085話 1人では知り得なかった感情
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「あれどうなってるの!?」
「いきなり襲って来た。しかも、ミラと士郎を狙って」
「そうだよ!あの人って酒場でベリー達を助けてくれたレインズだよね?」
「やっぱりその前に話してた事と関係ある?」
「そ、そうだとしたらやばくない?結構人脈とかありそうに見えたけど、それ全部使って狙いに来るとかないよね?」
「そうでないとしても、1人確定している相手が厄介」
ベリーと白司録は困惑しながら、捲し立てるように責め寄って来た。
説明をしようにも今見てもらったのが全て。
それ以上でも、それ以下でもない。
「レインズが完全に敵側に回るとはな。こちらも無傷というわけにはいかないだろう。・・・みんなを巻き込む事になるけど、それでも俺はリキテッドを止めたい」
地面を眺める様に深く頭を下げるしかなかった。
これはあくまでも俺の我儘だ。
善意を装った自己満足という名の偽善。
だけど、あの大量の書類に書かれたいくつもの死亡という記録を見てしまった以上引き下がる訳にはいかない。
誰かが止めなければいけないが、その誰かを待っていればその時は一生来ないだろう。
だから、俺がその誰かになる。
「シローの話聞いて反対する人いると思う?ベリーだってそんなの知ったらどうにかしたいって思うよ」
「私もそこは問題ない」
「「私達はご主人様の意見を尊重します」」
4人の意見は一致した。
残すはミラの意見だけ。
ミラは腕を組み、目を閉じて黙り込んでいた。
沈黙の中、何を考えているのか。
分からない自分が悔しい。
10秒にも満たない時間を終えるとゆっくりと目を開けたミラが語り出す。
「逃げたって良いんじゃない?」
ミラにしては随分と弱気な発言だった。
「何言ってるのミラ!だって、人が死・・・」
その言葉を聞いて、興奮しながらも詰め寄るベリーを制止する。
まだ彼女の話は終わっていない。
意見するなら全て聞き終わってからでも遅くないだろう。
「人が死んだ。だから、気持ちが動くのは分かる。でも、相手は人を殺すのを躊躇わないのよ。セレントロンの街の様に奇跡的に誰1人も欠けない保証がある?もう片足を突っ込んでしまったこの状況だけど、今ならまだ引き返せる」
彼女の意見は冷たくも感じるが冷静だった。
戦いとなれば、生死は常に隣合わせだ。
誰も死なない確実な案はこの場から逃げる、ただそれだけ。
「言いたいことはそれだけ?」
ベリーがミラの前に立ち、普段は聞かない落ち着いたトーンで問い掛ける。
「それだけ」
「分かった」
それは目を疑いたくなる光景だった。
普段は暴力と掛け離れた場所にいるベリーが、ミラの頬を狙って手を振りかざす。
止めるべきだが、この距離では間に合わない。
頼むから仲間割れだけはしないでくれ。
どちらも大切な仲間だからこそ、仲良く過ごしてほしい。
そんな願いもこの一瞬で消えていく。
パシンッ・・・
悲しく響くビンタの音。
リルとラルは狼狽え、白司録は目を背けていた。
どうすれば良かったんだ。
俺がリキテッドを止めたいと言ったからこうなったのだとしたら、悪いのは俺であって2人ではない。
だから、仲間同士傷付け合うのはやめてくれ。
心が痛む。
ズキズキなんて安い表現じゃない。
鋭利な刃物で何度も執拗に刺されるような痛みだ。
「ベリーは謝らない。だから、同じようにベリーのほっぺも叩いて良い」
目を瞑って覚悟を決めたベリー。
頼むからこれ以上は。
「・・・しないわ、そんなこと。こんな弱気な姿見せたら怒らせるって分かってたから」
「分かってたならなんで!」
「1人で冒険者をしていた時はこんな気持ち一度もなったことないの。自分の実力不足を痛感することも、大切な仲間を失うかもしれないと思う不安も。全部初めて。みんなの思ってるよりアタシは強い人間じゃない。だから、堪らなく・・・怖いよ」
彼女は自分の弱さを皆に見せた。
こんなに思い詰めたのは彼女への期待が膨れ上がったからだ。
ミラならきっと、ミラだから、そんな勝手な期待が、彼女へのプレッシャーになっていたのだろう。
だから、弱音を吐いた。
本音で皆とぶつかることを選んだ。
自分をもっと知ってもらうために。
「ベリーも怖い!本当に怖い!ミラより圧倒的に戦力にならないし、何も分からないことばっかり。でも、人が死ぬのは悲しいよ。誰かが死ぬかもしれないって知ったら、どんなに怖くても・・・戦うしかないって思っちゃう。だって、その他人にもベリー達と同じ様に大切な人がいて、大切に思ってくれる人がいるから」
「ベリーは強いね。羨ましい」
ベリーの頭を撫でるミラ。
その優しい手付きからは頬を叩かれた怒りなど全く感じない。
「あの・・・さっき叩いた事・・・」
「良いの。気持ちは伝わったから」
「でも・・」
「じゃあ、1つだけお願い。これはみんなにも」
俺達にも向けられた願い。
それを聞いて、一段と背筋を正す。
ミラが俺達も大切に思っているのと同じ様に俺達もミラを思っている。
だから、彼女の願いも出来れば聞いてあげたい。
「戦うなら、絶対に生きて。誰も欠けないで」
「うん!」
全員が頷いた。
俺達は今から死に行く訳はない。
全員で勝って、報われなかった者の弔いをする。
1人で無理でも全員でなら絶対にそれが出来ると信じている。
仲間の絆が深まったこの空間を影で息を殺して観察する男が1人。
当初は見つけたと同時に殺すつもりだったが、聞こえてきた会話が動きを止めた。
師の為に人を殺せと命令された彼は、これを見て何を思うか。
それは彼が何もせず立ち去った跡だけが物語っていた。
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