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20.佐野さんは新しい同行者が出来る。



「ま、まあ、やっぱり男の2人旅より女の子が1人いた方が華やかになるよな。」


「川口くんはよく気をつけていないと男1人と女2人の旅路に変わっちゃうかもね。」


「やめて、冗談でも俺の大事な所がもぎ取られる未来なんて想像しないで!」


「それじゃあ、リン。戦闘は無しで向こうに気付かれない内にこっから逃げるよ。いいね?」


《ふむ、つまらんのう。しかし、ここは主様の命令じゃから素直に従う事にしよう。ほれ、さっさと妾の背中に乗るがよい。》


 3人の動向を見守っていたリンは、少し納得いかないような雰囲気を出しながらも佐野さんの言葉に頷いて3人を背中に乗せる。

 リンが飛び立つ間際、一子は未だ意識の無いラムリーツを方を見たが何かを振り切るように頭を振ると前に向き直る。

 そんな一子の様子を見て、佐野さんが声を掛ける。


「大丈夫?」


「ええ、どうしてラムリーツ様があんなにも必死になって私を守ろうとしてくれたのか、それがちょっとわからなくて。私達の関係はお世話にも良好とは言えませんでしたから。」


「案外、お姫様は高尾さんのこと親しく思っていたのかもねぇ。」


「そう、なん、ですかね?」


「まあ、そんな難しく考えることないんじゃない?縁があったらまた出会えるだろうからそん時にでも聞けばいいよ。」


《ほれ、無駄話なんぞしておると落っこちるぞ。しっかり捕まっておるんじゃぞ。》


 リンが3人を背中に乗せて飛び立つ。

 どうやら王都の正規軍には気付かれていないようだった。


「こんだけの巨体が急に飛び出しても案外気付かれないもんなんだな。」


《当たり前じゃ、今は魔法で姿を隠しておるからのう。人間如きに気付かれる心配などないわ。》


 そのあんまりなリンの返答に川口くんは思わずツッコミを入れる。


「いや、それ行きの時から使っておけよ!さっきまでのドタバタは何だったんだよ!」


《ふん、甘味に目が眩んで忘れておったのじゃ。妾もまだ子供故にそう言った失敗もあるじゃろう。一々細かいこと気にするでない、全く小さい男よな。》


 川口くんのツッコミに対して、リンは太々しく開き直って見せる。


「開き直っちゃったよ、この子!?」


「まあまあ、川口くん。失敗したと思ってくれただけ良くない?リン、これからはあんまり争いにならないようにお願いな。」


「リンちゃんなら次からは上手くやれますよ。頑張ってね。」


《うむ、任せておれ。あ、それと川口は搭乗料を行きの倍払って貰うからな。嫌なら今すぐここで飛び降りよ。歩いて戻ってくるが良い。》


「えっ?何で俺だけ?いや、こんな高さから飛び降りた時点で死ぬし、こんな見知らぬ土地での徒歩移動でも死ぬわ。というか、どんだけ俺から搾取するつもりなんだよ!?まあ、勿論払うけどね。」


