この耳飾りは……
「んん……」
目を開けてもまだ明るくなる前みたい。
まだナミも寝てるし外の空気でも吸ってこようかな。
「ん、海凪ではないか。 随分と早起きなんだな」
「マーシャこそね。 こんな早くに何をしていたの?」
マーシャはまだ暗い空を見上げながら悲しげな笑みを浮かべた。
「そうだな。 若くして国を任された身でありながらこんなことになってしまった自分を笑っていた、というところかな」
「そっか……」
私はかける言葉が見つからなかった。 今ここでありあわせの言葉を言っても返ってマーシャを傷つけてしまう気がしたから。
ほんとこんな自分が情けないと思っちゃうな……
「まあ自嘲はここまでにして準備でもしようか。 実際この問題も帝国から秘宝を取り返し国に戻れば少なくとも皆は話くらいは聞いてくれるだろうよ」
「うん、そうだね。 私までナイーブになっちゃ元も子もないしね」
そうだ、わざわざ死んでまで転生したんだからこの世界では前向きにいよう。 もう誰にもあの事について言われることはないんだし。
「そろそろ日も登ってくる。 ナミも起こすとするか」
「だね」
「ニャァァァァ…… まだ寝るニャ」
「今日中に帝国に着くにはもうここを出ないといけないんだよ。 だから起きて」
「嫌ニャァ…… せめて後五分ニャー」
薄い布でできた毛布にくるまりながらナミは二度寝をしようとしている。
さて、この簀巻き猫をどうしてくれようか。 現実だったら可愛いとかでネットに上がりそうだけどここは異世界、それに私は水の魔法が使える。
やることは一つね。
「ニャアアアア! 嫌ニャ! 起きるニャア!」
私は丁度ナミの耳に水をかけた。 するとナミは飛び上がるように起き、シャーシャー言いはじめた。
「やっぱりここの土は少しだけど塩分を含んでいるみたいね」
「それがどうしたのかニャ!?」
めずらしくナミが興奮気味になっている。
そんなに寝起きドッキリが苦手なのかな。
「吸熱反応って言ってね、水に塩化ナトリウムを溶かすと僅かだけど熱が吸収されて水が冷たくなるの。 さっき土から水を出してみたらひんやりしていたからもしかしたらって思ってね」
「もう二度と御免ニャ」
「ごめんごめん」
まあ、ここの土は少し持っていこうかな。 なにかこの先で必要になるかもしれないし。
そう思ってこの村の人から小さい麻袋をもらいそれに一握りほどの土を入れた。
「あ、しまった。 水の羽衣じゃ運べないや」
今はマーシャも含め三人とも水の羽衣を着ている。
水の羽衣は防御面や動きやすさはいいんだけど機能性ゼロだからなぁ。 どうしよう……
「良かったらこれをお使いください」
私が困っていると一人の村人がとある耳飾りを渡してきた。
「これは……?」
「この耳飾りは古代魔法がかかっていて耳飾りのロケットを開けると一定の重さまでなら大きさ関係なくしまうことができるんです」
「そんな便利なものを私に?」
古代魔法とか言ってるし結構貴重なものなんじゃ……
「我々が持っていてもしょうがないですからね。 使える方に使ってもらわないと」
「ならありがたく使わせていただきますね」
言われた通りにロケットを開けてみる。 すると中には宇宙のような空間が広がっており今にも吸い込まれそうになる。
そこに麻袋を当ててみると分解されるかのようにロケットの中に吸い込まれていった。
「これが古代魔法なんですね…… ちなみに物を外に出すときはどうすればいいんですか?」
「ああ、それはロケットを開いて出てきてほしいものを思うんだ。 すると中に入れたもので願ったものだけが出てくるんだ」
なるほどね、思うだけで物の出し入れができるんだ。 なんか私の能力と少し似てるかもなあ。
「ただ、その耳飾りには伝説があってね…… いや、やめておこう」
何か言いかけていたが村人さんは黙ってしまった。 しかしこの耳が小声で
「人外の魔力があれば……」
と言ったのを聞き逃してはいなかった。 しかし話そうとしないのなら別に詮索しようとも思わなかった。
まあなんにせよこれで準備は整ったんだし早く出発しようかな。
「それではお世話になりました。 また戻ってくると思うのでその時もよろしくです」
「いえいえ、どうぞお気を付けて」
村人さんたちに手を振りながら私たちは村から東に歩き始める。 ここから東に一日歩くと帝国領の最初の町に着くそうだ。
いや、長くない……?
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