091話 暗雲立ち込める中で
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リキテッドがいると踏んでやって来た闘技場。
来るのが始めてという訳でもないが、その印象は1度目とはガラリと変わって見える。
魔王が存在する世界で使う表現としては適切ではないかも知れないが、さながら魔王城の様だ。
天候がここ最近から続いて悪い事も拍車を掛けている。
雲に覆われて暗くなった空のせいで、こちらの気分まで暗くなりそうだ。
だけど、天気が理由でこの作戦を中止するなんて言ったら怒られるどころの騒ぎではない。
ここは覚悟を決めて侵入するか。
「準備は良いか?ここから先は何が起こるか分からない。そうなると1番大事なのは1人で行動しない事だ。固まって動けば最悪の事態が起こっても、どうにか対処出来る。気力は使うが常に周りに意識を配ろう」
「分かった」
「「了解です」」
「あ、それとベリーにはこれを渡しておくんだった」
「えっ?何々?」
レインズから貰った水属性の込められた魔石をポケットから取り出す。
「水属性の魔石。地面に叩き付けて割れば、一度だけそれに込められた水魔法が使えるから、護身用に持っておくと安心だろ?」
「良いの!?助かる!援護は得意なんだけど、それ以外は全然ダメダメだから」
「そんな事はないって。少しずつ成長してるのはみんな知ってる」
「そうかなー!えへへ、ありがとう!」
褒められて喜ぶベリー。
これはお世辞ではなく本当に成長していると思っている。
今まで戦うなんて機会がなかったお嬢様が、武器を持ちスキルを使い勇敢にも戦う姿を誰が想像出来たか。
その事実だけでも驚きだというのに、向上心と正義感を胸に努力を続けている。
貫き通すという事は誰もが出来る簡単な事ではない。
十分賞賛するに値するだろう。
「そこで何をしている!」
どうやら彼方の方から出迎えてくれたみたいだ。
仲間を呼ばれて厄介な事になる前に対応する。
「いやー、道に迷ってしまいまして。この建物が1番目立ったので目印にしようかと」
「なんだ?旅人か?今、闘技場は閉鎖中だから覚えておくと・・・ん?」
遠くからは俺達の顔をよく見えず気付かなかった様だが、近付くに連れて顔がはっきりと見え出す。
残り10歩も満たない距離を歩けば、触れられる距離に近付くという段階でようやく気付いた。
「お、お前は!?」
声を出した頃には、攻撃の範囲内。
スッと近付いて鳩尾へ向かって1発殴り込む。
苦しそうにした後、大声で何かを叫ぼうとしたがそのまま気絶してしまった。
殺してしまったかと不安になるが息はしているみたいなので大丈夫だろう。
「いやー、危なかったー。てか、これは反応からしてベリー達の情報は全員に共有されているみたいだね」
「1番全員顔は見られているし、闘技場にも参加しているからな。当然、顔は知られていると思う」
「やっぱりそうだよね。それに闘技場は閉鎖中って言ってたから、どちらにせよ中に入る者は怪しいか」
「逆を言えば、守りを硬くしている闘技場にいる可能性が高まったということか。よし、行くぞ!」
「そうだね」
緊張した様子のベリーといつも通り落ち着いて指示に従うリルとラル。
両極端な3人を見ていると少し笑ってしまいそうだ。
何とか笑いたい気持ちを堪えて、リキテッドの居場所の捜索を再開する。
まずは出入り口を探すべきだが・・・
「勿論、正面は警備の奴らがいるよな」
人数は4人。
俺達が正面突破を選んでも誰かが逃げて情報を伝えられる様に多めに配置しているのか。
4人くらいであれば、全員まとめて一気に倒す事は可能だが、先にあるロビーにも当然人は配置しているだろう。
「正面以外の入り口は計4つです」
「その内、3つは通路へ、1つは物置きに繋がってます」
「え?リル、ラルなんて言った?」
「はい、正面以外の・・・「ストップ、ストップ」
2人は困惑した俺を見て、どうしたのかと首を傾げた。
動作は非常に可愛くてずっと見ていたのだが、あまりにも的確過ぎる情報への驚きが僅かに勝る。
「いつ調べたの」
「「最初です」」
最初は確かレインズと獣人族の試合を見た時か。
獣人族が負けたのを見て落ち込んでいたはずだがいつの間に。
「あっ、えーっと。ほら、パンフレットです、パンフレット。それを見たんですご主人様。ねっ?ラル」
「うっ、えっ。あぁー、そうです、そうです。あの時、貰ったパンフレットにこの建物について書いてありました」
珍しく息の合わないリルとラル。
これはどう考えても嘘を吐かれている。
リルは咄嗟の嘘も貫き通そうと堂々としているが、ラルは罪悪感を覚えたのか視線が泳ぐ。
普段はそっくりな2人も、こういう場面ではっきりとした違いがあるのがよく分かるな。
どうして嘘を吐く必要があったのかは気になるが、知られたくないから嘘を吐いたのであってわざわざ詮索するのも野暮な話だ。
情報自体も有用な事に間違いはないので、リルとラルの話はここまでにしておき話を進めよう。
「じゃあ、2人で物置きに繋がっている裏口まで案内してくれるか?」
「「はい!」」
何を言われるのか不安そうな2人は、ようやく明るい顔に戻る。
深くは詮索しなかった事が良かったのか。
本人達が話したくないのであれば無理に聞く事はしない。
いずれは自らの口で語ると信じている。
「ありました!ここです」
年季の入った扉には、関係者以外立ち入り禁止と書かれている。
だけど、そんな事は関係ない。
躊躇う事なくドアノブに手を掛けた。
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