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ノシ付きでお返しします  作者: ゆ~む
第一話 お願いします!
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第一話 お願いします! 1

こんにちは。

第一話の「1」になります。

「僕っ娘」難しいですね。「女性ということは『私』」がどうしても定着してしまっているので、打つ度打つ度「あ、ちがう。『僕』だった」と打ち直すばかりです。

今回はR15指定にしています。理由は、現時点ではわからないかと思いますが、直にそういった内容が出てくるので、そういうのが不快な方は速やかに退出していただけたらと思います。

そもそもR15指定自体が、いかんせんわかっていないので、もし報告等が来ましたら、それに準ずるつもりです。

あと、悪い表現ではありますが、基本的に『変人』しか出てきません(笑)

そういうのが苦手な方も、退出いただけたらと思います。

「おーい、田辺。起きろ」

 部活も終了が近づいている頃、未だ枕を下にして寝ている田辺先輩を起こすのを見ながら、僕は最後の仕上げにとりかかっていた。

(あとは、これを縫ったら・・・)

 最後のアップリケを縫い終えたら、ひとまず完成なんだけど。それよりも先に部活終了のチャイムが鳴りだしたところだった。

「天音っちも、キリのいいところでやめなよ?」

「そうですね・・・これが終わったら完成なので、今日中には縫い終えたいです」

「そう?」

 僕が縫い合わせているトートバッグに釘付けな御影先輩。

 大きさは決して大きくなくて、せいぜい小物を入れて持ち運べるくらいの大きさなんだけど、それでもまじまじと見つめている。

「あの・・・何か気になっちゃいますよ」

 頭上でまじまじと見つめる御影先輩。

「先輩は、何か作ったりしないんですか?」

「んー? 私家庭科苦手だから」

 ははは、と笑う御影先輩に苦笑いで返す。

 苦手なら、なんで家庭科部なんて作ろうと思ったんだろう。

 でも、僕にとっては居心地の良い場所だから、それはそれで構わないんだけど。

「そういえば、田辺先輩も寝てるだけですよね」

「いやー。田辺はああ見えて器用だよ」

「うん。なんせあの枕、自分で作ったんだから。中の羽根も通販で調達したんだってさ」

「そうなんだ・・・」

 枕って、材料が集まればそこまで難しくないって聞いた事はあるけど、実践するのは僕には無理かな・・・

 鼻提灯を出しつつ、気持ち良さそうに寝息を立てている先輩をじっと眺める。

「羨ましいなぁ」

「え・・・?」

「田辺ってさ、家庭科が出来て、運動も出来て、勉強も出来て、イケメンでしょ。付き合える女子が羨ましいよ」

 腰に手を添えながら呟く御影先輩に耳を傾けながら、視線は変えず。

 たしかに、田辺先輩って、鼻も高くて、眉もキリッとしてて、どちらか言わずともイケメンに見える。

 他の女子に聞いても、よほど好みのタイプじゃない女子じゃない限り、絶対にイケメンって答えると思う。

 それくらい、人気は高そうな面持ちなのに、何故かそんな話は聞かない。

「御影先輩、告白してみたらどうですか?」

「っはっはっは・・・真っ平ゴメンだよ」

「どうしてですか?」

「だって・・・イケメンすぎて、こっちが尻込みしちゃうでしょ」

「ああ・・・それはちょっとわかります」

 二人から視線を浴びているはずなのに、顔色どころか起きもしない田辺先輩を眺める。

 鼻提灯を膨らましては割れて、膨らましては割れての繰り返しだけど、ぜんぜん起きる素振りはない。

 ここまでくると、家で何をしているのだろうとか、起きている時間はいつなんだろうとか、私にとってはどうでもいい事が生まれ始めた。

「天音っちが告白してみたら?」

「僕は、ああいうのはちょっと・・・」

 なんというか、頼りないわけじゃないと思うけど、いざとなった時、隣に居たはずが忽然と消えてるなんてことがありそう。

「・・・んあ?」

「お、やっと起きた」

 ようやく目が覚めた田辺先輩が、自分の口から流れた涎をすすりながら元に運んでいく。

