015話 呆気ない結末
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「早くその鍵渡せ。お前等が扱える代物じゃねーんだ」
ダクマズは古代魔導具を渡す様に催促する。
何を考えずに渡そうとする三宅。
その一瞬、たった一瞬を狙って俺は走り出した。
止めに入る取り巻き達。
腰に付けていた剣を構えて、俺に向かって来る。
こんな奴等の相手をしている暇はないのに。
椅子やテーブルがあって、かなり狭く感じる空間での戦いは全く経験が無いので思う様に動けない。
後数秒稼がれたら、ダクマズの下へと古代魔導具が手渡される。
「行儀が悪いけど許してくれよ」
最短で鍵を取り返す為にはテーブルを上を渡るしかない。
日本にいた頃のマナーを体が覚えていて抵抗はあるが、それよりも古代魔導具の方が大事だ。
人間が激しく動くことを想定されていないテーブルは、俺が上を走る度に鈍い音を立てる。
それでもお構い無しに走る俺。
取り巻き達はそのスピードについて来れていない。
「おっと、これはやれねーな」
コンマ数秒の世界。
その世界で敗北した。
悔しさが俺の中で入り乱れる。
ダクマズに鍵が渡った以上は強引にでも奪い返す手段は途絶えた。
後は頭を使ってどうにか言いくるめる以外、方法はない。
ただ相手も馬鹿ではない。
中途半端な口車では乗って来ないだろう。
「こいつがどんな古代魔導具か、シローは知らないだろ。だから、この俺が直々に説明してやるよ」
勝利を確信したダクマズは、グラスに並々と注がれたリキュールを一気に飲み干して語り出した。
「ただの鍵に見えるコイツは"時の鍵"と呼ばれる時空、次元、並行世界、その全てを行き交う事の出来る古代魔導具の中でも屈指の危険性を誇る物だ」
行っている事が滅茶苦茶過ぎて信じられない。
中学生の考えた最強の設定みたいなレベルの詰め込み具合だ。
嘘だと思いたい反面、ダクマズの表情は勝利に酔いしれていた。
これがあの戦闘狂の手に渡る恐怖。
「何なら今ここで使ってみせようか?その方がお前を絶望させられるだろ」
「やめろ・・・。やめろッ!」
ゆっくりと時の鍵を持っている手を捻る。
現実から目を背けたい俺は目を逸らした。
「おい、コイツはどういう意味か説明して貰おうか」
苛立ちを含んだ低い声が聞こえる。
閉じていた目を開けるとそこは何も起きていなかった。
俺は事態を認識出来ていない。
ただ初めて見せたダクマズの焦りからこれが演技でないことが分かる。
「お前等、俺を騙して恥でも掻かせようってのか?・・・殺すぞ」
「いや、俺達は何も」
「チッ、新入りだから許してやりたいところだが、この失態はなー」
怒りのボルテージが上がり始めているのを肌で感じる。
この場にいる誰もが口を開くのを躊躇った。
少しの間時計の針だけが動く。
そして、グラスに残った氷が溶けて心地良い音を奏でた。
同時に勢い良く開く扉。
「今日は運がねーみたいだ。また、招いてもいない客が来やがった」
ダクマズは怒りを通り越して、呆れてしまった様子だ。
「タタルト王国騎士団だ。指名手配犯・ダクマズ、並びに極死楽構成員をこの場で拘束させてもらう」
戦況は大きく動いた。
騎士団員がゾロゾロと中へ入ってくる。
しかし、それを見ても焦らないダクマズ。
懐からタバコを取り出して、吸い始めた。
「まんまと嵌められた訳だ。最初からお前等もそのつもりだったのか雑魚共?」
「いや、俺達は本当に何も知らなかった!」
「まぁ良い、許してやる。だが、これで2回目だ。次は本当に殺すからな」
三宅は自分達が善悪で言うならば、悪だという自覚はあったはずだ。
だけど、目の前にいる本物の悪を前に言葉を失っている。
普段彼等が使う脅しの殺すという言葉で無く、淡々と実行されるだけの殺すという言葉だと悟ったからだ。
「大人しく拘束される準備は出来たか」