「あっ、払っちゃうんですね。」


「寧ろ要求されなくてもこちらから払うつもりだったくらいだよ。」


 何故から誇らしげにそう語る川口くんに一子は苦笑いを浮かべる。


「そ、そうなんですか。」


「川口くん、高尾さんが引いてるからその辺でやめとこか。」


「いえ、川口さんがそれでいいなら私からは別に何も。」


「うそうそ、軽い冗談だから本気に取らないで!」


《何じゃと?妾は本気じゃぞ。》


「いや、ややこしくなるからリンはちょっと黙ってて!」


「フフフ、ハハハ。」


 そんな笑いを交えた雑談をしならがら空の旅を終えて、最初に2人が転移して来た地点に戻って来たのであった。




「何とか無事に戻って来れたね。」


「だな。おっ、岩美がいるからここで間違いないな。元気だったか岩美?おっ、ちょっと見ない間に大きくなったんじゃないか?」


「いや、この短時間で岩の大きさに目でわかる程の変化があるとかどんな天変地異だよ。つーか、よく岩なんかの区別がつくね。」


「佐野さん、何言ってんの?この質感の良さとか佇まいが周りの岩と全然違うじゃんか?なあ、岩美もそう思うよな?」


「川口くんこそ、岩相手に何言ってんだよ。岩にしか同意を求められないなら、もう人間辞めちまえよ。」


 岩美を撫でながら再会を喜んでいる川口くんは放って置いて、佐野さん達は3人で今後のことについて話し合いを始める。


「さて、とりあえずは今晩の寝床をどうするかだよな。」


「リンちゃんがいるなら獣人族の国に向かうのはどうですか?守り神っていうくらいなんですから何か手助けを、とまでいかないかもしれませんが宿の手配くらいならなんとかして貰えるんじゃないですかね。」


「なるほどね。その辺はどうなの、リン?」


 2人は期待を込めた視線をリンに向ける。

 しかし、それに対してリンの表情はあまり芳しいものではなかった。


「うーむ、妾が自分で言うのもなんなんじゃが寧ろ守り神たる麒麟を従魔にしているなど奴等の反感を不要に買う結果になるんじゃないかのう。」


 リンはそう言って自分の首に刻まれた従魔の印を指差す。

 それを見て佐野さんと一子はなるほど、と顔を見合わせた。


「ああ、そう言うパターンもあるのね。」


「それは困りましたね。」


 うーん、と3人が頭を悩ましていると岩美との触れ合いに満足した川口くんが話し合いの場に入ってくる。


「どしたの?皆して微妙な顔して?」


「いや、今日の寝床をどうしようかと思ってね。人間の国だけじゃなくて獣人族の国も難しそうなんだわ。」


「そうなの?じゃあ、もういっそここに店舗建てちゃえばいんじゃね?」


 川口くんは、3人の悩みなど吹っ飛ばしてあっけらかんとそう言い放つ。


「店舗をここに?でも、こんな人気の無い所にお店を建てても繁盛しないよ。」


「別に繁盛しなくてもいいじゃんか。ほらパチンコの女神様が言ってたろ?建物の設置自体は費用掛からないってさ。一番小さい店舗で最低限の設備だけ入れればランニングコストもそんなに掛からないだろうから寝泊まりする拠点として建てるのもありかなって。社員寮みたいな感じでさ。それにそのランニングコストだって2台だけスロットかパチンコの台入れて俺と佐野さんの2人で一日中打てば何とかなるんじゃね?」


「…なるほどね、それもアリか。」


 川口くんのその提案は佐野さんも悪くないと感じたらしく、店舗管理のアプリで計算を始める。


「まず、台は何入れるよ?」


「同じのは飽きたら悲惨だからとりあえずパチンコとスロットを1台ずつ入れておけばいいんじゃね?演出短い機種でその辺でいいでしょ。」


「パチとスロを1台ずつね、とりあえず合わせて60万パチカスくらい見ておけばいいか。冷暖房は必須だろ?業務用の天井埋め込みのやつでこの広さだと、…20万のでいいか。あっ、ホールだけじゃなくてバッグヤードとかもいるじゃんか。これならレベル1の店舗でも男女で寝床を分けられるな。事務所的な小部屋は高尾さん用にして、クーラーは8万くらいのでいいかな?あと簡易キッチンとトイレは必要か。川口くん、高尾さん、ウォッシュレットは必要?」


 店舗の内装を決めている内に段々楽しくなってきた佐野さんは、次々と項目を選んでいく。


「俺は欲しいかな。」


「私はこの世界に来て一年経つので簡素なトイレに慣れてしまいましたけど、出来れば欲しいですね。」


「オケ、ウォッシュレットは3万か。意外と安いんだな。」


「あの、シャワールームとかも設置出来ませんか?」


「おお、いちごちゃんそれいいね。」


「俺と川口くんの男2人だとその発想は出て来なかったな。」


 そして、その波は次第に川口くんと一子にも広がっていくのだった。


「えーと、シャワールームは、…7万か。」


「意外と安いんですね。」


「ガッツリ風呂って感じじゃなくて、簡易ブースみたいなやつだから。」


「それでも、無いよりは全然いいです。」


「シャンプーとかは景品の中にあるし、布団も景品にあったな。歯ブラシ関係もあるし、洗剤もある。食料品と酒類もあるし、あっ、米があるから炊飯器もいるじゃんか。そうなるとお湯沸かす為にケトルもいるし簡単な調理器具も欲しいかも。この辺のキッチン用品は店舗の備品扱いで発注出来るのか、滅茶苦茶助かるな。」


