034話 旅立ちは朝早く
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まだ人が賑わっていない朝の街に俺は1人で立っていた。
風は無く、登り掛けの太陽が温かな日差しを運ぶ。
こんなに心地良い天気にも関わらず、俺の気持ちは穏やかではない。
寧ろ、沈んでしまっている。
昨日の事、俺は忘れもしない。
ただ罪を償わせたいという思いだった。
それがここまで拗れてしまうとは。
他の人が起きてくる前に出発したい。
これはあくまでも俺の問題。
だから、他の人は巻き込めない。
「さてと、この街にも世話になったな。1ヶ月弱くらいしかいなかったけど、感慨深いものがある」
「あーら、それならアタシに一言声くらい掛けてくれても良いんじゃない?そうでしょ?シロー」
「・・・ミラッ!どうしてここに」
「朝のトレーニングしてたら、こんな時間に見た事ある顔の奴がいると思って近付いてみれば、こんなに荷物背負った人がいるから」
ミラは昨日の出来事を知らない。
ここで事情を話せばきっと着いてくると言うかもしれないので敢えて口をつぐんだ。
「王都から出て行くんでしょ?それなら、アタシも着いて行くわ」
「・・・え?」
「事情なんて詳しくは知らないけど、シローはアタシが困った時に手を差し伸べてくれた。だったら、今度はアタシが手を差し伸べる番じゃない」
俺がいつ手を差し伸べたのか。
ミラにはいつも助けられてばかりだと言うのに。
これ以上助けて貰う訳には、そう思ったが言えなかった。
優しさに甘え、付け込んでしまう自分の弱さが憎い。
でも、頼りたくなる程ミラは心強い。
人を巻き込めないと思いながらも、1人では荷が重いという気持ちがどこかしらにはあったのかもな。
「ま、待ってぇーー!!!はぁ、はぁ、はぁっ・・・」
またも1人の来客が現れた。
普段は運動すらしない箱入り娘がどうしてここに。
「ベリーもその旅に付いていく!」
ベリーストは息を切らしながらも高らかに宣言した。
きっと昨日の時点でマックジーから色々と話は聞いているだろう。
彼女もまた思う所はあるかも知れない。
でも、だからと言って連れて行くのはあまりにもリスクが大き過ぎる。
彼女の目は真剣だった。
ここで断っても諦めない。
そんな目をしている。
「旅と言っても余りにも危険だぞ。いつ死ぬかも分からない状態が続くんだ」
「それでもベリーは付いていく。お姉ちゃんが悪いことしたのに妹のベリーが黙っていられる訳ないよ。それに色々な国を巡れば、ベリーの呪いも解けるかも知れないし」
理由は理に適っていた。
戦闘面で心配が残るけど、そこは俺とミラでカバーすれば良いだろう。
それにベリーストの呪いは確かに解呪してあげたい。
「分かった。付いて来たいならそうしろ。でも、何かあったら自分の身は自分で守れるくらいにはなってくれよ?それが絶対条件だ」
「うん!分かった!」
あー、最初の1人で旅立つという意志はどこへやら。
気付けば3人で旅をする事が決まってしまっていた。
だけど、彼女達のやる気に満ち溢れた顔を見ているとやはり断らなくて良かったと思える。
「よし、出発するか」
「最後の別れはなしか?士郎」
「そうだぜ。折角、仲良くなったのによ」
「クラスメイトが旅立つのに立ち合わせてくれないのは寂しいよ」
蓮也、日比野、尾美。
この3人にまでバレてしまっていたとは。
・・・俺ってそんなに分かりやすい?
感情とか表に出さないタイプと事情していたんだけど、結構出てたりするのか?
そう思うと急に顔が熱くなる。
「そんな最後の別れみたいに言うなよ。生きていればまたどっかで会えるだろ」
「楽観的過ぎるだろ。まぁ、良い。俺達も魔王討伐に動き出すから本当に出会う事があるかと知れないし」
「3人で行くのか?」
「今の所はな。他の生徒達は魔王という未知の存在に恐れをなして、今の生活に甘んじている。それが悪いとは言わないけどな」
「だったら、俺の紹介って事で尋ねてほしいパーティがいる。人を募集していたし、もしかしたら強力な仲間になってくれるかもな」
クランについての情報を紙に書いて渡した。
この3人なら問題なくクランのパーティでやって行けるだろう。
「頑張れよ、士郎」
「あぁ、お前もな」
男の別れは言葉短く。
それ以上は何も言わなかった。
言いたい事を詰め込まなくてもきっとまた会えると確信しているから。
別れを済ませた俺達は朝一番の馬車に乗ることにした。
御者のおじさんは朝だと言うこともあって眠そうだ。
欠伸を噛み殺しながら客を待つおじさんに声を掛ける。
「馬車に乗りたいんですけど」
「おぉー!この前、人探してた奴じゃねーか」
「よく覚えてましたね」
「そりゃー、あれだけ可笑しな事言えばなー」
「その節はお世話になりました」
「とんでもねーよ。んで、乗車すんのは、1、2、3、4。4人だな」
丁寧に人数を数えたはずの御者は何故か乗車する人数が4人だと言ってきた。
このおじさんが客相手にお金を騙し取ろうとするタイプとは思えない。
きっと朝の眠気で数え間違えたのだろう。
「眠たいのは分かるけど、ちゃんと人数数えてくださいよ」
「んー?なんだ?数え間違えたか。えーっと1、2、3、4。ちゃんと4人いるじゃねーか」
「えっ?」
俺は思わず、隣を見た。
するといつの間にか白司録が横にいる事に気付く。
「いつからからいたの」
「馬車に向かう途中で見つけた」
「で、どうすんの?4人で良いのか?」
「ん、大丈夫」
勝手に返事をする白司録。
どうやら付いて来るつもりらしい。
4人と言ってしまったのに、今から話し合って違うと言うのも御者のおっさんが可哀想だ。
仕方ないがここは白司録も連れて行くことに。
「シローって結構モテるんだ」
ミラの冷ややかな視線。
「シローって女の子に甘いよね」
ベリーストの呆れた表情。
「なんか可哀想」
白司録の慰め。
もうやめてくれ。
こんなの死体蹴りと変わらないぞ。
馬車に乗った瞬間、互いが互いの馴れ初めについての質問攻めが始まった。
途中、御者のおっさんに助けを求めるが笑って誤魔化された。
この先の旅が思いやられるばかりである。
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