ま、魔王!?
「それでお二人はなぜこの森に?」
お城へと向かって獣道を歩いていると執事のような男性は訪ねてきた。
うわぁ、状況的に答えに困るなあ。
「この力のせいで追われていまして、迷った先があそこの洞窟だったんです。 そこで何かが落ちてきて……」
これでうまく誤魔化せたのかなぁ。 ナミの方に目を向けると釣り目で私を見ていた。
あ、釣り目はもともとなんだっけ。
(しょうがないじゃない! とっさに思いつかなくて、ね?)
(別に何も言ってないニャー)
ナミは気にしていない様子で答える。
そういえば洞窟から出て気づいたのだけど私とナミは目さえ合わせていれば会話ができるらしい。
この能力があればうまくナミと作戦を立てながらこの先も進めそうね。
ただ普段もそうなんだけどナミは物事の判断をすべて私に預けてくる。 ちょっと面倒くさいなぁ。
「なるほど、逃げた先が偶然この森だったのですね。 実は主人の張っている結界に急に反応が現れたものですから慌てて来たのですよ」
結界ねえ、確かに急に二人の反応がでたら怪しむよね。
でも信用はしてくれたみたいだし、この世界では私たちは割と希少な存在みたいだから危害は加えてこないだろう。 襲われたら最悪窒息させればいいんだしね。
「見えてきましたね。 あれが主人の城でございます」
「え……」
「ニャ……」
そこには暗雲が漂っていていかにも魔王城といった雰囲気だった。 城壁だけでも高さは二十メートル近くあり、門を抜けると私たちでは到底開けられないであろう鋼鉄の扉の前に首がない騎士の鎧を着た何かが二人立ってる。
その扉に向かって私たちは一直線に歩いていく。
「デュラハン様、ご苦労様です。 客人を連れてきましたので門を開けていただけますか?」
『そいつらは誰だ』
デュラハン? の片方が重々しい声で聞いてくる。
首がないので二人のどっちがしゃべっているか分からないけどこの声はお腹に響くなあ……
ていうか、もしかしてここって雰囲気的に魔王城なんじゃないの!?
(ねえ、ナミ! ここってまさか……)
(見た感じこの世界の魔王城って感じニャね)
(だよね、今からどうする?)
(だーかーら、駄主人様にお任せするってずっと言ってるニャ)
(はいはい…… 様子見て魔王がいたらコロッと逝かせちゃおっか)
(あいニャー)
でもここの主とやらが悪いとは限らないよね。
外だって単に天気が悪いだけなのかもしれないし、きっとデュラハンだっていい人なのかもしれない。
「この方たちは魔王様の結界の中に突然現れた方々です。 水を操る猫人族と猫巫女に似た猫人族のようなので珍しさゆえにお連れしました」
『ふん、そうか。 なら通るがいい。 それにしても客が猫人族なんてな、魔王様がなんとおっしゃるかな』
デュラハンがあざ笑うように言う。 けれど私たちはその言葉より魔王の方に気を取られていた。
(ねえナミ!)
(何かニャ=?)
(今、魔王様って言ったよね!?)
(間違いなく言っていたニャね。 これでもうはっきりしたんだし早く仕留めて出ようニャ)
(う、うん。 でも魔王ってどんな感じなんだろう)
(どんな見た目だとしても殺すだけニャ。 一刻も早くこの服を脱ぎたいからニャ)
この世界から出たい理由が服を脱ぎたいからって…… まあ、水が苦手なナミらしいのかな。
ただ魔王がそんな簡単に倒されてくれるのかな。 城もそうだけど結構な権力を持っているみたいだし一筋縄ではいかないかもね。
「さあ、お二人さん。 城の中を案内いたしますね」
私たちはデュラハンが開けてくれた鋼鉄の扉を通り城の中へと入っていった。
城の外観だけでも禍々しくて大きかったんだから、一体どれだけの権力とお金を持っているんだろう……
簡単に倒せるといいんだけどな。
「ここが客間ですので少々お待ちください」
入ってすぐの部屋に通され、私たちは二人だけになる。 執事風の男性はすぐに部屋を出て行ってしまった。
外が森で汚れたから着替えてくるのかなと思いつつ客間の内装を眺めてみる。
「中は見た感じ普通のお城みたいね」
「そうニャねー」
豪華な金の装飾が部屋のあちこちに散りばめられており、今私たちが座っている椅子も肘置きなどが金色に光っている。
おそらく純金なんだろうなあ。 ただ、水の羽衣のせいで湿って変色してきているけど大丈夫かな……
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