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将来の超絶最強軍師である俺が勇者を堕として最強の料理人を飼い犬にしてとにかく最強  作者: Os


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16/24

ボス

しばらく揺られて進んでたら──

空気がピリッと変わる。


魔物がいる。

Cランク帯の奴らがちらほら出てきた。

中ボスを相手にする前の敵よりも少し強くなったか。


「お、見ろ!Bランクモンスターの【アンデッド・ウィッチ】だ!

ようやくゴールも近いって証拠だな!!」


リーダーがめちゃくちゃ嬉しそうに指差してる。

アンデッドを見て嬉しくなるような機会なんて俺の人生にはあまりなさそうだな。


「思ったより敵が雑魚で使う機会を逃していたが……

ここでそろそろ見せてやる。──聖水の力ってやつをな!!」


リーダーが取り出した小瓶の蓋を開けて、

中身をばしゃっと【アンデッド・ウィッチ】に振りかけた。


「ビシャアアッ!!」


……雷鳴みたいな音が響いて、

魔物の肉がじゅわっと泡立って崩れていく。

白煙が舞って、残ったのは息絶え絶えの骸だけ。


……すげぇな、聖属性……。


「……うわ、本当に効くんですね……」

ロイスが目を細めて肩をすくめる。


「だろ?

Bランクだろうが、アンデッドは結局神の力にゃ勝てん。

上位になればなるほど耐性は上がるが……効かねえと思ったらすぐにこれを使え。

効率よく片付けるコツだ。」


「リーダー……!

我々の活躍の場を残しつつ導いてくださるなんて……!

興奮で死んでしまいます!!」


聖水って結構強力な力が込められてるらしいんだよな。


実は以前、聖属性の魔法の陣紙を作ろうとして、白蛇の聖属性を素材に付与しようとしたんだが……

聖属性の保持が全然できなくて、すぐ効力が抜けた。


物質に聖属性、暗黒属性を長く留めるのは本当に難しい。


大きな力を押し込めるか、素材に工夫をするか……


あ、そうだ。この聖水を使えば……魔法陣に聖属性を組み込めるか?


「お前……こんな時間ですら、その小難しい紙と睨めっこか?」


ゴーテがぽつりと俺に声をかけてくる。

……気づけばまた、彼女の肩の上でメモ帳広げてた。


視線を上げると、ゴーテは呆れ顔だけど……

なんか、ちょっとだけ笑ってる気がした。


「邪魔をするつもりはないさ。

……あたしは、自己研鑽をする奴が好きだからな。

お前は、いいと思う。」


そう言ってまた前を向く。


あんた本当男前だな……!


よし、試作魔法陣がやっと形になった。

……でも詠唱が出来ないのは相変わらずだ。


喉が治ってくれればな……

まあ、無理に詠唱しなくても魔力をぶち込めば動かせるけど。

……俺の魔力容量少ねえしな。


ま、いいか。一回くらいなら──

お試しってことで。


近くのアンデッドめがけて、無詠唱で下級聖属性魔法……

【光芒の矢】!


……え、ちょっと待て、出力おかしくないかこれ。


爛爛と輝く光の塊は、眩しく瞬いたかと思えば

見えない速さで飛んでいって──

熱いエネルギーを撒き散らして、複数のアンデッドをまとめて消し飛ばした。


「うおっ!?びっくりした!!なんだ今の!?」

「聖属性の魔法ですか? 使い手が少ないって聞いてたのに……

怖いので使う時は一言くださいね」

「でも今の、めちゃくちゃ強かったよな!!」


……なるほどな。

素材に込めた力が強すぎて、魔法の威力がバグったか。


威力も派手さも十分だし、

これなら一応、火力要員の魔術師としての面目は保てる……けど……。



思ったより魔力、持ってかれた……。

魔力不足は体にも響くんだよな。

普段詠唱抜きで魔法を使うことがないから想定が甘かった……

と、脳内で言い訳していると、近づいてくる影が一つ。


「もしかして……今の魔法って、その魔法陣で出したんですか?」


ロイスが俺を覗き込んでくる。


俺が首をかしげつつも頷くと、

ロイスは少し考え込んで──ぱっと顔を上げた。


「じゃあ……僕たちでも、さっきみたいな強力な聖属性の魔法が使える……ってことですか?」


おいロイス、目がキラキラしてんぞ。

らしくないじゃないか……そんなに詰め寄るなって……。


「お!いい案だなロイス!

