087話 燃えるは躍進の知らせ
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レインズが来た後は何事もなく夜が明けた。
今の所、俺達を始末する為に送りこんだ刺客はレインズだけなのだろうか。
相手の情報が少ない今、安心出来ないのは確かだが、1つ危険が過ぎ去ったのも事実。
ここは多少のリスクを許容して、外に出てるか。
いつまで逃げ隠れする訳にもいかないからな。
「おはよ、シロー」
「おはよう」
俺が起きて来たのに気付いた最後の見張り当番であるミラ。
わざわざ武器の手入れをする手を止めてから、俺の顔を見て挨拶をする。
「昨日は彼と話していたみたいだけど、上手く話はまとまった?」
一瞬、何の話をしているのか分からなかった。
だけど、直ぐにその彼というのがレインズを指していると理解する。
あの時は全員寝ているものとばかり思っていたが、どうやらミラだけは起きていたみたいだ。
「少なくとももうレインズが襲って来ることはないと思う」
「そのことはみんなにきちんと説明するのよね?」
「そうだな。隠し事をしたい訳でもないし、信じる信じないは別として、そういう事を話していたっていうのは伝えた方が、仲間としてやっていく上では誠実的だよな」
「そうね。アタシも命を狙われた以上許せない部分はあるけど、これ以上干渉して来ないってことなら、そっちの方が有難いしわ」
やはり1番の被害者であるミラは、レインズの事を許せはしないようだ。
「ふはぁーー、おはよー」
「「おはようございます、ご主人様、ミラさん」」
寝惚けながらも挨拶をするベリー。
完全に脳まで起きているリルとラル。
そして、寝起き過ぎて言葉すら発せない白司録。
それぞれの朝の弱さが露呈している感じがする。
このまま今後の動きやレインズの事について話をしても、きっと頭に入るのは少しだ。
一旦食事を取って、頭が覚めてくるのを待つことにしよう。
「と思ったが、保存食や調理器具は宿屋に置きっぱなしだ。今から取りに行くのも面倒だな」
「何?朝食の話?それなら、堂々と食堂にでも行けば良いでしょ?」
「うーん、まぁ、そうだな。レインズが敵でないとすれば、襲われてもある程度は対処出来るか」
そうと決まれば、行動するまでは早かった。
夜を明かした空き家を出て、早朝からやっていそうな飲食店を探す。
まだ朝が早いからなのか、辺りに誰もいない事が余計に緊張感を煽る。
ここまで静かだと、どこからか襲ってくるのではないか勘繰ってしまう。
そんな事を考えていると目の前から人が歩いてくるのが見える。
人数は2人、俺と同じ歳くらいの男女。
見える場所に武器は持っていないし、服装も普通の住民達と大して変わらない。
となると普通の通行人か。
偶々、早くに目覚めて一緒に散歩でもしているカップルなのかもな。
それはそれで腹立たしいが害はないだろう。
腕を組みながら通り過ぎていく、カップルを横目に飲食店探しを再開しようとした。
ただすれ違う一瞬、明らかに漏れ出た魔力と敵意を感じる。
バカでも分かるそれに気付かないはずもなく、武器を手に取りながら振り向く。
それよりも速いスピードでリルとラルが蹴り飛ばしているのが目に入った。
どうやら2人の方が一足先に気付いたみたいだ。
まさかこの中で1番小さな2人に反撃されると思っていなかった敵は簡単に吹き飛ばされる。
「イテテッ!何してんのNo.1500。仕留めるなら確実にしなさいよ」
「ごめんよNo.1490。気付いても止められるとは思ってなかったんだ。それにあの小さな獣人達。かなり強いよ」
「最初からそんなこと分かってたでしょ、全く。本当使えないわね」
奇襲が失敗に終わった事に女側が腹を立てて喧嘩を始めた。
相手はそれぞれを番号で呼び合っている。
これは半人半魔として生み出された者である証拠。
どうやら本格的に追っ手を出して来たようだ。
「もう面倒だし、最初から飛ばしましょ?いつもみたいにさっさと殺して帰りたいもの」
「分かったよ、あんまり見た目よくないから好きじゃないだけどな」
「【強制変身】”ゴブリン”」「【強制変身】”コボルト”」
ゴブリンとコボルトの遺伝子を組み込まれているのか。
スライムの遺伝子でも強かったが、この2人はどうなのだろうか。
「ここはアタシに任せてくれない?」
ミラが俺達の前へ出る。
相手は2人いるのに、ミラで戦うつもりか。
こちらの人数差を活かせば楽に勝てるかもしれないのに。
「でも、ちょっと不安かも」
今のミラはやはり自信がないのか。
そんな弱気を口に出した。
「そうよね、私達に1人で勝てるなんて有り得ないっての」
「僕も流石にそう思う」
「何言ってんの?逆よ、逆。アンタ達じゃ、準備運動にもならなくて不安だって言ってんの」
いや、弱気なんかではない。
強くなろうと前へ進んでいることを俺達に示そうとしているのか。
だったら、俺達から言うことは何もない。
「【爪術】”爪三連撃”!」
「【牙術】”牙突撃”!」
挑発に乗った半人半魔達が怒りのままにスキルを使った攻撃を仕掛ける。
それでも動じないミラ。
距離が徐々に縮んでいき、後少しすれば攻撃が届いてしまいそうな距離になる。
「アタシだって、今まで何もしてこなかった訳じゃない。見せてあげる、新たなステージのアタシを。沸る烈火よ、魂を燃やせ。【魔法剣術】”炎天ノ鼓動”」
いつのまにか習得していた魔法剣術が文字通り火を吹く。
太陽の様に強く逞しい火が双剣を包み込み、向かい来る敵を穿つ。
一振りすれば、轟々と燃え盛る炎が舞い上がり。
二振りすれば、敵を逃さまいと広範囲に渡り目標を追い掛ける。
途中で危機を察した半人半魔達が攻撃を中止して、逃げようとするも時既に遅し。
四方八方の炎が2人の全身を鋭く斬り裂く。
「うがぁ!!!」
「アツイ!アツイよ!!!」
切り裂かれたて生まれた傷口が激しく燃え出し、全身にまで燃え移る。
その熱さや苦しみで彼らは地面に転がるしかなかった。
「ほらね、言ったでしょ?準備運動にすらならないって」
決して敵が弱かった訳ではない。
あの時の魔力からかなり手練であることは分かる。
それなのにも関わらずたった一撃で負けた理由はシンプルだ。
ミラ・マリストック、彼女が仲間である俺達ですら知り得ない程成長していたからに他ならない。
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