030話 ダクマズVSクラン
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本当にタイミング良く助けられるとは。
あそこで助けが来なくても俺の反射神経ならギリギリ躱せると踏んでいたが、その場合は大幅なタイムロスに繋がっていた。
だから、ベストなタイミングでの援護だったと思う。
それに蓮也の方は心配ないだろう。
絶対に勝つと信じている。
四姉妹までの距離も残りわずかとなったタイミングで、古びた廃墟が目の前に現れた。
周りには草が生い茂り、廃墟には蔦が絡んでいる。
王城と同じとまでは言えないが、かなりの大きさ豪邸だ。
しかし、ここが何年も整備されていないのは見れば明らかだ。
そんな場所に四姉妹が誘拐されたとなると、犯人はこの廃墟を根城にしているのだろう。
となると誘拐犯は常習的に犯罪を犯している人間達だろう。
頭に過ぎるのはあいつらだ。
最初から分かり切っている相手。
錆びついた扉をゆっくりと開けると、ギギギと不快な音が鳴る。
中には1人男が大きな広間で不自然に1つの椅子を用意して待っていた。
「どうやって、地下牢から脱出した?・・・ダクマズ」
「久しぶりの再会なのに一言目がそれかよ。そんなの知ってどうする」
「関係ない。俺が知りたいから聞いてる」
「そうカッカッするなよ。知りたいなら教えてやるよ。ただ、俺に勝ったらな」
あくまでも力と力のぶつかり合いを望むダクマズ。
椅子から立ち上がり、破壊衝動に身を任せて椅子を蹴った。
途端、粉々になる木製の椅子。
それがダクマズの破壊力を物語っている。
月明かりが所々漏れる廃墟。
睨み合う2人。
戦うのは2回目になるが、やはり緊張感がある。
躊躇いや戸惑いを持ったものから死ぬ。
短剣と銃を腰のホルダーから抜き取る。
どちらかが動けば戦いの合図だ。
一瞬足りとも気が抜けない。
ドンッと扉が開く音。
一瞬、意識を奪われる。
それを見逃さないダクマズ。
たった一瞬の間に目と鼻までの距離へと近付いていた。
「チッ、邪魔が入りやがったか」
光で構成された鎖がいきなり地面から飛び出し、ダクマズを拘束する。
拘束を解こうと暴れているが何とか持ち堪えている。
どうやら、俺はまたしても第三者によって守られたみたいだ。
「始めましただね、ダクマズ」
「俺はお前を知ってんぞ、クラン・クサカーベ」
「そうかそれは光栄だ。しかし、残念ながら君は生死問わずの大悪党。僕の手で捕まえさせてもらうよ」
「クランッ!早くして!アイツが激しく暴れ過ぎてこれ以上、光魔法の拘束が持たない!」
アルメノの魔法スキルが限界に達していた。
ミシミシと今にも壊れそうな音を立てている。
「離れろ!来るぞッ!」
パキンッといった光の鎖。
解放された悪魔。
まずは面倒な補助役のアルメノを狙ってくる。
クランも狙いが分かっているので、簡単にはアルメノの下まで行かせない。
拳と剣、それでも力比べは互角。
クランには悪いがどちらが勝ってもおかしくはない。
「お前もおもしれーな!だけど、戦いはもっと楽しそうにやれよ!」
「冗談じゃないッ!来い!【聖剣エクスカリバー】!」
クランが持っていた剣が光り輝く。
辺りを全体を光で埋め尽くした後、剣は姿を変えた。
両刃の大剣、見れば見るほど美しい模様、そのどれもが神々しさ感じさせる。
「武器が変われば俺に勝てるってか?」
「そんなことは言わないさ。武器を変えなくても僕は勝てる」
「随分、面白い冗談を言う奴だな!!!」
「冗談かどうかは試してみれば良いさ!」
常人には到底入り込めない領域の殴り合い。
あの大剣を木の枝の様に軽々と振り回すクランもすごいが、己の持って生まれた身1つでここまで対抗出来るダクマズも人間ではない。
俺とアルメノはこの戦場を黙って見届けるしかなかった。
下手に動けば邪魔になるのは誰がどう見ても明らかだ。
「これは死ぬまで続きそうだぜ!【拳術】"龍々拳"!」
拳から放たれた龍を彷彿とさせる威圧感のある一撃。
これを真正面から迎え撃つクラン。
「【女神の導き】"聖霊の波動"!」
聖剣を覆う目を奪われる程綺麗な白光が放たれた。
一瞬、戸惑いの表情を見せるダクマズ。
しかし、すぐに立て直す。
クランの事は信じているが、ダクマズが勝ってしまえば俺達は絶望の淵に立つ事となる。
頼むからクランには勝ってほしい。
「この隙に行くんだ、士郎!ここは僕に任せて!」
「勝手な事をされたら困るな。お前が終わったら次はアイツで遊ぶんだ」
「なら、その時間は来ないね。僕は負けないから」
常人には入る隙のない攻防は加速する。
俺は言葉通り、この場を任せて奥へと急ぐ。
後少し、後少しで四姉妹を助けられる。
無事、王城へと送り届けたら全て丸く収まる。
後ろからは命掛けで戦う音が聞こえるが、振り返らなかった。
俺には俺の役割を。あいつはあいつの役割を。
それにアルメノもいるから大丈夫。
頭で何度もそう言い聞かせて、躊躇いを封じて走った。
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