こんなに効く聖水、ここで無駄にするより

ありがたい宗教グッズにして売った方が世のためだ!

ここは全員分の……その……魔道具?をこいつに書かせて節約しようぜ!」


「なるほどリーダー!

私たちにとって使えもしない魔力を有効活用できる!

Win-Winってやつですね!」


おい、全肯定剣士やめろ。俺のWinはどこ行った!?

あと魔道具じゃなくて陣紙だ!!

という謎のプライドが湧いたが……

……まあいいか。


つーか、聖水はもうすぐ期限切れるぞ。

そのまま売り捌いたら詐欺だからな?

……いや、教会襲ってる時点で手遅れかもしれねえけど!!


「リーダー?単に魔道具を搾り取るだけってなると不味いんじゃないですか?この人結構色々出来るみたいですし、今後の付き合いも……」


ここでほんの少しの良心を発揮させるロイス。

今後の付き合い……俺は帰ってまで仮面男として生きるつもりはないんだけどな。

ライアスとモースからも気が触れたと思われそうだし。あいつらに見捨てられたらダメだ。


「あー……そうだな。

じゃあお前の分前を増やす!

だからさっさと作れ!!」


く、くそ……!

だったら中ボスの魔石も、その後のボスの戦利品も……

全部俺がかっさらってやるからな……!!


……頼むから、俺を生きて返してくれよ……お前ら……!!






「【光芒の矢】!!」


リーダーがそう詠唱して魔法を放つと、目の前のアンデッドは一瞬で塵と化した。

副次的に生まれた熱と爆発の余波で、周りにいた雑魚もそれなりにダメージを受けているっぽい。


「すげえな。ここまでの威力の魔道具が、少ない魔力で連発できるとはな。

普通の魔道具なら、付与された魔法に相応しい威力しか出せない筈なんだが」


……そうだな。

それを技術と工夫と金で拡張できるのが、俺の作る陣紙ってわけだ。


とにかく、ゴーテ以外の魔力が少ない奴らに陣紙を支給できたおかげで、

遠距離攻撃手段が増えて攻略はサクサク進む。


その片手間、俺はさっきゴーテにもらった魔力回復作用のある草入りのお菓子を

仮面の下からちまちま食べてた。


あの人、魔力が少ない分、

魔物の攻撃に備えたり非常時に備えたりって、

こういうの常に持ち歩いてんのな。

やっぱりイケメン。


ん……うま……。

もちもちしてて、変に甘くなくて、なんだこれ……?

どこで売ってんだ……? もっとくれないかな……。


そうこうしてるうちに、俺たちはボス部屋の前にたどり着いた。


でかい、荘厳な扉。

……ちょっと緊張してきたな。


「良いかお前ら、最初は俺とミング、ゴーテが敵の動きを鈍らせて耐性を探る。

ロイスは周囲を警戒して、敵の魔法やスキルの予兆を判断し、俺たちを援護だ。

仮面、お前は後方から支援。ロイスも余裕がありゃこいつのことを守ってやれ」


「了解!」


「ふん、まあ先程の試練の主10体分の強さだろう?

その程度、リーダーと我々の相手ではない」


そう言って胸を張るミング。

……ランクの差って、一つ下の魔物10体分の強さって意味だよな?

