表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

『シマと小野さんと、忘れられた約束』

日曜の午後。

商店街を歩く人々の足音が遠くから聞こえる。

そんな中、ひっそりと佇む喫茶店スロウ。店内には、香ばしいコーヒーの香りと共に、少しの静けさが漂っている。


「今日も一日、ゆっくりだな」


小野さんはカウンターで、豆をひきながらぼやく。店の窓からは、空が晴れているのに、どこかひんやりした秋の風が入ってくる。そんな日には、いつもこの店に来たくなる。


そして、いつものようにカウンターにやってきたのは…

「ニャー」


シマだ。今日は珍しく、棚の上から降りてきて、僕の足元に座った。


「シマ、どうした?」


僕が声をかけると、シマは少し鼻を鳴らし、目を細めたまま動かない。

そのまましばらくじっとしていたシマが、ついに立ち上がり、僕の方を見て「ニャ」と鳴いた。


「うーん、なんだろうな」


小野さんがコーヒーを淹れ終わると、僕が目を向けた先に、シマが壁のカレンダーをじっと見つめていた。


「あ、もしかして…」


小野さんは、気づいた。


「この日、忘れてたな」


カレンダーに記された、丸い赤い印。

それは、小野さんとシマが、毎年一緒に行く「秋のハイキング」の日だった。


「シマ、ほんとに今日は元気なんだな」


シマは、急に小走りにカウンターを回り、カレンダーをじっと見つめながら振り返った。


「……ごめん、シマ。今年は行けないかもって思ってたけど」


「ニャー」


小野さんはため息をついて、カップを手に取る。

「でも、行かないとね。お前がちゃんと覚えてたんだから」


シマは、鳴き声をあげながら、僕の足元に再び座る。まるで、「準備ができたら出発だよ」とでも言っているかのように。


「分かった、行こう。支度してくるから、待っててな」


こうして、僕と小野さん、そしてシマは、忘れていた約束を思い出し、少しずつその準備を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