「聖剣の装飾にジークの家紋があったことからも推察出来ますし、記録は此方の古参商人の日記に」


「……それの日記もまた盗みか?」


「結果的に人道的な結果に繋げようとしているでしょう?」


感情はぶつけず、論理で削れ。


「シャトロの“信念”は純粋に見える。でもその裏には──“与えられた幻想”がある。


幼少期より、シャトロはジークの家に引き取られて世話をされていたそうですね。

そして、ジークの家は南の国の元伯爵家であり、家の嫡男。父と並び二代に及ぶ暴政を行なっていたとの記録があります。

しかし、自分が為した粛清や悪行の数々の全てを父に転嫁し、自身の所業を徹底的に隠蔽しています」


何も作り話ではない。

メルライトも異国人に自国の文化を説教されるように退屈な顔をしているからな。


「ウィルニアの聖剣は、ジークからの“施し”としてシャトロへ渡された。

丁度聖剣が力を失った時期に。これは偶然じゃない。ジークの暴政の中で一時期行われた“精神操作魔術”で彼が聖剣を利用した時の副作用です」


メルライトがこちらを見るだけで、特に否定はしない。


「ジークはシャトロに“剣”と“家”と“理想”を与えた。

だがそれは、“鎖”でもある」


「……ジークが、シャトロの信念を作ったと?」


「ええ。そして今、貴女はシャトロに新たな“鎖”をかけようとしています。

この機会にジークが悪であることをシャトロに、そして世界に気付かせるべきです。

シャトロに付くべき相手を理解させ、剣を向けたことで貴方へ信念を託すことの意義を理解させる。

そして、貴方はシャトロに開放的な鎖を与え、俺は自由を得たことに喜ぶ。良いことではないですか?」


静かだった空間に、少しずつ圧が満ちていく。


再びメルライトの瞳が凍てつく。銀の魔力がまた、指先に宿る。


「……悪くない演出だ。壊した先を描こうとするその姿勢はな。だが、お前は勘違いしている」


魔力が炸裂寸前。だが、怖気づくわけにはいかない。


「私が欲しいのは、シャトロの“信念”ではない。それだけでは──」


俺は口元を緩め、わずかに笑った。



「ええ、それだけじゃ足りないことくらい──承知してます」


「……?」


「だからこそ──ここからが幕開けですよ」


メルライトは、単にシャトロを脅したり唆したりしてシャトロを眷属にしようとはしていない。

恐らく、彼女の理想である悪魔化にはシャトロのより深い変化が必要なのだろう。


「続けろ」


空間が静まる。

俺は一歩踏み出し、静かに言った。


「南の国に俺が仕込みをする“舞台”があります。まだ生きている、貴方の結界の名残の“門”を使う予定です」


「あれを利用すると?まあ、不可能ではないだろうが……」


懐疑的な声を漏らす彼女。


「はい。俺が欲しいのは、ジークとシャトロを再び交えさせること。そのための舞台装置として“門”を使う。

……その門を生かすために、俺を南の国まで運んでもらえると助かるんですが」


「……ふむ」


「俺はシャトロの価値観を壊し、メルライト様の“忠臣”として新たに仕立て上げる余地を作る。その舞台を作れる。それは貴方を満たすと同時に、あなたが求めている“破壊の力”を産む儀式も同時に遂行できる」


メルライトの瞳が、わずかに揺れる。

俺の言葉に刺さるところがあったんだろうな。シャトロについてか、或いは……


「ほう……つまりお前は、私にもう一度【固有結界】を発動しろというのか。悪魔の最大の切り札と認識しているのに随分な提案だな」


「現存する“門”は鑑定士達にとっての“不壊の魔道具”として分析されているようですから、恐らく固有結界は製作系の魔法ですよね。発動するにあたっては膨大な力が必要だとしても、使用する分にはお応えいただけるかなと思いますた」


「……その口は本当に生意気だな。だが……それだけでもなさそうだ。いいだろう、“羽虫”」


そして、指を鳴らす。

白銀の宝石と金の鎖──ペンデュラムのような魔道具が俺の足元に転がった。


「それを手にした瞬間、私とお前との間に契約が成立する。──ただし、失敗すればお前の魔力は即座に闇への生贄にされる。それでも手を伸ばすか?」


銀の瞳に絡め取られたまま、俺は手を伸ばす。

転がる魔道具。それを掴んだ瞬間、世界の色が沈んだような気がした。

メルライトは満面の笑みを浮かべ、足組みをして言った。


「尽くしてみせろよ。“働き者”として」


…………ん?




……さて。ある程度シャトロに関する心配事項は今の所殆どない。

俺がするべきは……ジークを明確に舞台へ立つ役になるよう動かすこと。

そして、舞台である“門”の準備も終わらせる必要がある。


となると……両方とも遥か南の国だが……

ご要望通り、大悪魔様も答えてくれたようだ。


【青霧のペンデュラム】

膨大な氷属性の魔力が込められたペンデュラム。

規定された区間における【転移】の発動が可能。

現在はメルライトの付与魔法により【悪魔契約】が掛けられている。

契約内容:契約者は、悪魔に対して望まれる以上の“結果“を与える。契約を破棄した場合、契約者の魂を悪魔へ与える。


うん、曖昧でゾクゾクするような契約内容だな。

まあ天才最強軍師の俺に掛かれば恐るるに足らずってところだけどな!!

つまり残るはメルライトの誠実な助力とホスピタリティが証明された事実だけ。

愛してるぞ大悪魔様!!

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