つまり、一般的なB級1体分の強さでB級と呼ばれてる魔物もいれば、

A級9体分の強さでA級って呼ばれてるやつもいるわけで……。


……まあ、考えても仕方ないけどさ……。

ランク内の幅、でかすぎるだろ……。


不味いことにならなきゃいいんだけど。


リーダーが扉に手をかける。


「さあ、いくぜ!!【セイント・エルダーウィッチ】!!」


俺たちが部屋に足を踏み入れた瞬間、

息を呑むような重圧が空間の隅々にまで行き渡るのを感じた。


荒廃した神殿みたいな、無量の神秘を孕んだ空間。

床には奇怪な紋様が光を帯び、壁には不思議な文字で描かれた紙が貼り付けられている。


その最奥。

骨でできた椅子に座っているのは、一体の骸骨。

空虚な眼窩の奥で小さな光が灯り、

片手に紫色の宝珠がついた杖、もう一方の手には精緻な装飾の盾を構えている。


エルダーウィッチは俺たちに目を向けたかと思うと、杖をゆっくりと振り上げる。

そして──俺たちの周囲に召喚陣が展開された。


続々と姿を現すCランク、Bランク相当のアンデッドたち。


「……!!こりゃ、あの親玉を先に倒さねえと埒が明かねえやつだな!!」


リーダーがすぐに声を張り上げる。


「ロイス!ミング!光芒の矢で敵を殲滅しろ!

敵が減ったらゴーテも道を切り開け!

仮面は遠距離から俺の援護だ!ロイス、余裕がありゃこいつの護衛も頼む!」


言うが早いか、リーダーは駆け出し、

味方支援のスキルを展開しながらアンデッドを次々と斬り伏せる。


俺たちもすぐに後に続き、援護と掃討を手分けして進めた。


こうしてみると……陣紙を渡したのも、あながち悪くなかったかもしれない。


だが。


「【光芒の矢】!!……チッ、雰囲気からして薄々察していたが、アイツには効かねえな!!」


エルダーウィッチには聖属性は効かない。

それどころか、白蛇が出した魔法も結界によって弾かれる始末だ。

白蛇には魔力温存のために中級魔法までを扱ってもらっているが、これは少し様子を見るべきか。


「リーダー!あいつ、また何か仕掛けてきます!」


ロイスの声に振り返ると、エルダーウィッチは

本のようなものを召喚しながら、再び杖を振り上げていた。


召喚陣から現れたのは──

金色の装飾具をつけた真っ白で巨大な鷹……

それに……地面から生えた、不気味な骨の手?


「リ、リーダー!?あれ、どうすんですか!?情報あるんでしょう!?」


「…………いや、ちょっと金がなくてな。基本情報しか買ってねぇ……」


「……………は?」


おい、ロイスが滅茶苦茶冷たい目してんぞ?!

滅茶苦茶不穏なやり取りしやがって……落ち着け。

あの鷹と手……どっちから潰すべきだ?


エルダーウィッチが杖をこちらへ向けた瞬間、

金色の鷹が翼を大きくはためかせた。


その羽を弓矢みたいに鋭く飛ばしてくる。


「【不壊障壁】!!」


ゴーテが即座に展開した障壁が羽を弾く。

だが地面を抉ってる……とんでもない威力だ。


そして。


「……あ?なんだあれ?」


骨の手は床を滑るように移動し、壁に貼られたメモを

器用に剥がしてはエルダーウィッチの元へと戻していく。


それを受け取ったエルダーウィッチは、本に転写して杖を掲げた。


……魔法陣?

ヤバい、来る──!


「…………来ます!気をつけて!!」


魔法発動と同時に、地響きが走った。


「……!!ミング、俺らだ!!」


「……?」


「【獣気解放】!!」


地鳴りの位置に気づいたリーダーはミングを引き寄せると、

背から鳥の翼を広げて真横へ跳び上がる。


次の瞬間、岩の牙が地面からせり上がり、

大きな口を開いて誰もいない空間を噛み砕いた。


ズガァァン、と牙同士がぶつかる轟音が響き渡る。


「……あっぶね……」


ミングを抱えたまま、息を整えるリーダー。

だがミングがすぐに叫ぶ。


「おい!次は鳥が来る!!」


「チッ!!」


リーダーは羽攻撃を避けつつ、俺たちの側へ舞い降りた。


「こりゃ……先にあの鳥を落とすべきか?」


「でも、鳥に構えばあの骨が悠々と魔法を撃ってきますよ!」



エルダーウィッチはまた新しいメモを手にすると、杖を振り上げた。

次に放たれたのは、部屋全体を覆うような広範囲の光の波だ。


ゴゴゴ……と空間がうねり、俺は咄嗟にゴーテに腕を掴まれて飛び退く。

すぐ後ろで光の波が床を薙ぎ、通過したあとの地面は溶けてどろどろになっていた。


……あの骸骨、どうやら壁にある魔法陣の描かれたメモを骨の手で集めさせて、

杖を頼りに魔法を繰り出してるらしい。

どこに何があるかを正確に覚えてるのか?

