これで終わり……?
「これが秘宝なのかニャ?」
「そうだが…… まさかこんなに早く見つかるとは思ってもいなかったな」
ナミが持っている懐中時計は正真正銘探していた逆時計のようだ。 そうとも知らずナミは懐中時計のチェーンを指にかけてクルクルと回していた。
「ナミ! そんなに雑に扱っていいものなの!?」
「あ、ごめんなさいニャ。 これが秘宝なんて思ってもいなくてついニャー」
ナミは言われるとすぐにやめ懐中時計をまじまじと見つめ始めた。
「しかしこれが秘宝だったのかニャ。 なんか手応えがないニャね」
「まあ、見つかったからいいでしょ。 それより秘宝をマーシャに返してあげて」
私はナミが逆時計を壊してしまわないか心配でマーシャに返すように言った。 ナミは大人しく聞き入れマーシャに渡そうとする。
「待てナミ、それは海凪に持っていてもらおう。 海凪が持っていた方が安全だし耳飾りに入れることもできるのだろう?」
「確かにニャ。 そういうことで駄主人様、頼むニャー」
「え……」
二人して私の方を向きお願い! と言わんばかりの顔で見つめてくる。
うう…… 可愛いなあ、しょうがない! 私が預かっておこうかな。
「わかったよ。 その代わり美味しいものでも食べさせてね」
「もちろんだ! 秘宝を取り返してくれた英雄としてもてなすとも!」
「じゃあ、わたくしも行きますわ! お姉さまともうお別れは嫌ですもの!」
こうして秘宝を取り返す、というか拾いノズ公国に戻ることにした。 アストレアは私たちが帰る準備をしている間に着替えて屋敷から馬車で送ってくれるとのことだった。
一日も歩かなくて済むからアストレアには感謝しなきゃね!
そう思い馬車に乗り込もうとすると……
ピシャーン! と雷が私たちに向かって落ちてきた。 そこで私の意識は途切れてしまった。
*
「んん……」
「あ、起きたみたいねー。 おかえりなさい」
目が覚めると目の前にはあの忌々しき死神が立っていた。 手には逆時計を持ち満足げな顔をしている。
「なんでこのタイミングで殺すんです?」
私は状況を理解した瞬間から死神に対して怒りを覚えていた。
普通秘宝を持ち帰ってパーティーとかした後でもよくない? なんで取り返してすぐに殺されなきゃいけないの?
「あなたの言いたいことも分かるわ、でも元々この時計は神様のものだったのよ。 これは並の人間が持っていいものではないの」
「でも私が持っている限り安全なわけじゃないですか」
「それもそうなんだけど領主の子の土地は暴動が起きていてかわいそうで帰そうと思えなかったのよ」
死神が言うにはノズ公国では治めるものがいなくなり一日にして国は暴徒があふれるスラム街のようになってしまったとのことだった。 またレイおじい様のような帝国のスパイも多かったらしくマーシャが帰ってきていたら殺されていたようだ。
「まあ、それなら納得したけどさ……」
「でも予想外のことが起きてしまったのよね」
ん? 予想外のこと? ナミは丸くなってまだ気絶しているみたいだし……
あ……
私はナミの横にもう一人寝ていることに気が付いた。 その人は金髪ボブの髪形ですやすやと可愛い寝息をたてている。
「ま、マーシャ!? なんでここにいるの!?」
「そうなのよ。 領主ちゃんも一緒に殺しちゃったのよ……」
「なんでマーシャまで殺すんですか! マーシャはアストレアと一緒にいる分には安全なんじゃないんですか!?」
私は死神に問い詰める。 死ななくてもいい人を殺してまで逆時計を取り返したかったのかと私は今まで以上に怒っていた。
「それはあなたのせいでもあるのよ? 馬車に乗るとき水を領主ちゃんにまとわせていたでしょ?」
「そうですけどそれが何か?」
神の力ならそのまま感電してとか言わないでしょ。
「一応あなたはその世界にはいないはずの人間なのよ。 だから力を使った場所や痕跡も消さなきゃいけないのよ。 まあ、領主ちゃんはそれに巻き込まれた感じね」
「そんな……」
マーシャが死んだのって私のせい……?
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