コント「死亡フラグ」
場所……戦場
役……兵士A=ボケ 兵士B=ツッコミ
A「ゲホッ、ゴホッ!」
B「おい! しっかりしろよ!」
A「はぁ、はぁ……ったく、俺も焼きが回ったもんだぜ。まさか、流れ弾なんかに当たるなんてよ」
B「もう喋んじゃねぇよ!」
A「なぁ」
B「クソッ、何だよ?」
A「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」
B「よりによってそのセリフ言うか!?」
A「幼馴染みでな、コイツがまた美人さんなんだよ」
B「ちょっ、一旦黙れお前!」
A「ほら、これが写真だ」
B「ペンダントまで持ってんじゃねえよ!」
A「コレは俺の宝物だ、お前が持っててくれ」
B「お前……」
A「ああ、もう一つ言うことがあった」
B「……何だよ?」
A「もうすぐな、俺の子どもが生まれるんだよ」
B「狙い澄ましたみたいに死亡フラグ乱立させてんじゃねぇよ!」
A「何言ってんだ、俺が死ぬ訳ないだろ?」
B「強がってんじゃねぇ……」
A「もし、もしもだ。俺が死んだら嫁さんに伝えてくれるか?」
B「何を?」
A「『愛してる』って」
B「やめろ!?」
A「何だよ。旦那が嫁さんに『愛してる』って言うのは普通だろ?」
B「普通だけど! タイミングが!「うっ……」」
B「もういい、それ以上喋るな。傷が開いちまうだろ!」
A「大丈夫だって、こんなもんかすり傷だ」
B「分かりやすい嘘ついてんじゃねえよ! 出血だって……」
A「(何気ない感じで)ああ、それケチャップだから」
B「……は?」
A「いや、さっきの昼飯、ホットドッグ食べようと思ったら失敗しちゃってさ」
B「お前、なに戦場まで来てホットドッグ食ってんの!?」
A「やっぱファミチキの方が美味かったな」
B「こちとらクソ不味い携行食なのに文句言ってんじゃねえよ! っつうか、流れ弾どうした!」
A「そんなん、防弾チョッキ着てるに決まってるじゃん?」
B「紛らわしいリアクションしてんじゃねえよ!」
A「だって、防弾チョッキ越しでも銃弾メッチャ痛いんだもん」
B「だからって――」
A「おいおい、ここは戦場だぜ? クールになれなかったヤツから死んでいく」
B「チッ、後で覚えてろよ」
A「まあ、俺が無傷だったところで状況は変わらねぇ」
B「……まるで図ったような奇襲だった。それにあの時、ベースの近くから狼煙が上がっていた」
A「狼煙……つまり、敵は味方にいる、ってか?」
B「そうだ。じゃなきゃ、こんなタイミングよく奇襲を仕掛けられるはずがねぇ」
A「それにしても妙だな」
B「何がだ?」
A「あの時、俺以外に火起こしてるヤツ見かけなかったんだけど?」
B「狼煙の原因お前かい!」
A「だって、冷めたままだとホットドッグ美味しくないもん」
B「時と場合を考えろ!」
A「まあ、起きちまったことはしょうがねぇ」
B「……お前、生きて帰れたとしても絶対処刑されるぞ?」
A「その時はその時さ。――で、敵の数は?」
B「……1時の方向、物陰に3人。それと、10時の方向に2人だ……いや待て、かなり遠くだが、正面にあるビルの三階に1人、スナイパーだ」
A「何だ? 思ったより少ねえな?」
B「そりゃ、戦場のど真ん中で煙上げてるヤツらなんか、小数で対処できると思うだろうよ?」
A「全く、俺も安く見られたもんだぜ」
B「……おい。さっきからちょくちょく死亡フラグ立てるの止めてくれねえか?」
A「ハッ、何だ? コレが原因で負けるってか?」
B「だから止めろって」
A「おいおい、冗談はよせよ? こちとら最新鋭の銃器使ってんだぜ? 負ける訳けねぇ」
B「いい加減、もうやめろ」
A「ここにいるヤツら、俺1人でも十分さ」
B「おい、よせ! マジでやめろ!」
A「それじゃ、ちょっくら行ってくるか」
B「やめろー!!」
Aが塹壕から飛び出していき、直後、複数の銃声が鳴り響く。
しかしその音も長くは続かず、爆発の音を皮切りにして再び静寂が訪れた。
Bが膝から崩れ落ちる。
B「……バカ野郎」
A「勝ったよ~」
B「いや、死なないんかい!」