071話 極限の世界に何を感じるか
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!
「ダァーーーー!!!無理、無理、やっぱり無理だ!」
試行回数243回目、失敗。
今回は1番高く積み上げられたがそれでも21個。
どう頑張っても100個は積み上がらない。
安定して置けるのは最初の4、5個で後は神に祈りながら置くのみ。
神経は異常なまですり減り、集中力も無くなりかけている。
疲れが出て来たらしく石を置く手が震え出した。
ゴールの見えない道をひたすらに歩かされている。
本当にこんな訓練が意味あるのか。
そんな事さえも気になり始めて来た。
「まさか、ここまで進歩しないとはね。50くらいはこの段階で積み上げてくれないと」
ずっと黙ってこちらを見ているだけだったエアトラルが痺れを切らして声を掛けてきた。
俺としても行き詰まっていた所のなので、手を休めて一時の休憩を味わうことに。
「そんな事言われても無理ですよ」
「ほら、貸してみな」
横から石を取って手際良く積んで行く。
俺があれだけ苦労した事を物の数分で綺麗に積んで見せた。
こんなスピードで積み上げたのが信じられず、100個も本当にあるのかと疑いたくなる。
1個でも少なければ文句を言ってやろうと思ったが、1個も欠けてはいない。
何か魔法で取れない様にしているのかと思い近付く。
動いた僅かな振動で石は大きく揺れ始め、終いには崩れ落ちてしまった。
「これが極まるってことよ。アンタがやってるのはただこなしているだけ。なーんの役にも立ちやしないよ」
「これ本当に人間が出来る領域の話ですか?」
「はぁー、まだ疑うのかい?見ただろ実際に」
「見ただけではやり方なんて」
「世話の焼ける奴だね。しょうがない、まず石を手に持って自分の思う様に積んでみな」
言われた通り手に持った石を積み上げようとしたが、地面に付くか付かないかのギリギリの所で腕を叩かれる。
「イタッ!なんで!?」
「その時点で100個も積み上りゃしないよ」
「この時点で?なんで?何も分からないんですけど」
「意識が散漫している」
唐突に叩かれた割には指摘している事がおかしい。
どこを見ていたのかは分からないが、俺は石を積み上げる事以外に意識を注いではいなかった。
「そんなはずは・・・。だって、石を積み上げる事に全神経を・・・」
「視界にはどのくらいの物が見える?手先の触れる感覚はどのくらい感じる?石が僅かに揺れる音は?空気が僅かに揺れて変わる匂いは?自分の運動量によって変化する唾液の僅かな味は?」
「はい?五感の話ですか?」
思いがけない話に思わず質問を質問で繰り返す。
それを聞いたエアトラルはため息をついてから答える。
「はぁー、これだから若僧は。意識してなくても人は常に何かを感じ取っている。これは当たり前だが、五感というものが働いているから。じゃあ、この五感の内、石を積むの必要なのは何個だと思う」
「そりゃ、目と音と手、3つとか?」
「正解は1つ。1つあれば良い。目でも、耳でも、手の感触でも、匂いでも。どれか1つさえ極まった状態にあれば100を積める。」
「そんな事が・・・」
「じゃあ、耳だけで良い。耳だけに全神経を捧げな」
目を閉じて、なるべく空気を吸わない様にして、石を積み上げようとする。
「目を閉じようが閉じまいが意識は変わらないよ。寧ろ、目を閉じているという事実が強調され、より強く意識してしまう」
「そんなこと言っても目を開けたら視界に色々な物が入って」
「1から10まで世話が焼けるね。アタシの言った通りにやんな。まずは呼吸、それだけに意識を持っていく」
言われた通り、自分の呼吸に意識を向ける。
深くも浅くもない穏やかな呼吸だ。
呼吸に合わせて肺が動くのがよく分かる。
「これで意識の極限化の導入は完璧だよ。後は極限化する五感に集中する。今この場にある微かな音も逃さずに耳で追え。そうすれば、極地まではもう1歩だよ」
他のみんなが喋っていて何がなんだか。
いや、・・・待てよ。
全員の声がハッキリと聞こえる。
内容だって何を言っているのか丸分かりだ。
分かる、全部分かる。
この感覚をもっと知りたい。
これがエアトラルの言っていてた意識の極限化。
言葉では何を言っているのか理解出来なかったが、体験するとその凄さを実感する。
凄さという抽象的な表現の中に含まれる感覚は身を持って体感した人でなければ分からない。
そんな未知の領域。
このままの勢いで石を積み上げれば、課題の100個など楽に終わるだろう・・・と思った。
後ろからエアトラルが近づく音が聞こえる。
今、手を振り上げた。
何をするのだろうかと思った瞬間、そのまま振り下ろした。
「カハァッ!!!ゴホッ!・・・・ハァハァ!」
強い衝撃と共に意識が通常の状態に戻る。
同時に息をするのも忘れていたことに気付く。
押し寄せる空気が身体中に酸素を巡らせた。
「意識の極限化をコントロール出来ていない。意識外の事が停止している内はまだまだ。死ぬ為に教えてんじゃないんだから、ちゃんとコントロールしてもらわないと困るね」
「でも、俺後少しで掴めそうな気がします」
「・・・死んでもやるのかい?」
「これから先の旅で死なない為にやるんです」
「本当、ミラと言い、お前さんと言い最近の若者は聞き分けが悪くて困るね。・・・好きにしな、死にそうになったらまた叩き起こしてやるよ」
「ありがとうございます」
こうして俺達は丸一日を費やしてそれぞれの特訓を行った。
たった1日という短い時間。
だけど、得られたものは決して小さなものではない。
明日は闘技場に参加するかまだ決まっていないが、いずれ参加するとなった時に今日という日が糧になるのは明白だった。
ストックが全て切れてしまった為、一時休載します。
再開は4月1日を予定しています。
ご迷惑をお掛け致しますがよろしくお願いします。




