第一話 お願いします! 5
こんにちは。
第一話の「5」になります。
しれっと前書きと後書き書いていますが、公開日には真っ白にしていました。
すみません(汗)
次回からはこんな事が無いように努めていきます。
これからもよろしくお願いします。
晩御飯はコロッケ。
じゃがいもがたっぷり入った、ちょっと甘みが利いたコロッケ。
一口食べてまた一口。じっくりと味わって、ようやくごちそうさまが出来た。
「天音、学校の方はどうだ?」
椅子にもたれかかり、テレビに釘付けになっている僕に、お父さんからの視線が向いた。
「んー?」
「楽しいか?」
「うん、楽しいよ」
僕はドラマに夢中になっていた。
最近テレビに出始めた俳優さんが主演のドラマ。ストーリーはちょっと感情移入しにくいんだけど、その俳優さんがかっこいいから、目の保養みたいな感覚で見てる。
「悩んでいる事はないか?」
「うん、大丈夫」
「そうか」
うんうんと頷くお父さんの鼻の下が伸びている。
だいたい週一で同じ質問をしてくるから、こういう時はちょっと煩わしく感じてしまう時はあるけど、翌々に僕の事を思ってくれているのに気づく。
それがいつもの日常。
けど、そんな日常の中でも、今日起こった非日常の出来事は言えないでいた。
「勉強とかで、わからない事とか無いか?」
「うん、大丈夫」
「そうかそうか」
喜びながらコップのお茶に口を付けては喉を鳴らすお父さんを横目にドラマに集中する。
主人公の俳優さんが、ヒロインの女優さんと見つめ合ってるシーンを見てると、こっちまで心臓が賑やかになってきた。
あ・・・もうちょっと。
あと五センチ、四センチ・・・
三センチ、二センチ・・・
「天音ちゃーん、そろそろお風呂入りなねー」
「・・・はーい」
台所で作業しているお母さんの声で、大事な場面が台無しになっちゃった。
でも、仕方が無い。
後ろを見ると、お母さんの背中が洗い場の前でゆっくりと動いていた。
「天音、入りなさいよ」
「はぁーい」
もうすぐドラマも終わるし、いっか。
スマホを手にし、次回予告が始まっている中、僕は着替えを取りに自分の部屋へ向かった。
「ふぅ・・・」
少し熱めの湯船に肩まで浸かって一息。
傷口に貼られた絆創膏がぷっくりと膨らんでいる。
それを優しく撫でてみたけど、大きな痛みは無かった。
「・・・・・・」
少し動くと、お湯がちゃぷんと高い音が出る。
色んな事が今日一日であったけど、やっぱりお風呂の時間は僕にとっては至福の時間。
ゆっくり出来るのはもちろん、この時間だけは至福に満ちた一時を味わえて、本当に大好き。
出来るものなら、ずっとお風呂でゆっくりしたいくらい。
全身の肌がふやけても良いくらい。
「・・・・・・」
けど、僕にとってはちょっとだけいけない自分が出てきてしまう場所がお風呂。
周りが静かだから、ついつい妄想に耽ってしまう。
ちょっと目を瞑れば、頭の中にいてる別の僕が主役を演じた世界が広がる。
その中には、いつも滝本先輩がいた。
その世界にいる先輩も、現実とほとんど同じで。唯一違うところは、僕の事を愛してくれていること。
僕がいつもピンチになっていると、必ず先輩が助けてくれる。
そして、いつもこんな事を言ってくれる。
『お嬢様が悲しむ所を見るのが、私は一番嫌いです』
ドレス姿の僕をお姫様抱っこしてる滝本王子。
そんな世界が僕の頭の中で演じられ、長い階段をゆっくりと下りているところで、いつも現実世界に戻ってくる。そして、自分の妄想が過激だったかもしれないと、勝手に悶絶して胸がキュンキュンしちゃう。
「はぁ・・・」
滝本先輩、やっぱり素敵。
あんなに素敵なのに、他の女子から告白が無かったのが不思議で不思議で仕方が無いくらい。
滝本先輩の隣に、僕がいれば、どれだけ幸せになれるだろう。
ぶくぶくぶくと口までお湯に浸かった中から泡を作りつつも、滝本先輩の事ばかり考えてしまう。
「・・・・・・」
滝本先輩の事を考えていたら、神社のあの一件が少しずつ記憶から消えてきていた。
顔が赤くなっているのは、どっちのせいなのかな。
これ以上入ると逆上せそうな気もするし、気持ち早めだけど、今日のお風呂はここで終わらせる事にした。
今年の公開は今回で終了です。
次回公開は1月1日の予定です。
詳しい内容は、後日「活動報告」で報告する予定です。
発表までもうしばらくお待ちください。