 最初の最低限の設備という話はどこにいったのか、次々と欲しい物を言い始める3人。

 リンは、話の内容がよくわからないからか飽きて昼寝を始めていた。


「衣類関係はどうなってますか?」


「Tシャツとジャージとかスエットならあるかな。あとはコスプレ系とか。パチ屋オリジナルのキャラ物の子供服とかもなんでか知らないけどあるな。こういうのって実際に交換してる人いるのかな?」


「あぁそういえば、そういうの景品で見た事あるかも。…あっ、佐野さん。店舗の制服が店舗管理の方から注文出来るみたいだよ。デザインとかもわりと自由に出来るみたいだから外出着はこれで何とかなるんじゃない?」


「あっそれ、私に決めさせて貰っていいですか?一応、職業がら衣装とかそっち方面は詳しいので。」


「いいね。じゃあ、それは高尾さんに任せるとして。後は、ああ、これどうなんだろ?川口くん、ちょっとこれ見て。」


「どした、佐野さん?…ああ、なるほどね。」


 不意に何かを発見した佐野さんは川口くんに意見を求めるようにスマホの画面を見せる。

 それを見た川口くんは、納得したように頷いた後少し悩み込む様子を見せる。


「でも、これは本人に聞いた方が良くない?選択肢があることは教えてあげないと。」


「まあ、そうなるよな。高尾さん、ちょっとこれ見てくれる。」


「はい、何ですか?…えっ!?急に何を見せるんですか!?」


 佐野さんに呼ばれた近付いてきて一子は、スマホの画面を覗き込むとその表示されている物を見て2人から距離を取る。

 そこには、際どい女性用下着の画面が映し出されていた。


「いや、男物の下着は普通のがあるんだけどね。女物は、…何て言えばいいのかな?所謂、景品的な側面の強い過激なやつしかなくてさ。ほら一応必要なら選択肢として教えておこうかと思ってね。現地の物で事足りてたなら余計なお世話だったかもしれないけどさ。」


「ああ、それは、その、お気遣いありがとうございます。その件はまた後ほどで。」


 一子は、顔は逸らしながらも目線だけはスマホの画面から離さない。

 そんな表情を見てきっと大っぴらには出来ないけど、ホントはちゃんと確認にしたいんだろうな。

 そんなことを察する佐野さんであった。


「うん、そうだね。別に無理にこの中から揃えようとしなくても気に入らなければさっき言ったみたいにこの世界で手に入れれば済む話だしね。でも、あれだな。またこういうパターンのやり取りが出て来ることもあるだろうし、そうなると高尾さんにもこのアプリが使えると便利なんだけどな。」


「佐野さん、それは流石に難しいんじゃね?」


『出来ますよ。』


「えっ?」


 一子が突然背後から聞こえてきた聞き覚えない女性の声に驚いて勢いよく振り返る。

 そこには、これぞ女神というようなゴージャスな美女が優しい微笑みを浮かべて佇んでいた。


「誰!?」


「この人がパチンコの女神様。俺達をこの世界に連れて来て、この能力をくれたんだよ。」


「女神様、ホントにいちごちゃんにもこのアプリを使えるように出来るんですか?」


『はい、可能です。でも、それとは別に実は今貴女の存在が神々の世界では問題になっているのです。』


「えっ!?私が神様の世界でですか!?」


 パチンコの女神に言葉にこれはまた大きな話になって来たなと顔を見合わせる佐野さんと川口くんであった。


お読み頂いてありがとうございました。

これで20話まで到達ですね、やっとパチンコ屋のパの字が見えてきました。一体いつになったらパチンコが出て来るのか作者にもわかっていません。


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