083話 自分が毒と知る
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「レインズ、お前の知る必要がないことだ」
「知る必要がないだと?俺は後もう少しで薬が貰えたはずだったのに、お前が勝ったからまた1からだ。俺の弱さが原因でもあるが、関係とは言わせねーよ」
武器を手に掛けるレインズ。
さっきまで病室で寝ていた男が、今にも暴れ出しそうになっている。
まだ全快ともいかないだろうに。
俺の返答が相当癇に障ったようだ。
「もう1度だけ問う。どうして辞退した」
「・・・来るなら来いよ。もう1度病室に戻してやるから」
身体の痛みは一時のものだ。
安静にしていれば、いずれ消えていく。
だけど、心の傷は違う。
自分が利用されている事を知れば、複雑な想いを抱える事になる。
ましてや、数え切れない程の犠牲を出している実験であれば尚の事。
「・・・どうしても答えるつもりはないのか」
「・・・どうしてもだ」
「なら、失せろ。顔も見たくねぇ、イキリ女侍らせ」
どうしてか、構えた武器を下ろす。
レインズのその表情は何を物語っているのか、俺にはさっぱり分からない。
だけど、ここで語らずに済むのであればそれで良い。
レインズには申し訳ないが、リキテッドの悪事を止めるのは彼の知らない所でこっそりと行う。
「悪い」
「謝んな、そっちはそっちの考えがあんだろ」
───
「おい、レインズ。どうして、あのまま逃した。お前の願いを聞いてやる代わりに、ワシの願いを聞いてもらう。それが条件だったろ」
物陰に隠れていたリキテッドが姿を現す。
「そうだな、リキテッドさん。でもよ・・・いくらジジイの為でも、この手を血で染める事は出来ねぇ」
「君がそこまで薄情な人間だったとは思っていなかった。君の恩師は育て親同然。物心付く前から沢山の苦労を掛けて来たんだろ?」
心を揺さぶる為に言葉の節々を強調して話すリキテッド。
今までに何人もの人々を騙して来た男は、言葉だけで人を操る。
そうやって人の上に立って来た彼にとって、レインズも他の人間と変わらないと思っていた。
明確な弱点である恩師という存在が尚更リキテッドに結論付けさせる。
「確かに俺はジジイが苦しんでいる時に何も出来ない、輪を掛けて碌でもない男だ俺は。・・・だけど、ジジイはきっと笑って言うぜ?人を殺してまでやり遂げたい事なんて万に一つもあっちゃならなねぇーってな」
「仮にそう言うとしても、生きていてこそ話せる事だ。死んだらそんな言葉すらも聞けなくなる。悲しいと思わないか?」
「悲しいに決まってる。だけど、人は殺めないと決めた。だから、ここから3年また頑張る。ジジイもそんくらいなら生きてられると信じて」
その言葉を聞いて、リキテッドは深い溜め息を付いた。
それはそれは大袈裟に。
「ジャンファンは3年も持たないんだよ。だから、レインズ・・・お前には薬が必要だ。だが、そこまで言うなら仕方あるまい。この話は無かった事にしよう」
押して駄目なら引いて見る。
交渉では特段珍しいということはない技術だ。
人間は皆、主体に自分を置いている。
だから、今まで自分に向けて話していることが当たり前だった話題が、すっと消えて無くなると気になって仕方なくなる。
リキテッドは確信していた。
必ずレインズは目の前に吊り下げられて甘い罠に食い付いて来ると。
故に気付いてはいない。
自らの術中に取り込むことに必死になり過ぎ、出してはいけない綻びを生んだ事に。
「今、なんて言った」
「だから・・・」
レインズの問い掛けにもう一度答えてやろうとするリキテッドだったが、過ちに気付き躊躇いを見せた。
「もうこの話は無かった事にしようとだな」
すぐさま気丈に振る舞ってこそ見せたが、もう遅い。
既にレインズはその綻びに気付いている。
「リキテッドさん、アンタ、以前俺の師匠とは面識がないと言っていたよな?」
「・・・そうだな」
「じゃあ、何故俺の師匠の名がジャンファンだと知ってんだ?」
「ただ調べただけさ」
多くを語らなくなったリキテッド。
ここでまたもボロを出してしまうのは得策ではないと考えたのだろう。
しかし、その言葉の短さが自身の怪しさを知らしめる。
「ついでに、もう1つ。病室では3年持つかどうかと断定していなかったのにも関わらず、今になって3年は持たないと断定したのは?」
「クッ、カッカッカッーーー!!!」
レインズの問い詰めに苦悶の表情を浮かべた後、腹を抱えて大声で笑い出した。
それはもう豪快な笑い声。
今まで堰き止められていたダムが一気に崩壊したようだ。
「何が面白い?」
「何が?バカも休み休み言え!これが面白くなくて何が面白いと言える?弟子を庇って毒を喰らう愚かな師匠と自らが枷になっているとも知らずに師匠を助けるとほざく弟子。本当に笑える程、愚かだ」
ついに本性を現したリキテッドは観念したというには投げやりな態度で答えた。
自らがレインズの師匠に毒を盛っていたことも、その毒を飲ませる為にレインズの名を出した事も。
たったこれだけでレインズが絶望するには十分だった。
人の手によって倒れ込んだ師匠と足枷になった自分、何より唯一薬を入手する手段として頼りだったリキテッドがその敵であったという事実。
何が敵で、何が味方か分からない。
どの言葉を信じれば、報われるのかも分からない。
「殺してやる!!!」
「ワシを殺せば、ジャンファンも死ぬぞ。解毒薬の在処はこのワシにしか分からないからな」
レインズの殺気は止まらなかったが、理性が動きを制止する。
ここでリキテッドを殺せば、師匠が死ぬという事実がある限り、下手動けないと少し考えただけで分かったからだ。
「良いか?レインズ、命令通りシローを殺せ。いや、この際、ミラという女もついでにな。そうしたら、当初の約束通り薬は渡してやろう」
「・・・分かった」
リキテッドは、ようやく手に入れた最強の駒を見て、笑みが溢れた。
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