一度指示した後は骸骨の意思とは関係がないように見えるが……


──ここが俺の魔法陣知識の見せ所じゃねぇの?

いや、でもあんな遠い場所にあると読めねえな。


それに……鷹のほうだ。

さっきからあの金色の鷹、攻撃するたびに

いちいちエルダーウィッチの指示を仰いでる気がする。

つまり、あまり自立して動けないんじゃないか?

今日も天才軍師的な慧眼が冴え渡ってるな。


ゴーテにもらった菓子のおかげで、

魔力はそれなりに戻ってる。


思うより先に行動だ!!


俺は懐から小さな筒を取り出すと、床に転がした。

これは救難信号や狼煙を上げるときに使うアナログな道具だ。


グリコール系の燃料を熱で発火させて、

微細な粒子を巻き上げて白煙を撒き散らす。


「おい、仮面!こんな場所で救助なんざ来ないぞ、馬鹿者!!」


ミングに叱られたが、俺はめげない!!


次に俺は下級の風魔法【風陣】を無詠唱発動させて、

煙を渦に乗せて一気に天井へと吹き上げる。

……やっぱ魔力の消費がでかいな。


鷹の周りが煙で覆われた。

少し動きが鈍ったが、まだ視界はあるらしい。


そこで俺は近くにいたロイスに、自分の持っていた【光芒の矢】の陣紙を押し付けて、

天井を指さす。


「……何です?あんな高いとこ、しかも煙で当たる気が……

……わかりました。【光芒の矢】!!」


放たれた光の矢は煙の中に突っ込み、

粒子に触れながら内部で乱反射して眩く輝いた。


「ギャッ……!?」


鷹が困惑したように鳴き声をあげ、

軌道を乱してふらつくのが見えた。


「おっ!!いいぞ!今のうちに隙を奪え!!」


リーダーは羽を羽ばたかせ、

エルダーウィッチへと一気に間合いを詰める。


しかし──

エルダーウィッチも、どうやら召喚物だけに頼るつもりはないらしい。


リーダーが間合いを詰めるのを見て、すぐに火炎の球を呼び出して応戦する。


「その骨、粉微塵にしてやる!【破落棍】!!」


リーダーは火炎球をすれすれで潜り抜け、鋭い棍撃を繰り出した。

けれど、エルダーウィッチは片手の盾でそれをいなし、逆の杖を振り下ろしてリーダーの脇腹を殴り飛ばす。

リーダーは一旦地面に叩きつけられるもすぐに体勢を立て直した。


「リーダー!?」


「……思ったより力あるなコイツ……って、お前ら!あの手を止めろって言ってんだろ!!」


エルダーウィッチは構わず新しい魔法陣のメモを骨の手から受け取り、次の魔法を発動する。

骸骨の周りに光の幕が張られ、空気が焼けるような気配が広がった。

リーダーが結界に近づき、合わせて離れる。


「いっ……おい!あの結界に触るな!焼けるぞ!!」


強力な結界だ。

白蛇が魔法を撃ち込んでも、弾かれて火花が散るだけだった。

再びエルダーウィッチがアンデッドの群れを召喚する。


「チッ……雑魚アンデッドは問題ねえが……あのでけえ鳥もそろそろ戻ってくるぞ」


「【光芒の矢】!……もう少し時間は稼げそうです!」


「まだ上空にいたのか……?」


煙に隠れていた鷹が、一度自棄になったのか羽をばら撒いて攻撃してきたが、

狙いが定まってないからほとんど外れた。

まあ……今回は都合がいい。




残る問題は、あの骨の手だ。


結界に守られたエルダーウィッチは悠々と魔法を放ち続け、

結界の内外を行き来する骨の手でメモを回収してる。


杖から撃ち出すのは基本属性の魔法ばかり。

聖属性は魔法陣の札でしか扱えないみたいだ。


……なら、手を出すなら、あの骨の手を利用するしかないか。

それと、壁に貼り付けられた魔法陣……アレを確認できれば何か手があるかもしれない。


ちょっと近づいてみるか……と思ったその時。


「あ!危ない!!」


ぐえっ!?

