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キスの消毒

1話ごとで場面変わっていきます。時間軸も前後します。

アイドルと付き合うってこんな感じかな?というのを書いてみました。

お気軽に読んでいただけると嬉しいです!



まるで食べるかのようにキスされる。

息が苦しくなって、必死に顔を背ける。

それに彼は不機嫌になって口を離す。


「黙って俺の消毒に付き合え」

「消毒ってな…」

なに?と聞こうとしたが、それも彼の口に吸い込まれた。


立っていられなくなって、膝から崩れ落ちる。

それでやっと彼はキスをするのをやめた。


「もう、なに…?」

「はー、疲れた。瑠花(ルカ)、ごはん」

私の問いかけは無視し、ベッドに腰を下ろす。


「いや、今夜中の2時よ。ごはんなんてあるわけないでしょ、急に来て」

「お前、多忙を極めし彼氏が必死に時間作って会いに来てるんだぞ」

はぁーとでかいため息をつく。


ため息つきたいのはこっちである。

明日も仕事なのに、夜中に突然の来訪。


だが文句は言えない。

彼が忙しいなか、時間を作って会いに来てくれているのは本当だから。


せめてカップラーメンは出してやろう。

そう思い、キッチンに向かう。


「おい、まさか顔面国宝のこの俺に夜中にそんな不健康なもん食わす気か」

「だぁ!だったらここに来る前に、自分でなんか買って来なさいよ」

人の好意をなんだと思っているんだ。

キッチンに付いてきた彼を睨みつける。


「ダメだ。コンビニ行くだけでも店員に写真撮られたり、SNS載せられたり面倒なんだよ」

本当に面倒くさそうに言う彼に、ぐっと言葉に詰まる。


「はぁ。もうじゃあ明日の昼の弁当あげるわよ」

「いぇーい!瑠花の飯好き」

さっきの顔と打って変わって、大喜びで抱きついてくる。


わがまま放題でムカつくが、私は結局この男には逆らえないのだ。


国民的アイドルグループHeavenの圧倒的センター、天野羅希(アマノラキ)には。


私の明日のお昼になるはずだった弁当をいそいそと温める羅希を眺める。

日本人離れした長身に、これまた日本人でそんな髪色似合うやついるのか?と聞きたくなるようなキラキラした星みたいなハイトーンカラーの髪。


「どんだけブリーチしてんの。ハゲないの?」

プリンの時などほぼない、彼の綺麗に染められた、いや脱色された髪の毛を見て尋ねる。


「俺様がハゲるわけねぇだろ。つーかハゲてもかっこいいに決まってるし」

出た、羅希のナルシスト。でもたしかに髪の毛があった方が好きだが、例えば坊主頭でも頭の形も綺麗で目鼻立ちがはっきりしているので、意外と似合うのだろう。


羅希の言葉に言い返せず、ため息をつく。

これだからイケメンは。

しかし羅希曰く「俺ほどかっこいい男が謙遜する方が失礼だろ。かっこいいって自覚ある方がいいんだよ」だそうだ。


彼は現在24歳、19歳でデビューし、世間の注目を集め出した。これからもっと上に登り詰めていくのだろう。

同じ年だが、私とは全然違う。

さっきの『消毒』だって、おそらくまた新しい恋愛ドラマの撮影が始まったのだ。


これからそういうことは増えるし、さらに忙しくなって会える時間は減っていくだろう。

暗い考えが頭をよぎるが、口をついて出たのは別の言葉だった。


「ちゃんと寝れてるの?」

お弁当を食べる羅希につい、ずっと心配していたことがぽろりとこぼれた。


羅希はお弁当から顔を上げ、ちらりと私を見ると

「余裕。お前と2時間過ごして、帰って2時間寝る」

「全然寝てないじゃん…」


人の目を避けて会おうとすると、記者も人々も寝ているような真夜中に来て、真夜中に帰るしかないのだ。


「お前も寝かせないからな。…アイドルの俺と付き合うの、疲れた?」

私の返事など分かっているような、あざとい首の傾げ方だ。


私の睡眠時間も削られている。でも羅希はその比ではない。

彼の睡眠時間を削っている要因のひとつは明らかに自分だが、会いに来ないで、とは口が裂けても言えない自分が憎らしい。


羅希の問いかけには答えず、お弁当を食べている羅希に背中合わせでもたれかかった。



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