012話 本の導きによって
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対人戦が終わると後は自由時間。
俺はいつもと違って蔵書室を目指す。
予め誰でも使って良いというのは聞いているので、怒られる事もなく利用出来る。
何故わざわざ蔵書室に行くのか。
それには理由が2つある。
1つは学力ステータスがどこまでの影響力を与えるのかを知る為。
もう1つは魔導書の様な遠距離スキルを覚えられる本がないか調べる為だ。
今日の対人戦での反省点は、遠距離の攻撃手段がない事だった。
相手の【剣術】スキルの技"スライス"は辛うじて避けられたが、そもそも真正面から受けるのはデメリットが大きい。
どんな効果があるかも分からないのに接近するのは危険だからな。
そもそも俺がスキルを覚えられるのかどうかも分からないが、僅かな望みに賭けてみるのも悪くないだろう。
「ここが蔵書室か」
掃除はされているみたいで、本棚には埃など1つも存在せず、本は寸分の狂いなく並べられている。
紙とインクの独特な匂いを鼻で楽しみながら、適当に本棚を見て回った。
その中でも気になる本を3冊。
『近代魔法から学ぶ失われた古代魔法』
『同レベルのスキルにおいて生まれる威力の差異』
『初代勇者と消えない魔王』
2冊は論文で1冊は伝記。
この3冊が直感的に1番俺の助けになってくれそうだと判断した。
特にスキルの威力に関する本は、俺が異世界のスキルが使えなかったとしても戦闘には役立つだろう。
物は試しと1冊目のページをワクワクしながら捲る。
びっしりと詰まっている文字。
普通であるなら一瞬で読む取るのも理解するのも不可能だが、たった数秒で全て頭の中に入った。
これは言い表すのが難しい感覚だ。
「この調子だったら、想定の何倍も早く読み終わりそうだ」
1人黙々と本を読み続ける。
本の世界に入り過ぎて自分で捲ったページの音すら、自分の耳に届かない。
ただ、ひたすらに本の内容だけが入ってくる。
こんなに没頭して本を読んだのはいつぶりだろうか。
多分、初めてライトノベルを買ったあの時ぶりかもな。
読み始めてからどれくらいの時間が経ったか分からない。
分かるのは3冊読み終わった段階で明るかったはずの空はすっかりの黒く染まっていた事。
「それにしても、結構学力のステータスも効いてるかもな。1回読んだだけなのにかなり頭に入ってくる」
「・・・そっちの2冊、難しいのに」
「確かに書いてある事は難しいけど、原理を理解すればピースをはめる様に読み解ける」
「・・・そっちは勇者について」
「あぁ、こっちは・・・って!」
よくよく考えると俺は誰と会話しているのだろうか。
それに気付いてしまった。
横を振り返るの沢山の本を机の上に積み重ねている少女がいる。
少しだけ見覚えがあるという事は恐らくクラスメイトなのだろう。
真っ白な髪と中学生と間違えそうな身長、ダウナー系の天才みたいな雰囲気がする。
「いつからそこにいたんだよ」
「貴方が読み始めてから」
「声くらい掛けてくれたら良かったのに、って思ったけど、そんな間柄じゃないか」
「うん。・・・それに集中してた」
それもそうか。
きっと声を掛けられても耳には入らなかっただろう。
「それ、全部読むのか?」
「読んだ」
「えっ?俺が3冊読む間に全部読んだのか?」
推定でも20冊くらいは置いてある。
それを全部読み切るとなると何時間掛かるか。
少なくともあの数時間で読み切れる量ではない。
「私、固有スキルがある。それが理由」
どうやら固有スキルというのが関係しているらしい。
俺には縁のない世界の話だが、他の人がどんなスキルを持っているのか興味はある。
「【全能の書】、速読と読んだ本を完璧に記憶して自分の糧にするスキル」
「結構便利なスキルだな。喉から手が出る程欲しいスキルだろ」
「そうかも。でも、一度読んだ本が楽しめなくなった」
本が好きな彼女だからこそ、2度目を楽しめないというのは辛いのだろう。
強さを求めていない彼女にとって、喜ばしいスキルとは言えないかもな。
「古井士郎、・・・確か貴方の名前」
「よく知ってたな、俺学校では影薄いタイプだったのに」
「私、1度覚えた物は忘れないから」
思い出した。
学年は勿論のこと、模試でも1位を取る天才中の天才。
その頭脳から1度メディアにも取り上げられたとかいう噂も聞いたことがある。
確か名前は、白司録神奈。
["白司録神奈"のプロフィールを交友関係一覧に追加しました]
フルネームを知っているだけなのに何故か交友関係一覧が反応する。
自己紹介は必須かと思っていたがそうではないのか?
いよいよ、基準が分からなくなって来た。
それよりも彼女は何か言いたそうに俺の事を見つめている。
タタルト家の長女に見つめられた時とは、違う意味で硬直しそうだ。
「何か、俺の顔に付いてるかな?白司録さん」
「そうじゃないの。・・・いや、なんでもない」
今度は僅かに悲しそうな顔。
思っているより表情の変化がある。
それに全く無口という訳でもないみたいだ。
話しかければ会話のキャッチボールくらいはしてくれる。
だからと言って、無理に話を広げる事はしなかった。
ここは本を読む場所。
そして、彼女が最も大事な空間。
俺は空気になって、白司録の邪魔をしない事を選んだ。
また本棚から適当な本を選んで読み始める。
俺と白司録以外誰もいない空間。
外から窓を撫でる風の音とページを捲る音が心地良く耳に残る。
「そろそろ夕食か。白司録も本を片付けなくて大丈夫か?」
「大丈夫、私はみんなが食べた後に食べるから」
「何で?」
「・・・」
口を固く結んだ白司録。
理由を聞くのはデリカシーが無かったと少し反省する。
どんな理由があるにせよ、本人が1人を望むならわざわざ無理強いする必要もない。
席を立って本を直しに行こうとする。
すると服の袖が小さな力で引っ張られた。
「また、ここへ来る?」
白司録はそれだけ聞いてきた。
蔵書室にはまだまだ読み切れていない本がある。
今の所、学力のステータスを活かせそうなのは本を読む事くらいなので、きっとまたお世話になるだろう。
「そうだな。近いうちにはまた来ると思う」
「・・・分かった」
人が苦手であまり来てほしくないのか。
それとも逆で偶には人と本の話がしたいのか。
相手の心を読み取るスキルのない俺はどちらかなんて分からない。
ただ、蔵書室から出る時に、彼女が僅かに笑ったのが見間違えでなければ、きっと後者なのだと思う。
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