065話 花咲く道で
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食事を終えると少しばかり進むスピードも早くなった。
やはり、食べ物が人を元気にするという認識は間違っていなかったらしい。
魔物と出会っては倒してを繰り返しているとようやく、洞窟の終わりが見えて来た。
しばらく薄暗い洞窟の中にいたせいか、その先に見える光が眩しく思える。
その光へ吸い寄せられる様に歩き出した。
「すごーい!綺麗ね!」
「可愛い!シロー、お花が沢山咲いてるよ!」
「図鑑で見るよりも鮮やか」
洞窟が終わるとその先には一面に広がる花畑があった。
そして、その奥に見えるのがカタロフィという街らしい。
3人はカタロフィの事など忘れて花に夢中なので、カタロフィに辿り着くにはもう少し時間が掛かりそうだ。
それでも想定より早く洞窟を抜け出せたので問題はない。
「リルとラルは行かないのか?」
2人とも女性陣に混ざりたそうにしているリルとラル。
尻尾をブンブンと振りながら花畑を眺めていた。
「あの・・・」「でも・・・」
チラチラと俺の事を見る。
・・・あぁ、なるほど。
俺が1歩離れて見ていたから行こうにも行けなかった訳か。
「ほら、行こうぜ!」
遠慮がちな2人を両脇に抱えて、3人の所へと合流する。
やはりリルとラルも遊びたかったらしく大はしゃぎしながら花畑で遊び始めた。
2人を横目に綺麗な花を眺めて心が癒される。
花を見るなんてあまり柄ではないと思っていたけど、そんな先入観を捨ててみると案外楽しめるものだ。
名前なんて1つも分からないけど、マリーゴールドの様な温かみのある花とか、ラベンダーの様に優雅な花など、1つ1つ個性があって面白い。
ん?なんか1つだけ、明らかに他の花とは違うものがある。
何が違うのかと言われると説明が難しいのだが、オーラというか、存在感というか。
とにかく他の花とは比べ物にならないほど見惚れる花だ。
『ミレニアム草』
説明:1000年に1度、1本の花を咲かせる。見た目が美しいのは1000年間、空気中の魔力を蓄えているから。その花に秘める濃縮された魔力は難病さえも治すと言われている。
「なんか凄そうな花を見つけたな」
手で触れて良いのかさえも分からないレベルの花。
こんなにレアな花を簡単に見つけてしまって良かったのだろうか。
「それ、ミレニアム草。かなり珍しい」
ミレニアム草に気付いた白司録が俺の後ろからひょっこりと顔を出す。
この貴重な花にさえ、顔色は変わらないがいつもより興奮しているのは分かる。
「貰っていこうぜ」
「良いのかな?少し悪い気が」
「見つけたのは俺達だし問題ないだろ。それに売って儲けようとかじゃないし」
「それはそう」
「俺は持っていても腐らせるだけだから白司録が貰ってくれ」
摘んだ花を白司録に手渡す。
「ありがとう」
やはり表情はあまり変わらない。
だけど、例え表情が変わらなくとも心は満面の笑みを浮かべている様に見える。
「あぁー!ずるい!ベリーにも何かお花ちょうだいよ!」
「ちょうだいって、そこら中に生えてるんだから取れば良いだろ」
「ケチッー!良いじゃん!シローが選んでよ!ベリーに合いそうなお花」
こうなったらベリーにも花を摘んであげないと先へは進めない。
彼女にも迷惑は掛けたし、これくらいの我儘は可愛いものか。
いざ選ぶとなると中途半端な物を渡さない。
色とりどりの花の中から明るくてムードメーカーのベリーに合う花を探す。
「うーん・・・おっ、これだ!」
パステルピンクの花びらに白いアクセントが散りばめられている。
そして何より他の花は咲いているのにこの花だけはまだ完全には咲ききっていない。
そんなマイペースな所もベリーに似ている様な気がする。
「可愛い〜!ありがとうね、シロー!すぐに枯れない様に押し花とかにする!」
これで喜んでくれるなら選んだ甲斐があった。
そう思っているとクイクイッと後ろからズボンを引っ張られる。
リルとラルが呼んでいるようだ。
どうしたのだろうかと振り返ると両手を受け皿にして自分達にも選んで欲しいと並んで待機していた。
ちなみにその列にミラも混ざっている。
「よっしゃー!頑張って探すか!」
こうなれば勢いで探すしかない。
それぞれに合った花を選ぶとみんな大事そうに閉まった。
普段は花畑を見ても綺麗とは思いながらも足を止める事はないだろう。
今回は偶々みんなと一緒にいたから遊んでみた。
実際に間近で見てみると、景色だけでなく、香りや風に揺られてゆらゆらとした動きなど似てる様で全く違う顔色がある。
そんな小さな気付きを得た。
「さぁ、十分休んだな。後少しでカタロフィだ。まだ日が傾いていない内に行こう!」
───
10分も経たないくらい歩くとカタロフィへと辿り着いた。
セレントロンの時とは違って人で溢れかえり、賑やかな声がここまで聞こえてくる。
闘技場があると聞いていたのでもっと殺伐としているのかと思っていたが勘違いだったらしい。
街は入ると一般市民よりも武器を持った冒険者らしき人々の方が多いことに気付く。
力比べをするには持ってこいのこの街は冒険者と相性が良いのかも知れない。
「おい!そろそろ今日の試合始まるらしいぜ!」
「うわっ、まじかよ!レインズの連勝記録見届けないとな」
子供達が大きな声で走り去って行く。
どうやら、丁度このタイミングで闘技場の試合が行われるらしい。
まだ街に来たばかりで宿の確保など優先すべき事はあるが、正直気になる。
この世界に来て日が浅いので、どんな強者が存在するのか一目見ておきたい。
「アタシ達も観に行こう?この街へ来たんだから結局は闘技場に参加するんだし、敵情視察ってことにして」
「よし、行くか!」
子供達の向かった方向へと歩き出す。
この街にはどんな強者がいるのか。
言葉には出さないけれど興味が湧いて自分がいた。
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