第二話 混乱しています 2
こんにちは。
第二話の「2」になります。
今回から普段通りの公開スパンになります。
なんとか毎週公開を心がけていきますが、一週休みになった場合はすみません。
これからもよろしくおねがいします。
「はぁ・・・」
ため息も出したくなるよ。
着慣れない服装で唯一ありがたいのは、足元がひんやりしない事くらい。
僕、あんまりパンツスタイルなんて着こなさないから、脚全体が隠れてるのは、それを差し引いても違和感がある。
横断歩道の前で立ち止まり、自動車の行き来を眺める。
無駄というか、変な目で見られるのがオチだけど、通り過ぎていく自動車の運転手にすら聞きたくなるくらい。
「おっはよー・・・」
聞き覚えのある声に顔を向けると、夏目ちゃんが眠さに目を細めながら僕の隣で止まった。
「お・・・おはよ・・・」
潜もった僕の声を無視するように、隣で小さな欠伸をしている。
「今日ね、願い事叶ったー」
「え・・・願い事?」
「うんー、トマト。いつもより一個多いのー」
「そ・・・そうなんだ・・・」
眠たそうでも嬉しそうな夏目ちゃんの言葉が耳に入ってきてるようで、きてないようで・・・
「夏目ちゃん・・・」
「うんー?」
「僕、どこか変かな?」
夏目ちゃんの願い事。
たしか昨日『トマトが入ってるように』ってお願いするって言ってたっけ。
それが今日叶ったって事は、さっき僕が願っていた夢オチの可能性がまた低くなっちゃった。
でも、それなら・・・
夏目ちゃんなら、きっと僕が昨日の僕とは違う事に気付いてくれるはず。
「んー・・・どこー?」
「え・・・?」
「どこかなー、分け目が逆とかかなー」
「えっと、もっと大きい所なんだけど」
「大きい所? それじゃ、髪型かなー」
「ううん、もっともっと大きい所」
どうしても気付いてほしい。
お父さんもお母さんも気付いてくれなかったのなら、せめて夏目ちゃんだけでも気付いてほしい。
その思いが強いがあまり、夏目ちゃんの口から言わせる様にヒントを出していく。
けど、その答えは僕の願いを打ち砕いた。
「んー・・・わかんないなー」
「わかんないって・・・」
信号が青に変わり、他の生徒達が横断する中で夏目ちゃんも足を動かし始めた。
けど、僕だけがその場で立ち止まってしまう。
やがて、信号が赤に変わり、また自動車が僕の目の前を横切りだした。
向こうも、僕が付いてきていない事に気付いたのか、今なら渡れる横断歩道を渡らずにこちらで手を振り続けている。
けど、それに返す気力は今の僕には無かった。
「どうして・・・」
また僕の周りに人が集まってきた。
次に渡ろうと待っている人達だ。
夏目ちゃんも、ずっと手を振り続け、その信号が赤になっても僕の事を待ってくれていた。
再び僕の目の前が青になった所で、力を振り絞り前へ進む。
「どうしたのー?」
「・・・・・・」
「きりー」
目の前で手のひらをふりふりされて、少しずつ素に戻っていく。
「ねえ」
「?」
「本当に、僕に違和感とかない?」
「んー・・・ないよー。昨日のきりに見えるよー、私はー」
「・・・そっか」
もう、これ以上は聞かないでおこう。
これから何度聞いても、多分何も進展しないと思う。
「それより、早く学校行こー」
「あ・・・うん・・・」
教室では一緒にいる事の多い夏目ちゃんが、僕の変化に気付かないとなると、もう頼れる人は限られる。
でも、もう藁をも縋る思いだ。
クラスメートでも三十人くらいはいるし、部活には二人、先生もいるし。
それに、もしかしたら滝本先輩なら気付いてくれるかもしれない。
「・・・あ」
でも、これってひょっとして・・・
滝本先輩と付き合えるかも・・・
滝本先輩は、女の子同士でそんな関係は持てないって言ってた。
なら、今ならひょっとすると・・・
「はっ!?」
いけない。
変な邪推が頭を過ると、僕は精一杯に我に返り、そして頭を抱える。
そんな事思っちゃいけない!
僕は、今の僕じゃなくて、女の子の僕を見てほしいのに。
それでも、そんな事を思いながらも夏目ちゃんはどんどんどんどん前へ進んでいっていた。
「・・・・・・」
お父さん、お母さん、夏目ちゃん。
三人とも同じ反応を見ると、あまり大きな期待を持ったらいけないのかもしれない。
それでも、砂粒くらいの希望を持ちながら、僕は向かい風の中で懸命に足を動かしていた。
公開は不定期になります。
基本的には以下の内容を目標に公開していく予定です。
・日曜公開
・18時公開
・週に一話〜半月に一話ペース