いきなり襟首を掴まれてロイスに引き戻される。

……いや、今ので俺は一回死んだぞ。


「魔法陣の下の床、罠魔法が仕掛けられてます。下手に踏むと消し飛びますよ!」


こわっ……。

じゃなくて。【風霊のマフラー】も声が出せなきゃ展開も出来ない。

だったら、どう近づけば良いんだ……?


「……もしかして、あの壁の魔法陣を見たいんですか?解決策、思いついたとか?」


思いついたっていうよりは……

試したいだけなんだけど……。


俺は小さくサムズアップで答えた。


「……わかりました。じゃあ僕が取ってきますよ。【縫糸】!」


ロイスが気力で作った糸を壁に走らせる。

糸に引かれるようにロイスの体が移動して──

あっさり数枚の紙を剥ぎ取って俺のところに戻ってきた。


「これで良いですか?」


……お前……思ったよりフットワーク軽いし、

最高じゃないか!!


さて、さっそく中身を見てみる。

……ん?


俺はすぐに違和感に気づいた。

この手にあるメモに書かれてる文字──形はちょっと崩れてるけど、間違いなく……悪魔の文字だ。

しかも中身をざっと分析すると、構造は完全に……暗黒魔法だ。


ただ、一つだけいつもと違う。

魔法陣の内部に見慣れない式と記号が追加されてる。

ちらっとエルダーウィッチの足元に展開されてる魔法陣を見ても、同じだ。

……こっちも悪魔文字がびっしり。


ってことは──

勉強中に見たことはないけど、たぶんこれは……魔法属性を反転させる式、だろう。


つまり暗黒魔法に聖属性を乗せて使ってるってわけか。

他の属性に混ぜたらどうなるんだろ……って、好奇心が湧いてきたけど──

今は興味に浸ってる場合じゃない!


