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咲く花

作者: 南 翔

膝を抱えて座っている花を見かけた


アスファルトを突き破ってまで、日に向かってのばした花びらは、くすんでしまってまるで誰かにぞうきんを投げつけられたようになっている


「ここにいるのが見えますか」


問われても答える口もない


ただ花びらを助けるナイトである葉が、風に揺られて微かにうなずくにとどまる


「ここはどこですか」


その花を踏みつける





次の朝


「あなたは誰ですか」


ぽっきりと折れていたはずの茎が元通りになっていた


しかし、葉の数が一枚減っているのは気のせいだろうか


その花にはおしべはなく、花びらに守られるように小さくめしべが一本あるだけだった


私は今度はそのめしべをむしり取る




次の朝


「私は何でしたか」


むしり取っためしべは昨日の通りだったが、なぜかめしべの痕の回りに6本のおしべが伸びていた


私は耐えられなくなって、胸から取り出したマッチで、誕生日ケーキのろうそくのように1本1本火をともす


そよ風は火にまるで興味を示さず、ついにアスファルトの裂け目だけが残った




次の朝


「ここにあった花はどこへ行きましたか」


花の火葬場には相変わらず裂け目だけが残る


そこには小さく水たまりができていて、私は静かに種を植え、次こそきれいに咲けばいいなとつぶやく




次の朝


例えば、花瓶に花を挿して、それが枯れないようにと祈ったとする


そこに残るのは、枯れた花と、枯れぬようにと手を合わせている自分だけ


次に生えた双葉も、私の夢を叶えてくれるだろう


相変わらず、私は皮膚という皮膚から水を取り込む


エ ルカラ ニ エアニシカ





次の朝


「おはよう」


「おはよう」


「おはよう」


返事はいつも私から聞こえた


花は答えてはくれない


ただ、水に濡れ、光を受けるその花は、いつまでもそこで咲いている

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