「ふぁぁ、もう終わりっすか?」

「終わりだけど、あんたやる気あるの?」

「ありますよ。ここだとゆっくり寝れるんで」

 カバンの中に入っていた箱ティッシュを取り出して、二、三枚の束を使って自分の枕を拭いている。

 夕方の日差しを後ろに、その様子を見つめる御影先輩と私にようやく気付いたのか、起きてから初めて彼と目が合った。

「どうしたんすか?」

「・・・なんでもない」

 二人のやりとりに、ついつい苦笑いを浮かべてしまう。こんな二人なのに、けんかにまで発展しないのは、ある意味ですごいのかもしれない。

 と、僕もそろそろ今日の目標にしていた最後の仕上げに取り掛からないと。

 田辺先輩は、枕をカバンにかけて帰宅準備に差し掛かってるし。御影先輩も、僕がここを出るまではずっと居てくれそうな気がする。

 急いで、かつ丁寧に針を通していく。

「あ、そうそう!」

 最後に、と御影先輩が教室の壇上に上がって、教卓の前で両手をつける。

「家庭科部って名前にしてるけど、いろんな物が足りないと思うんだ。たとえば、料理をするには包丁とかまな板とかはここには無いし、裁縫するにも、そういった道具は皆無でしょ?」

「まぁ、たしかに・・・」

 ここは家庭科室でもなければ、調理室とかでもない。

 ただただ一般の、今年度は使われていない空き教室を借りて細々とやっているだけ。

 かろうじて電気は点くけど、カーテンも無ければ、机も指折りほどの数しかない。

「だから、そういった教室を使えるようにしたいんだけど、そうするには部活として成立させないと行けないの」

「ふむふむ・・・」

「そこで! 近々新入生の入学式があるでしょ。その時に部活動紹介の機会があるかもしれないから、どういう宣伝にすれば良いか考えておいてくれる?」

「ああ・・・」

 スマホのカレンダーを確認する。

 まだもう少し先だけど、もうすぐ僕も一学年上がって、そういう人たちの先輩になるんだ。

 新入生の勧誘か。

 ここに僕が入ったときは、部活で作ったものの紹介をしてたんだよね。

 そういったものを紹介すれば良いんだろうけど、御影先輩はそういうのは苦手だって言うし、田辺先輩は・・・

「あと、今すぐにでも欲しいっていう道具があったら教えてね。家にあるものだったら持ってくるから」

「はーい」

 力無く返事をしながら手を挙げる田辺先輩に、御影先輩が今日一番の驚きと笑顔を見せた。

「お、田辺。部活の事ようやく考えてくれるんだな。で、なに?」

「ベッドと布団」

「・・・保健室行け」

「うぃっす」

 おつかれっした、と田辺先輩が教室から出て行った。

 頭を掻きながらため息交じりの先輩に、どう対応すればいいかわからない僕。

「あいつに期待した私がバカだったな」

「あはは・・・」

 夕日が雲に隠れたか、教室全体が少しだけ暗くなった。

 スマホの時計も、どんどんと時を刻んでいて、そのうち先生の見回りが始まろうと私の行動に焦りを生み出そうとしている。

「やっぱり、作ったものの展示とかどうですか?」

「うーん・・・やっぱり、そうなってくるかなぁ」

「三人で作れば、まだ時間もありますし、色んなもの作れると思いますよ」

「うーん・・・そうは言ってもねぇ」

 部長の私が、と自信なさげな先輩に、最後の一押しをお見舞いしよう。

「なんなら、これも作品の一つに出しますよ。それならどうですか?」

「うーん・・・ま、代案も無いし、それで行ってみますか」

 やった!

 これでこの部活も、なんとか前へ進めそう。

「その代わり、今日はもうおしまい。続きは明日しなね」

「そうですね。わかりました!」

 満面の笑みを御影先輩に見せて、帰る準備にとりかかる。

 今日仕上げる目標は叶わずじまいだったけど、宣伝のためと考えると話は別。

 先行き良好なこの部活のために、私はかばんに全ての用具を詰めて、先輩と一緒に部室をあとにした。

公開は不定期になります。

基本的には以下の内容を目標に公開していく予定です。

・日曜公開

・18時公開

・週に一話〜半月に一話ペース

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