「……って、避けないと!!」


「?!」


ロイスが俺の腕を引っ張った瞬間、聖属性の斬撃が真横をかすめていった。

……わあ、首が飛ぶとこだった……。


「はぁ……よく周りを見ているのか見ていないのか……」


……あ、コイツ腕切れてる。

俺を庇った時にか?あー……


そうだ、魔法陣に夢中になってる場合じゃなかった。

冷静に整理しろ。最強軍師の器だろ。


えーっと、この反転式を消すと元の暗黒魔法に戻る。

……聖属性の持ち主は暗黒魔法には耐性があるけど、

聖属性を宿したまま暗黒魔法を扱うと、逆にでっかいデバフがつく。

逆パターン?もっとヤバい。


それなら──方向性は決まった。

反転式を消した魔法陣を、あの骨の手に持たせてやれば、

エルダーウィッチに自滅してもらえるわけだ

「よく分からないけど……あの骨に、その紙を渡せばいいんですか?」


修正したメモを手に骨の手をぼんやり見てたら、ロイスが痺れを切らしたのか肩を揺さぶってきた。

俺が頷くと、ロイスは他の連中に小声で指示を伝えに行く。

エルダーウィッチに盗み聞きされないように、ってことか。


「皆さん!とにかく……あの骸骨の注意を、骨の手から逸らしてください!」


「なるほど?」


何も分かってなさそうな顔でリーダーが頷く。頼りねえな……。

つーかお前口から血出てない?無理しないでくれ。

一方でミングは何か思いついたらしく、指を鳴らす。


「直接手は出せんし……じゃあアレを使うか。ロイス!私があの鳥を落とす!お前は糸で引っ張って頭上に落とせ!!」


「え? ええ!? 出来るかな……」


「リーダーのためだと思えば何でも出来るはずだ!」


「……それ、ミングさんだけじゃ……」


「いくぞ! 【狂気咆哮】!!」


ミングの咆哮が大気を震わせ、鷹に直撃した。

視界を奪われてたせいで混乱した鷹が、バランスを崩してゆっくり落ちてくる。


「【機糸操手】! 【牽糸】!!」


ロイスの操る無数の糸が鷹に巻きつき、壁を支点にして一気に収縮。

鷹の体はズルズルとエルダーウィッチの頭上へと引き寄せられる。


「よし、これで落とせば……」


「ミングさん! このままじゃ逃げられます!」


「……」


糸に絡まった鷹は必死に羽ばたくが、ロイスが【光芒の矢】を飛ばして目に直撃させると、悲鳴を上げて暴れた。


「【共鳴吠声】!!」


さらにミングの咆哮が追撃。

鷹がビクンと体を強張らせた隙に──


「俺が仕留めてやるよ!!【龍天連撃】!!」


見かねて空へ飛んで鷹に接近していたリーダーが羽の根元にデカい攻撃を何発もお見舞いする。

鷹は意図が絡み付いて上手く反撃出来ないようで殴り放題らしい。


「リーダー!!そろそろ落ちます!!」


「ギギャアアア!!」


結界に叩きつけられ、光に焼かれて羽を撒き散らす鷹。

……骨の手は聖属性に耐性があったが、鷹にはなかったらしい。


さて、でかい鳥が転がったおかげで視界が塞がった。

今のうちに、骨の手に渡す紙を差し替えて──


「どわっ!?」


退避しようとした瞬間、いきなり鷹の図体が吹き飛んだ。

エルダーウィッチが視界の邪魔だからって蹴り飛ばしたらしい。

鳥は端っこで悲鳴を上げてる。無慈悲だな。


だが予想通りだ。

エルダーウィッチは骨の手から受け取った紙を魔導書に移し、杖を振り上げる。


展開される魔法陣──そして空気が澱む。


「うおっ!? な、なんだ!? いきなり属性変わったぞ!」


リーダーの驚きが聞こえた。

澱んだ漆黒の魔力が雨のように降り注ぐ。


「【均衡の盾】!!」


俺はゴーテの盾の後ろに逃げ込んでやり過ごす。

……これ聖属性の盾スキルか?なんか攻撃が届く前に消えてね?

何でゴーテも変な顔してんだよ。


そこから様子を見ると、結界が消え、エルダーウィッチの動きが鈍くなっている。

骨の手も止まったままだ。


「……今だ!!」


全員で一気に集中攻撃。


俺も白蛇に頼んで上位魔法をぶち込む。




そして──

光の流砂のように砕け、消え去る【セイント・エルダーウィッチ】。




骸骨の玉座の奥で扉が重たく開く音が響く。


「……勝ったぞ!!」


リーダーの声が高らかに響く。


「……僕たちだけで? 本当に……?」

「さすがだリーダー! 我々もここまで来たか……!」

「……ふん」


それぞれに声を漏らしながら、俺たちは小さく勝利を分かち合う。


「……さあて! お待ちかねの戦利品の確認といこうじゃねぇか!!」


リーダーの声に、緊張が抜けて小さな笑いが漏れる。

ミングが鷹の残骸を引きずって通路を開け、ロイスはエルダーウィッチ達の落とした素材を黙々と拾い集めている。

ゴーテは傷の確認をしてから、俺に小さな包みを投げてよこした。


「……また魔力が減っていただろう」


また食えるのか……謎菓子。


湿った空気に、まだ漂う魔力の残響。

割れた魔法陣の欠片が足元に散らばって、遠くで何かがきしむ音がする。

剥き出しの扉の向こうに、まだ何があるかは分からない。

だが今はとりあえず──


「本当、無事で何よりだ。まあ心配はしてなかったけどな。仮面野郎、お前もありがとうな」


そう呟いて、小さく笑ったリーダーの声がどこか誇らしげだった。


俺も、仮面の下でそっと口元を緩める。

天才最強軍師として後世に語り継がれる俺の逸話と栄光。その序章がこれか……!


短い合間の冒険だったが……まあ、一緒に戦ったことで芽生える情も確かにあるんだな。


一つ、大きく息を吐いて、みんなの背中を追った。




……俺の取り分を増やす話忘れてないだろうな?

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