089話 人間族憲法3条
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「リキテッドについての話に入ろう」
「そうね。彼を止める策を考えないと一方的に狙われ続けて終わりよ」
「相手には少なくとも半人半魔の番号から察するに、1500以上の敵がいると思っていた方が良い。それも1人1人強力な」
「問題なのは敵の数だけじゃない。リキテッドの研究をどうやって止めるか。仮にリキッドを殺したとしても、他の技術者がいれば被害は止まらない。」
白司録の言い分は正しい。
止めるという曖昧な表現を使っているが、その肝心な方法が定まっていない。
だから、こうやって頭を悩ませている。
どうにかすると口で言った以上は何もしない訳にはいかないが、早くも行き止まりに当たってしまった。
「はいはーい!ベリー難しい話は分からないんだけど、リキテッドを捕まえて実験をしない様に約束させれば良いんじゃない?そうすれば、ほら少なくとも殺すとかはしなくても良さそうだし」
「んー、それはなー。なぁ、ミラ」
「えっ、えぇ。それは難しいと思うわ」
純粋過ぎる案に俺とミラが困惑する。
ベリーの案は実現出来たら血を流さない平和な解決策といえるだろう。
・・・実現出来たらな。
口約束か、書面での契約かは分からないが、その場で上手く約束させたとしても十中八九保護にされるだろう。
そうなれば、見えない所でまた人が実験大にされていく。
やはり厳しい意見にはなるが、少なくと生かしておけば同じ未来が繰り返されるだけだ。
「方法ならある。隷属の首輪を使えば良い」
「なるほど。確かにそれなら殺さずに命令を聞かせなられるかも知れないが・・・」
俺は気まずいながらもリルとラルに視線を移す。
好き好んで奴隷になった訳ではない2人の前で、無理矢理隷属の首輪を着けるという案を通すのは慮る。
1番平和的な解決方法なのは間違いないのだけど、この作戦を聞いたリルとラルは何を思っているのだろうか。
「それは無理よ」
俺が言葉に出すよりも先にミラが話し出した。
「正規の手続きを踏まない限り人間族では、他者に隷属の首輪を使ってはならないという決まりがある」
「それは知っている。だけど、それは特例を除いて。人間族憲法3条7項、人間族は個人の持つ人権を守り、平和と自由を保障することを義務付けるために、魔導具”隷属の首輪”の使用は人間族で定めた憲法及び法律から逸脱した者に使用する目的を除き、各国の定めた正式な手順を踏まなけばならない」
「つまりは、悪い奴なら使用しても問題ないってこと?そこまでは知らなかった」
「今回のケースは特例に該当する。特例の場合、命令出来る基準が明記されていないから、研究の阻止もできる」
作戦的にはそれでも問題なさそうだ。
後はどうやって隷属の首輪を入手するかと、リキテッドの居場所をどうやって特定するかが問題だな。
1つ言えるのは、前者にリルとラルに関わらせたくはないということ。
これだけは徹底したい。
「隷属の首輪は、私とミラに任せて欲しい」
「俺、ベリー、リル、ラルはリキテッドの捜索だな」
察してくれた白司録が率先して首輪探しを申し出てくれた。
1人で行くと言い出したら却下していたが、ミラがいるのであれば最悪の事態は免れるだろう。
「はい、朝食亭限定定食」
ある程度話が固まって来た頃に、注文していた食事が運ばれて来た。
待っていた定食が目の前に出された事によって、涎が止まらなくなりそうだ。
純白の輝きを放つライスと、透き通った黄金色からは想像出来ない程しっかりとした匂いのオニオンスープ。
そして、限定定食のメインを張るおかずになるのが、この巨大な卵焼きだ。
肉でも、魚でもなく、まさかの卵。
卵焼きだけで皿1つを埋めるのは流石にトリッキーすぎて誰も予想出来なかったのではないだろうか。
確かに朝食に卵焼きは無しではない。
それどころかちょっと嬉しいまである。
だけど、他にメインになる料理があってこその話だ。
ウィンナーやベーコンなんかのちょっとした肉類でも良いし、焼き魚みたいにシンプルに美味しいでも良い。
とにかく卵焼きだけでメインを張る力はないのだ。
「いただきます」
まずはオニオンスープで口を潤す。
軽い準備運動のようなものだが、コンソメのような風味と玉ねぎらしき野菜の特有の甘さが生み出すシンパシーを無限に感じたいと思わせられる。
だが、ここで止まる訳にはいかないのだ。
挑発するかのように自信満々に乗せられた黄色の塊を討伐する必要がある。
まずは1口。
「う、うめぇー!」
「えっ!?ホント!?どれどれー、ベリーも食べよー!うわっ、味濃い!米欲しくなる!」
「そんなに良いリアクションされると気になるじゃない」
「みんな1切れずつ味見してみてよ」
この美味しさを皆に共有したい。その一心だった。
なんと言っても味付けの濃さ。
ただ塩分のある物を入れた口説い塩味ではなく、出汁や卵本来の味を引き出している。
普通に食べるのは勿体無いとすら感じて、ライスを口に掻き込んだ。
これが最大の過ちだった。
もうここからは箸が動くのを食べられない。
ライスと卵焼きを何回も往復して、時々味変でオニオンスープを堪能する。
「ご馳走様でした」
食べ終えてしまえば、哀しさもある。
もう無くなってしまったのかと。
実際、お腹は満たされていて、米粒の1つも入らない。
だけど、まだ味わっていたいと本気で思った。
「ふー満足、満足ー!」
「かなり美味しかったね」
「これだけのボリュームがあって、700ゴールドもしないのも高評価だよな」
味良し、値段良し、速さ良し。
三拍子揃ったこの店は未来永劫潰れる事なく営業していくだろうな。
他のメニューを試せていない俺としては是非ともまた来たいところだ。
「すみません、お会計お願いします」
「はーい」
腹も膨れた俺達は席を立ち上がり、会計へ移った。
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