怯むことなく問い掛ける騎士団の1人。
ダクマズはその問いに笑って返した。
「ハハハッ!そいつは面白い冗談か何かか?国の奴隷が何匹出て来ようとも俺は止まらねーぞ」
この言葉は心の底から思っている事だろう。
何人来ようとも負けるはずがない。
そう思える程に圧倒的な力があった。
「あらあら。随分と賑やかですね、ここは」
最近良く聴く声が耳に入る。
この場には似つかわしくない甘過ぎる声。
「ラズリ様、どうして貴方がここに」
「どうしても何も国の問題を私が解決しようとして可笑しいかしら?」
「しかし、ここは危険です」
一言に危険と言っても、一刻を争うレベルだ。
第一皇女は国の心臓とも言える存在。
その弱点がのうのうと犯罪者の前に現れて何も起きない訳がない。
「まさか第一皇女が自ら姿見せるとはな」
ダクマズの目の色が変わった。
偽物だった古代魔導具よりも本物である国の弱点を狙う方が遥かに意味がある。
ラズリは頭の冴える人間だ。
それが分からないはずもない。
「おい、何するつもりだ」
俺は思わず声を出して制止する。
ただ、それはダクマズに向けての言葉ではない。
荒れたはずの酒場で、花畑を歩く様に優雅に奥へと進み出したラズリへ向けてだ。
奥には当然ダクマズが鎮座している。
わざわざ自分から進んで行くなど言語両断。
必死に止める騎士団や俺の言葉も耳には入らないらしい。
「なんだお前、イカれてるのか?」
「うふふ、最高の褒め言葉ですね」
あまりにも戦いとは無縁の華奢な腕で、ダクマズの頬を撫でる。
ダクマズは黙ってそれを受け入れる。
世界で1番心臓に悪い時間を俺達は黙って見ていることしか出来ない。
ラズリが何かをダクマズの耳元で囁く。
この距離では何も聞こえない。
話の内容が気になるけれど、安易に近寄るのはやめておく。
ラズリは無事に会話を終え、そのままこちらへと騎士団の方へと戻った。
「ご無事ですか?ラズリ様」
「問題無いわ、それより後は任せましたよ」
その言葉の後に動き出すダクマズ。
騎士団は武器を取り、真っ先にラズリを守りに入った。
「何してんだ、お前等。俺の身柄を拘束すんじゃねーのか」
自ら手を差し伸べ、拘束を促すダクマズ。
その光景に騎士団を含め、全員が驚いていた。
何か裏があるのではないかと疑ってしまうのは当然だろう。
恐る恐る、拘束用の魔導具を使い身柄を押さえた。
ラズリが来てからたった数分の出来事である。
他のメンバーも取り押さえようとしたが、この異様な出来事に呆然としている一瞬の隙を突いて、蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。
「色々と考える事は多いが、ひとまずは解決ということで良いのか」
どこかへ連れて行かれるダクマズを見届けながら胸を撫で下ろす。
「あぁ、そうでした。古代魔導具の回収を」
「それ偽物なんだろ?わざわざ回収する必要あるのか?」
「ふふ、これは偽物では無く本物ですよ。使い方が正しく無いと反応しませんけど」
どうやらあれは本物の古代魔導具だったらしい。
ダクマズが正しい使い方というのまでは知らなくて助かった。
「ついでに1つ聞いても良いか?どうやってダクマズを自首させたんだ?いくらラズリが顔が良くても、簡単に自首する様な男では無いと思うんだけど」
「ふふふ、それは貴方も良く知っているんじゃ無いですか?」
ヒントと言わんばかりにそっと俺の胸を撫でる。
まさか俺に使った魅了系のスキルを使ったのか。
あの緊張感のある場面で?
どれだけ肝が座ればそんな事が出来るのか。
感心と恐怖の感情で頭がおかしくなりそうだ。
ラズリ・タタルト、もしかすると彼女はダクマズよりも敵に回したくない相手かも知れない。
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