008話 無料より高い物はない
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「ちょっと良いですか?ミラさん」
「ん?どうしたの?畏まって」
「これがラピッドラビットですか?」
「そうだよ、そんなに強くないから準備運動くらいにしかならないよね」
「・・・いやいやいや!誰があの名前聞いて2メートルの大きな兎想像するんだよ!普通は小さくて素早いだけなのかなって思うだろ」
「あら、安心してちゃんと素早いから」
余計安心出来ないけど。
あの巨体で動きも素早いなら弱点なんてどこにもないだろ。
今から屈強なハンター呼んで来てもらうべきか。
「そんなにボーッとしているとやられるわよ」
くだらない事を考えていると目の前にはラピッドラビットの爪が迫っていた。
ミラの忠告のおかげで目と鼻の先で回避する事に成功したが、正直生きた心地がしない。
「命のやり取りしてるのに考え事とは随分余裕だね」
「馬鹿言うなよ、こっちは必死だっての」
運動のステータス上げておいて本当に良かった。
それと運気も効いているのかも知れない。
「今度は俺から行かせてもらうぜ」
まずは闇雲に攻撃を仕掛ける。
どこに攻撃すれば良いかなんて分からないし、とりあえず少しでも敵にダメージを与えられたらそれで良い。
全身で風を感じる程、体が身軽になっている事に気付く。
動体視力も確実に前より上がっている。
ラピッドラビットの動きは常人の何倍も速いはずなのに、俺からはゆっくりとした動きに見えた。
ギルドで買ったシンプルな剣を持つ手に力が入る。
力み過ぎなのは俺だって分かっているが、どうしてもこの力を緩める事は出来ない。
肉を斬る感触が俺の手に伝わって来た。
一瞬、驚きと戸惑いのあまり武器を手放しそうになってしまうが、目を瞑って少しの間現実から目を背けて振り抜く。
次に目を開けた瞬間広がる真っ赤な血と鮮明に聞こえる獣の雄叫びがこの勝負の勝者がどちらなのかを知らせる。
「こ、これで1匹か」
先程まで活発に動いていた命が、俺の手によって動かなくなった。
その事実が心苦しいとまでは行かずとも、心の中で引っかかる。
「どうだった?結構、初心者にはキツイ相手だったと思うけど」
「いや、思ってるよりも俺が強かった」
「まさかの自画自賛ー?でも、確かに強かったねー!実は経験者とか?」
「いやいや、そんな事は無いって」
「その辺は追々知っていければ良いかな。よし、早速剥ぎ取り始めようか」
どうやらクエストの討伐依頼とは別に剥ぎ取った素材は換金してくれるみたいだ。
てっきり素材も含めてあの値段かと思ったが、そうで無いとするなら思っている以上に稼げるな。
いきなり剥ぎ取りをするのは難しいだろうということで、ミラが剥ぎ取っているのを横から観察する事に。
爪や毛皮を基本的には取っているが、その他の物で気になるのが1つ。
「その石みたいなのは魔石なの?」
「そうそうこれは魔石だよ。良く分かったね。魔物の剥ぎ取りで1番高く売れるのは大体魔石だから覚えておいた方が良いよ」
ガラス様に透明な球体が心臓の付近から取れる。
これが魔石というやつか。
二次元ではこれが大活躍するイメージが強いけど、高値で売れるということはこの世界でもそうなのだろう。
「さーて、後9匹!どんどんペース上げないと日が暮れちゃうよ!」
その後も大体は俺が中心となってラピッドラビットを狩り進める。
ミラがサボりたいからこうなっている訳ではなく、俺に実践の経験を積ませる為だろうと勝手ながらに解釈した。
お陰で後半は動きも大分スムーズに。
結果、日が暮れる前には10匹のラピッドラビットを狩り終えた。
ギルドに戻るとミラと一緒にクエスト達成の報告と共に報奨金を貰う。
カウンターに置かれる金色の硬貨を見て、興奮が止まらない。
このお金を貰う瞬間は仕事を終えた達成感で満たされる。
1万もあれば色々と買える物も多いだろう。
貰ったばかりなのに既に使い道について考えた。
「はい、これ2万Gと素材分の5000Gね」
何故か全額俺に手渡すミラ。
俺はその理由が全く分からず、何度もお金とミラの顔を往復して見てしまう。
「何で全額渡すんだよ。半分はミラの取り分だろ?」
「良いの良いの。アタシ、そんなにお金困ってないから。それに今日は殆どシローの活躍だったんだし」
「うーん、それならお言葉に甘えて」
この提案を断れる程、俺に余裕はない。
異世界に来て間もない俺にとって所持金を増やす事は重要だ。
ギルドではなく個人経営の武器屋や魔導具屋、もしかしたらスキルの書みたいなのを売っている所だってあるかも知れない。
「奢られたり、クエストの報奨金貰ったり情けない限りだ」
「良いの良いの!バディになってくれてかなり有難いんだから!それに今日の動き見てたら将来性もかなりありそう。アタシ、もしかして良い物見つけ当てたかもー」
「まぁ、期待に沿える様に努力はするよ」
「うん、強くなるの待ってるね!じゃあ、また今度」
そのままギルドで解散という流れに。
後ろを向くと彼女は既にどこかへ行ってしまったみたいだ。
今日会ったばかりなのだからそんなものか。
[異性と3時間の会話を確認。180ptを付与します」
それにしても異世界に来てから女子と話す機会が増えたな。
ステータスに関しても意外と戦えるって事に気付いたし。
先行きが不安だったけれど、案外悪くない方向に進んでいる。
ただ、まだ異世界に来て日が浅い。
油断していればきっとすぐに足元をすくわれる。
その危険性は日本にいた頃よりも重い。
命を落とす可能性だって低いとは言えないだろう。
城まで戻る道中、何やら後ろから付けられている様な気配をぼんやりと感じる。
一瞬、俺の勘違いかと思ったが、俺が止まると後ろから聞こえる足音がぴたりと3人分鳴り止む。
大体、察しは付いた。
「人をコソコソつけ回して楽しいか?」
「気付いたとは驚きだな。でも、それなら話が早いぜ」
朝、ミラをしつこく勧誘していた3人組だ。
俺に負けてたのにまた挑みに来たのか。
「おぉー、コイツがお前等ボコした初心者か」
後ろから音も出さずに現れたのは、白髪にサングラスをしたガタイの良い男。
一目見ただけで他の3人とは格が違うのが分かる。
「いや、ダクマズさん。あれは、我々がゆだッ・・ヴッ!」
「おいおい。俺が間違ってるって言いてぇーのかよ、雑魚」
いきなり発言をした1人の首を締めるダクマズという男。
味方では無いのかと混乱すると同時に、成人男性を片手で軽々と持ち上げる腕力に恐怖する。
「イッ、い、いえ!・・・はぁはぁー」
「それで話を戻すが、コイツ等を可愛がってくれたお前にちょっと興味があってな。わざわざ俺が出向いた訳だ」
「なら、無駄足だったみたいだな。俺は今日登録したばかりのFランク。気に留める程でもないと思うけど」
「馬鹿言うなよ。コイツ等3人は弱いけど腐ってもCランク。普通のFランクが勝てる様な相手じゃねーよ。それでも嘘を付くって言うなら、俺が直々に試してやっても良いんだぜ?」
「冗談キツイな。俺の答えがどうであれ戦いたいって顔してるだろ」
「御名答。正解したお前には特別に死をプレゼントしてやる」
瞬きした一瞬。
目を開けるよりも先に俺の腹部に走る衝撃。
この戦いは絶望の幕開けだった。
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