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ノシ付きでお返しします  作者: ゆ~む
第一話 お願いします!
3/13

第一話 お願いします! 2

こんにちは。

第一話の「2」になります。

ここで言うのもなんですが、最初にお伝えした「没作」について。

それは、簡単に言うと「異能力バトル」系だったんですが、必殺技の名前が思い浮かばないわ、表現の仕方がうまくいかないわ、どれだけの長さのバトルが最適かわからないわ、で没になりました。

多分、書いて投稿・公開したとしても、失踪するまでは時間の問題のような気がしたんですよね(苦笑)

ああいうのが書ける方が羨ましい限りです(涙)

で、結局は比較的得意分野の「恋愛」がテーマになる、と(笑)

自分も、昔は書いていた「異能力バトル」系、勉強してみようかと思った最近の出来事でした。

でも、この作品にちょっとだけ織り交ぜてみたいですね。

出来るものなら・・・ですけれど(苦笑)


これからもよろしくお願いします。

 御影先輩と二人で階段を下りて行き、職員室の前で教室の鍵を返す。

「これから、どうなるかねぇ」

 落ち着いた口調で話す御影先輩だったけど、その心の内は存亡の危機の部活をなんとかしたい思いで一杯なんだと思う。

 教室までゆっくり歩きながら、何人の生徒とすれ違いながら、下駄箱へ向かう。

「大丈夫です! 僕も全力で宣伝していきますから!」

「そうだね。田辺は役に立たないし、天音っちと私だけでも頑張って宣伝していかないと」

「はい! まずはクラスメートとか、何より友達に宣伝してみます!」

 いくつかの下駄箱を挟み、御影先輩とのやり取りを続ける。

 同じ場所にいる何人かの生徒に盗み聞きされてるかもしれないけど、逆にそのおかげで家庭科部に興味を持ってくれれば、これほど美味しい策もない。

 靴を履き替えて外に出ると、少し強い風に髪とスカートを抑える。

 まだまだ寒い日もあるけど、桜も少しずつ花開いてきた。

 去年の今頃、何やってたかなぁ・・・

「ごめんごめん、おまたせ」

 後から出てきた御影先輩と合流して、足元の階段をゆっくりと下りる。

 一段、二段と下りるたびに、校門の近くにある桜の木が少しずつ大きく見えてきた。

「入学式までには、咲きますよね」

「そうだねー、やっぱり新入生からしたら咲いててほしいとこだよね」

 僕が入学した一年前の桜は、すでに満開を通り過ぎて、少しずつ散っていく位の時だった。

 入学が決まった時だったからまだ良かったけど、これが合格発表の日とかだったら、悲しくて一生物のトラウマになりそうな予感しかしない。

「それじゃ、また明日の部活でね」

「はい!」

 門を出てすぐ、先輩と手を振りながら別れた。

 その後ろ姿を最後まで見ながら、時々振り向いては手を振ってくれる先輩に笑顔で振り返す。

 時々吹く風に身震いしながらも、先輩が見えなくなるまでその姿を追っては、僕もようやく歩き出した。

 はぁ、と大きく息を吐いても、もう白くは見えない。

 ほんの少し前は息も白かったのに、やっぱり春も近づいてきてるんだって思う瞬間瞬間が、僕は大好き。

 春になったら桜が咲いて、満開になった桜の木の下を歩いて、散った後も桜のカーペットの上を歩きながら色んな発見をするのが、僕の最大の春の楽しみ方。

 その時が来るのがもの凄く楽しみで、思わず空を見上げてしまう。

 また来た風で前髪が大きく揺れるけど、その風もとっても気持ちいい。

「あ!」

 最初の曲がり角を見えた所で、見覚えのある後ろ姿が見えた。

 黒くて長いポニーテールと身長、その姿から漂う気品の高さ。

 憧れる程のモデル体型は、紛れも無く滝本先輩の後ろ姿だった。

「滝本先輩!」

 私の一声で相手の横顔が見える。

 先輩も、声の発信者が僕だとわかると、進めていた足を止めてくれた。

 走りに走って、ようやく先輩の足元から伸びた長い影をつかまえる。

「はぁ、はぁ・・・よかった、先輩と一緒に帰れる」

「あなたは、たしか・・・」

「え。もしかして、僕の事覚えててくれてるんですか!?」

 呼吸がまだ戻らない中でも、その言葉だけはハキハキと言えた。

 滝本先輩も、僕の質問にゆっくりと首を縦に振ってくれる。

 それがすごく嬉しくて、目の輝きが一層増したように感じた。

「あなたみたいな変わり者、他に見た事が無いから」

「か・・・変わり者!?」

「男子からはともかく、女子から真っ直ぐに告白された事なんて無かったから」

「そう・・・なんですか?」

 先輩の言葉が僕にとっては意外だった。

 先輩の容姿もさることながら、行動とかでも女子からの人気が高いと思っていたのに。

 まさか、そう思っているのは僕だけなのかな・・・

 けど、ふと考えると、僕の周りには滝本先輩の事を憧憬の眼差しで見てる人は聞いた事が無い。

 僕のクラスでもそんな話は無いし、友達からもそんな話をしないから、胸の内にしまっている自分も居てる。

 でも、やっぱりかっこいいし、すごく素敵。

「先輩!」

 背筋を伸ばして、もう一度、あの時と同じくらいに頭を下げた。

「僕と付き合って下さい!」

「無理」

 思いたくも無いながらも、予想通りの答えが返ってきた。

「どうしてですか?」

「あなた、自分が女だって事忘れてない?」

「わかってます! でも・・・」

 一台の車が先輩の後ろから近づいてきた。

