006話 美味い話にはお気をつけて
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「ここがギルドの受付カウンターで、冒険者としての登録、更新からクエストの受注まで全ての事務がここで可能よ。冒険者のランクが高くなると専属の受付嬢が出来るけど、アンタには当分先の話ね」
丁寧にギルドの説明をしてくれるミラ。
それの説明を受けながらギルドの設備が充実している事に関心する。
定番の受付からクエストボードは勿論のこと、冒険者同士の情報を交換するための酒場や必要最低限クエストに必要な物を売る道具屋と申し訳程度の装備屋まで存在する様だ。
こんな所を見せられたら最初は冒険者として登録するつもりはなかったが、登録したくなってくる。
「ん?あそこに階段が見えるけど、2階もあるの?」
「2階はギルド職員の会議室と大量に素材がある場合の専用カウンターね。今はそんなに用が無いだろうから覚えなくても大丈夫よ」
確かに上の階は高ランクの冒険者専用って感じがする。
「さて、ギルドの設備に関する説明は大体このくらいね」
「ありがとう。正直、1人で入るのは心細かったし助かった」
「じゃあ、折角だし酒場の方で食事して行かない?アタシがお金払うから」
「いやいや、そこまでしてもらうのは悪いから自分で払って」
「良いの良いの!先行投資みたいなもんだから」
先行投資というのは意味が分からないけど、俺は所持金に余裕がある訳でもないので男としては恥ずかしいけど奢ってもらう事にしよう。
いずれお金に余裕が出て来たら倍にして返せば良い。
酒場の方へ行って席へ座ると、色んな冒険者からチラチラと見られている事に気付く。
先程の3人に口説かれていたのからも分かるように、きっとミラは冒険者として名が知れ渡っているはずだ。
そんな有名人が、名も知らない冴えない男と一緒に食事してたら気になりもするか。
「ん?どうしたの?何にする」
対面に座っているミラが、メニューを俺に見せるながら説明する為に机の上で前のめりになる。
だけど、その態勢は非常にまずい。
俺も健全な男子高校生なので、なるべく見ない様にはしたくてもついつい強調された胸部に目がいってしまう。
「でー、アタシのおすすめはこれなんだけど、サッパリ系が好きならこっちが良いかも」
真剣に説明してくれているミラを見ると申し訳ない気持ちが勝って正気に戻り説明を聞く。
「じゃあ、このドラゴンステーキ丼で」
「おっ、お目が高いね!最近ドラゴンの肉が大量に手に入ったとかで格安で提供されたんだよね」
「なんか美味そうってのは写真から伝わって来るよな。特にこの肉汁とか・・・」
「アタシもそれにしよっと。すみませーん!ドラゴンステーキ丼2つで!」
料理が出来るのを待つ間は色々と世間話をしていた。
俺の事については根掘り葉掘り聞いて来る事せず、あくまでも当たり障りのないことを聞いて来るぐらいなのは、ミラの気遣いを感じる。
「はーいお待たせしました!ドラゴンステーキ丼2つです」
「何回見ても美味しそー!」
「こ、これは!匂いからして美味いと断言出来るぞ!!!」
最初の印象は見た目よりも鼻腔をくすぐる香辛料と肉を焼いた時に出る香ばしい匂いが俺の空腹を刺激する。
続いて、肉にコーティングされた黄金に輝く肉汁と彩りとして乗せられたネギっぽい食べ物、そして何より完璧過ぎる焼き加減は、無意識に箸を掴ませてくる。
抗うことの出来ない食欲に抵抗することすらせず、わんぱくに口の中へと頬張った。
「う、うめぇーー!なんだこれ!これだけで1ヶ月生活出来るんだけど!」
俺がこの歳に相応しくないはしゃぎ方をしているのをニコニコと見届けるミラ。
その間に彼女は一切料理に手を付けていない。
それに疑問を抱きながらも料理を食べる手は止められ無かった。
「ふー、ごちそうさま」
「どう?美味しかった?」
2人が食べ終わると味について感想を聞かれる。
興奮気味に味の感想を伝えているとミラがスマートに会計を済ませていた。
「本当に良かったのか?奢って貰って。俺なんもしてないのに」
「このドラゴンステーキ丼、いくらだと思う?」
「えっ?2000Gとか?」
「1万G」
「い、1万!?」
「美味しそうに食べてたよねシロー!だから、アタシお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
だ、騙された!
勝手にあの3人から助けたお礼だと心のどこかでは思っていたが、お願いをする為の罠だったとは。
最初に報酬を渡す事で逃げ道を潰すとは、あまりにも高等手段だ。
まんまと罠に引っかかったアホが1人。
どんな願いを言い出すのかと思いビクビクしていると、ミラが言葉を続けた。
「アタシとバディを組んで欲しいの」
「バディ?」
意味は分かるがどういうシステムなのかが分からない単語が現れた。
恐らくはこのギルドにおいてパーティに近しい役割を持つのだろうけど、俺とそれを組むメリットが何1つ思い浮かばない。
「まず先にバディについて説明すると、冒険者2名でギルドに登録するグループのことよ。メリットとしては、クエストをバディランクで受ける事が出来たり、バディ登録している冒険者にしか受けられないクエストがあったりするの」
「そこまでは理解したけど、それってあまりミラにメリットが無いように思えるんだけど。だって、俺冒険者登録すらしてないんだよ?」
「あー、大丈夫大丈夫!アタシ、そこは期待してないから。重要なのはバディ登録とパーティ登録、これを同時に受ける事は出来ないってところよ。シローも見たと思うけど、アタシ変な奴らに勧誘される事が多くてさ」
「それなら問題ないかも。俺、頻繁にギルドへ来れる訳じゃ無いから登録するだけで良いなら助かる」
それに1万Gに対するお願いがこんなに簡単な事なら了承するしかない。
もしかするとこれも彼女の交渉術なのかも知れないが、俺としては何も損していない。
「じゃあ、今日はこの後暇なら色々登録済ませてクエスト行こうよ!アタシ、サポートするからさ!」
「逆に良いの?何から何までおんぶに抱っこで」
「良いの良いの。恩は売れるときに売った方が良いんだから」
その思考は嫌いではないけど、多分本人を前にして言わない方がいいと思う。
折角の尊敬が半減してしまうから。
そんなこんなまさかのバディを見つける事となった。
ミラは自分にしかメリットが無いと思っているだろうけど、俺にもバディ制度とは別で隠されたメリットが存在する。
「これでポイントに困った時は頼れそうだ」
彼女には聞こえない声で呟きながら、ガッツポーズをした。
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