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ノシ付きでお返しします  作者: ゆ~む
第二話 混乱しています
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第二話 混乱しています 4

こんにちは。

第二話の「4」になります。

もう一月も終わりですね。早いものです。

今思えば、これを公開し始めてからもう一、二ヶ月経ってるんですよね。早いものです。

ほんと、時間の経過が早いです。


これから、さらに早く感じてしまう中でも頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします。

昼休みのチャイムが鳴る。

結局、何も頭に入ってこなかった。

僕自身が迷いの渦に飲み込まれながらも、教室中の活気は普段と何も変わらない。

それが、不思議でもありながら、少しだけ忌々しくも感じてきていた。

まるで、昨日までの僕は。皆からはクラスメートと言われていた僕は、始めからそういう風に感じてもらえていなかったのかと。今まで友達だと思っていたクラスメート達も、みんなからしたら僕なんてちっぽけな存在だったのかと。

「きりー」

教室からほんの少し人がいなくなってから、夏目ちゃんがこちらに近づいてきた。

「ごはんたべるー?」

「え・・・あ・・・うん・・・」

「それじゃ食べよー」

僕の思いを余所にお弁当箱を包む布をゆっくりと解いていく夏目ちゃん。

もちろん、夏目ちゃんも例外じゃなく、僕の変化にはあれ以上言及してこなかった。

心の中で大きなため息を吐く。

「きりー?」

「・・・・・・」

「どうしたのー?」

「え・・・あ、ううん。なんでもないよ」

どうしたら良いのかわからないままに、上辺だけの平静を装いながら夏目ちゃんの不安の種を摘み取る。

もう、今日はあまりこの事を考えるのはよそう。

多分、このクラスの人達が僕の存在の違和感に気付いていないという事は、多分御影先輩も田辺先輩も、果ては滝本先輩すらも気付いてはくれないと思う。

お父さんと、お母さん。学校では一番身近にいてる夏目ちゃんがいつも通りなのが、僕のそんな考えを確信への一押しになっている。

・・・この事は、僕一人になった時に考えよう。

「ほらー、とまとー」

「あ、ほんとだ」

ペカー、と笑う夏目ちゃんのお弁当箱の隣には、トマトが一つ。

お弁当箱の中に、スライスやカットされたトマトが入っているわけじゃなく、隣にトマト一個が丸々入っていた。

「え・・・?」

その異様ともとれる光景に失笑せずにはいられなかった。

「どうしたのー?」

「え・・・えっと、トマト・・・」

「うんー、とまとー」

「えっと・・・そういうことじゃなくて・・・」

「きりにはあげないよー」

「そ、それは別に良いんだけど・・・」

なんだろう。

夏目ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べるのは、いつも通りの光景なんだけど、今日のこの事態は初めてだ。

口元を軽く隠し、出来るだけ笑みがバレないようにする。

そんな僕の表情も気にせず、夏目ちゃんはそれを鷲掴みにすると、星の部分から思い切りかぶりついた。

「おいしー」

頬を少し赤くしながら、顎を動かす夏目ちゃんの表情が癒される・・・はずなんだけど。

どこかがおかしい!

絶対おかしい!

僕が男の子になっている以外にも、絶対。目の前で起こっているこの光景はおかしい!

「ね・・・ねえ・・・」

「んー?」

「昨日、どんなお願いしたの?」

「んー、明日のお昼ご飯にトマトが入ってますようにって」

「トマトが? お弁当箱に・・・?」

「んー、どうだったかなー・・・」

頬を軽く掻きながらも、夏目ちゃんの顎は動き続けている。

少しその間隔が長くなってきたと思ったら、次の一口にかぶりついた。

「どうしたら、そんな風になるの?」

「んー?」

「だって普通、お弁当箱に入ってるとかじゃ・・・」

「んー・・・」

目の前の子は、なにを言ってるの、みたいな顔をしている。

その表情に、僕も同じ顔で返すしか無かった。

「早く食べないとお昼休み終わっちゃうよー」

「え・・・」

「私もトマト食べ終わりそうだし、きりのお弁当箱にトマト入ってたら盗んじゃうよー」

「あ、それはダメ」

まるで話を逸らされたように感じるけど、僕もお昼ご飯食べないと。

「トマトおいしかったー、次は何お願いしようかなー」

満足げな夏目ちゃんの笑顔を余所に、かばんの中からお弁当箱を取りだす。

「・・・はぁ」

心の中でもう一つ。

夏目ちゃんの笑顔は太陽の様に眩しいのとは裏腹の僕の心のモヤは一向に消えそうにない。


「ごちそうさま」

ようやく食べ終わった頃には、教室中の誰一人もが昼食を終えていた。

「今日のきりのお昼、ゆっくりだったねー」

「うん・・・」

「だいじょうぶー? 体調不良とかじゃないー?」

「それは、大丈夫だけど」

心配そうな声が、俯く僕の耳に届く。

これから、あと二時間の授業があるのに、もう何も考えたくはない。

今まで心の中で吐いていたため息も、とうとう口から漏れだしてしまっていた。

「はぁ・・・」

「どうしたの、きりー?」

机に突っ伏し、ゆっくりと目を閉じる。

夏目ちゃんの声は、僕の耳から反対の耳へ通り過ぎていっていた。

「・・・・・・」

なにか原因がわかれば良いんだけど。

でも、確証は無いにしても、予感はあった。

異変が起こったのは、今朝。

昨日、あの神社に行った時に見た、あの祠。

あそこに何か異変を解決する何かが隠れていそうな気がする。

とは言っても、見つけた所でどうしたら良いのかはわからないけど。

それでも、行かないよりは行ってみた方がマシだ。

大きく深呼吸しながら、自分のお弁当箱の蓋をゆっくりと閉めて、午後の授業に取り組む事にした。

公開は不定期になります。

基本的には以下の内容を目標に公開していく予定です。

・日曜公開

・18時公開

・週に一話〜半月に一話ペース


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