066話 雨降らずとも持つ傘
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うおぉーーーーー!!!
熱気に包まれる闘技場。
まだ中には入っていないのにここまで声が漏れ出していた。
流石はこの街の看板である施設なだけはあるな。
って、そんなことを考えている場合ではない。
歓声が聞こえたといことは既に試合が始まっているということだ。
見逃さないようにと思っていたのに、これでは完全に1試合目を見逃してしまっている。
せめて2試合目は冒頭から見たいので急いで受付へと向かう。
「こんにちは。こちらはカタロフィ闘技場、世界一の強さを求めて腕利の人々が集まる場所です。本日は10時の段階で試合参加のエントリーは締め切っておりますのでご了承ください」
「観戦はまだ出来ますか?」
「個室タイプの観戦席は埋まっていますが、一般席にはまだありますので可能ですよ」
「じゃあ、6人分で」
懐にしまった金貨を入れた小袋を取り出して支払いを済ませようとする。
しかし、受付嬢は6人分の金額を教えようとしなかった。
何が起こっているのかと思い、受付嬢の顔を見ると困惑した表情を浮かべている。
「あの、すみません。そちらの獣人族2人は隷契の首輪を付けているので奴隷ですよね。非常に言い辛いのですが奴隷は契約者の所有”物”という扱いになるので入場料金を頂く訳にはいきません」
あくまでも奴隷に人権はないということなのか。
それはこの世界のルールだ。
変えるのが非常に難しいルール。
だけど、俺の中にあるルールとは異なる。
奴隷であろうとなかろうとリルとラルは仲間であり、家族だ。
そんな2人を嘘でも物とは言えない。
「これは6人分の入場料金です」
受け取れないと言っている受付嬢に無理矢理金貨を手渡す。
「2人は物ではないのでお金は払います。そのお金はどうにか利益に計上するなり、貴方が懐に収めるなり自由にしてください」
「ですから、困りますよ。そのお金は受け取る訳には・・・」
「何を騒いでおる。問題でもあったか」
「リキテッド・ワーブル様!こちらのお客様が奴隷分の料金まで支払おうと」
恰幅が良く、白い髭が綺麗に伸びているのが印象的な老人が目の前に現れた。
職員全員が例外無く立ち上がり、乱れた服装を正す。
その光景を見れば、この老人が相当偉い立場なのは分かる。
威厳の風格から何を言ってくるのかと身構えた。
「カッカッカッ!面白い小僧もいたもんだ!奴隷を人と説くか!何をしている、そのお金は受け取っておけ」
「良いのですか?」
「ワシの命令が聞けんか?良いじゃないか、この世には色んな人間がおる。そんな中に奴隷を人間扱いする奴もいるだろう」
中々話の分かる老人だった。
てっきり何を言っているのだと突き放されるかと思ったが、どうやらお金を受け取ってくれるらしい。
「助かりました。ありがとうございます」
「礼を言われる様なことをしておらんわい。多く金を出すというならその分ワシの懐も潤う!カッカッカッ!」
豪快に笑いながらその場を後にするワーブル。
愉快な老人に助けられたのは良いが、その間にも時間を進んでいく。
入場料を払い終わったことだし、俺達も中で試合を見届けよう。
受付の隣にある通路を抜けると観客席に繋がっていた。
外で聞いた時の何倍も大きな歓声が耳に嫌でも入る。
既に始まっている2試合目を見て、座る席の確保よりも先に観戦を始めた。
「流石はカタロフィ闘技場2年連続無敗の男、レインズ!獣人族の挑戦者、ルーフを子供の様に遇らっていく!」
少年達も噂していたレインズという男とリル、ラルと同じ獣人族の戦いが行われいるらしい。
個人的にはリル、ラルと同じ獣人族の方に勝って欲しい気持ちもあるが、どうやらそれは難しいようだ。
圧倒的な身体能力を持ってしても無敗という称号を持ったレインズという男の前では無力。
「あの武器って傘だよね?あれでまともに戦えるのすごくない!?」
ベリーの言う通り、レインズの武器は真っ赤に染まった傘。
観客席からではどんな素材を使っているのか見えないが、獣人族の身体能力と鋭利な爪を持ってしても傷1つ付かないという強度を誇っている。
いくら強度があるからと言っても傘を武器として扱えるのは相当なセンスが必要だ。
簡単にやってのける話ではない。
「おっとルーフがまたも攻撃を仕掛けた〜!強靭な脚力から天高く空へ飛び、地上目掛けて蹴りをお見舞いする!」
これは勝ち目があるかも知れない。
一瞬でもそう思った自分がいた。
だが、願い届かずルーフの攻撃は開いた傘によって防がれる。
威力を失ったルーフは地上に降りたが、その着地のタイミングと同時に折り畳まれた傘を向けられて降参した。
「彼、すごいわね」
A級の冒険者であるミラでさえ、彼を見てそう思ったようだ。
俺もこの試合も見ていて早く彼と戦いと思った。
どれだけ強いのか、俺の実力がどこまで通用するのか。
試してみたいという気持ちになる。
「次の試合が始まる前に俺達の座る席も確保しよう」
「賛成!思わず立ったまま観戦してたけど、足が疲れた〜」
数分立っていただけで疲れたというアピールをするベリー。
彼女の為にも早く席を見つけてあげよう。
この場から離れようとすると、リルとラルが観客席に設置されているフェンスに掴まりながら食い入る様にフィールドを眺めていた。
表情は好ましくない様子。
やはり同じ獣人族がやられるのは心苦しかったのだろう。
「ほら、リル、ラル。行くよ」
「「・・・はい」」
何か言いたそうな2人。
「どうかしたのか?」
「「いえ、何も」」
何もないとは思えないが、2人が話さないなら詮索するのも良くない。
とはいえ、元気のないリルとラルを見ているのは辛いので両脇に抱き抱えてあげることにした。
気を遣っていることを察したのか何も言わずにただ甘えてくる。
俺に出来るのはこれくらいだけど、多分これで十分だった。
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