 その運転手さんにも気づかれそうなくらい、僕の顔は紅潮していたかもしれない。

 それもそう。

 好きな人の前で顔を赤くしないで居られる人なんて、そうそういないよ。

 やがて、その車が私達の隣を通り過ぎた所で、ふわりとスカートが揺れた。

「友達からとかでも良いです! せめて、NINEの交換だけさせて下さい!」

 あの時以上に頭を下げた。僕が出来る限りの頭の下げ方を見せたら、先輩だってきっと・・・

「NINE、やってないから」

「え・・・?」

「これから私も受験勉強に精を出さなくちゃ行けないの。あなたと遊んでる暇は無いから」

「え・・・」

 言葉を失った。

 僕、失恋しちゃってる。

 目の前の光景がぐにゃりと曲がり、目眩で失神しそうなのを必死で踏ん張る。

 自分でも、眼の光が無くなってきているのがわかった。

「それじゃ。もう私に関わらないで」

 冷淡な言葉を最後に、滝本先輩は僕から遠ざかっていった。

「・・・・・・」

 そんな・・・

 なんで・・・

 なんでなの・・・

 ううん、付き合うのが無理なのは、さすがの僕でもわかる。女の子同士だし『付き合って下さい』って言われたら、どうしてもそう捉えちゃうのもわかる。

 でも、連絡先の交換くらいはしてもらえると思ってた。

 NINEをしてなかったとしても、電話番号の交換くらいは出来ると思ってた。

 その願いも届かなかった哀しみで、思わず涙が一粒だけ頬を伝っていった。


「はぁ・・・」

 ため息をつきながら、自宅へ向かって足を前に出していく。

 あまりの失望感に、最初の信号が赤なのに気づかなくて、危うく轢かれそうになった。

 それで少しだけ我に還ったけど、それでも元気だけは取り戻せていない。

「はぁ・・・」

 風が吹く。

 私の目の前に、傍の木の葉がゆっくりと足元へ舞い落ちる。

 その葉っぱをじっと眺めては、それを軽く踏みつけた。

「・・・・・・」

 ダメダメ。

 泣いちゃダメ。

 泣いちゃダメだけど、目の前がだんだんと滲んでいく。

 このまま瞬きをしたら、絶対に溜まった涙が流れ落ちちゃう。

 大きく深呼吸して、気分を少しでも紛らわそうとした時だった。

「きりー」

 後ろから聞き覚えのある声。

 急いで涙を拭って、笑顔で振り向いた。

「今帰りかな?」

「うん。部活が遅くなっちゃって」

「そっかー」

 今日の授業が終わって、飛び出すように出て行った夏目ちゃんだったけど、なんでこんなとこにいるんだろう。

 特にカバンとかも持ってないし、そもそも服装は既に帰宅後だという事を私に教えてくれていた。

「夏目ちゃんって、部活入ってなかったっけ?」

「入ってるよ。陸上部」

「陸上部かぁ・・・走るの得意だもんね、夏目ちゃん」

「うんー、じっとしてたくないだけー」

 ははは、と笑う夏目ちゃんはいつものテンション。

 失恋したばかりの私にとって、このテンションは少し重い。

 もちろん、夏目ちゃん自身も悪気があってやっているわけじゃないから、せめてもと自分だけでも精一杯に装う。

「あとね、ちょっとお願いごとしに行くんだー」

「お願いごと?」

「うんー、明日のお昼のお弁当にトマトが入ってますようにってねー」

「あ、そうなんだ・・・」

「きりも来るー? ここからそんなに遠くないしー」

「そうなの?」

 この近辺にお願いする様な場所ってあったっけ。

 お寺もなければ神社もない。あるとしても、ここから十分以上は歩かないと行けないはず。

「そこのお願い、結構当たるんだー」

「ご利益があるってこと?」

「うんー、今日も願い事叶ったしー」

「へぇ・・・」

 そんなにご利益がある神仏なんてあったんだ。

 この近くでそういうのがあるなら、私も是非やってみたい。

 そして、そこで滝本先輩と連絡先の交換とかして、あわよくば・・・

 けど、どんなお願いしたんだろう。

 無粋かもしれないけど、どうしても気になってしまって、思わず尋ねてみた。

「今日のお弁当に梅干しが入ってますようにってー」

「梅干し?」

「うんー、梅干しー」

 嬉々として話す夏目ちゃんに、ほんの少しだけ癒しを貰った。

 また風が吹いて、葉っぱが落ちてきたけど、さっきとは真反対の気持ちになりつつあった。

「でもねー、お母さんにお願いしたからって言うのもあると思うんだよねー」

「あると思うって、多分それが全てだとおもうよ」

「かなー。ちなみに今日もこの後、お母さんに同じようにお願いするつもりー」

 マイペースな夏目ちゃんにこっちも思わず笑顔になる。

 でも、そこのご利益に関しての信憑性はガクッと落ちちゃったかな。

「きりも行かないー?」

「うーん・・・気にはなるけど」

「行くなら一緒に行こー! そっちの方がご利益も二倍になりそー」

 ぎゅっと僕の左手を握っては、彼女が向かう方向へ引っ張ろうとする。

 日は少しずつ傾き、街灯も既に明るさを放っているけど。

「場所だけ確認したいかな」

「いいよー、行こ行こー」

 引っ張っていた手から力が伝わり、思わず身を斜めにしながら進んでしまう。

 夏目ちゃんは、ひたすら前へ前へ進んでいく。

 鼻歌を唄いながら、ご機嫌に進む彼女に引っ張られながら、僕はその場所へ向かった。

公開は不定期になります。

基本的には以下の内容を目標に公開していく予定です。

・日曜公開

・18時公開

・週に一話〜半月に一話ペース

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