氷点下
橋の上に置かれている
花の名前も知らないもので
物を知らない、ということは
時に気持ちを無下にする
手袋を着けてもどうせ
悴むだけの指先のかたさ
痛いような、スマホを見つめる
言葉を知らない
花の名前を知れもしない
橋の上に誰かが置いた
花の名前を知らないもので
横切る私は一瞥し、
そのまま通り過ぎていたような、
どうして忘れたように、
いられたのだろう
ぎこちないような指先の
かな入力が熱を持つ
夜道のこと、供えられた花の名を
結局知ることは出来なかった