プロローグ
こんにちは。
はじめましての方は、はじめまして。
「ゆ〜む」と名乗っております。
今回、新しい作品を書く事になりました。
以前の作品を読んでいる方からすると、ちょっと不思議な思いを抱く事になると思いますが。
その方からすれば、お察しの通り「同時進行」になります(苦笑)
また、最初は苦手要素100の物語を書こうと思っていたんですが、長続きしなさそうなので挫折。この物語を書き始める事になったのは先月終了間近の段階でした。
なので、執筆活動はゼロに等しいです。
前回の作品が、ちょっとシリアス的な展開もありな恋愛物語ですが、今回のこの作品はギャグ・コメディ要素多めの所謂ラブコメ的なお話にする予定です。
けど、コメディ要素の中に入るシリアスな場面は個人的に大好物なので、そういった場面も入れていけたらな、と。
まだまだ話したい事はありますが、今回はこのあたりにして、また次回の前書きでお話し出来ればと思います。
それでは、これからもよろしくおねがいいたします。
「ぼ、僕と付き合って下さい!」
僕が一目惚れで追いかけていた滝本先輩に頭を下げて、思いをぶつけた。
緊張で心臓が破裂しそうな感覚が常に襲い続け、現時点では彼女の足元しか見る事が出来ない。
「ごめん」
辛そうな声で、そんな答えが返ってきた。
「私、そういうの興味が無いから」
「え・・・」
「私なんかと付き合うより、もう少し現実を見た方がいいわ」
鋭い目つきで、僕にとっては辛辣な言葉が返ってきた。その眼光に、ついつい黙り込んでしまった僕に滝本先輩の方がしびれをきらした。
「言いたい事がそれだけなら、もう帰るから」
僕が頭を上げるよりも先に、彼女は踵を返していく。
視界から彼女の足首が消えたと思い、顔を上げると既に遠くまで走り去っていた。
その一、二秒後に彼女が角の奥へと姿を消す。
校舎裏で一人になってしまった途端に、壮大な孤独感と喪失感に膝から崩れ落ちてしまった。
「・・・ダメだった」
文武両道で、クラスだけじゃなく生徒会の会長も務める、誰からも信頼出来る滝本先輩。
やっぱり、そんな彼女と付き合おうと思っていたのが間違いだったのかな。
あのキリッとした表情を見ると、ついつい目を逸らしちゃうっていうか。
その目つきが怖いわけじゃなくて、逆にかっこいいというか。
「こんな所に居ててもダメだ・・・」
失恋で力も失っても、それでもこれからの部活に行かなくちゃ。
両手でゆっくりと立ち上がり、膝に付いた砂埃を払い落とす。
それでも、ため息だけは止まらなく、一歩ずつ進む度に大きな吐息が漏れ出てしまう。
「部活、部活・・・」
ゆっくりとした足取りで、廊下を歩き、部活で使っている教室の扉を開けた。
「こんにちはー・・・」
「いらっしゃーい。遅かったじゃない」
「あ・・・ちょっと、予定が入ってたので」
部長の御影先輩。
一個先輩で、誰でも気さくに接してくれる先輩。
滝本先輩は、どちらかというとクールビューティーって感じの女性なんだけど、御影先輩はフレンドリーな感じで、やさしくて、とっても頼りになる。
「なになに、随分落ち込んでるじゃないの」
「そ、そんな事無いですよ。今日の僕はすっごく元気です!」
ふふん、と。自分でも空元気だとわかる笑顔を振りまいて、御影先輩の心配の種を除去しておく。
そう。普段の僕は、こんな性格じゃない。
自分で言うのも変な話かもしれないけど、僕の長所はなんといっても『笑顔』
これが無くなったら、僕が僕じゃなくなってしまう。
頭も良くないし、運動も並以下なのは傷だけど、それでも『笑顔』だけは誰にも負けない自信がある。
「ま、あなたから元気が無くなったら何も残らないからねぇ」
「ひ、ひどっ!?」
スカートを揺らしながら、ニカッと笑う御影先輩に思わずこちらの気分も晴れてくる。
先輩からは、いつもこんな風にからかわれている。
でも、怒ったりはしない。
からかわれた回数以上に、先輩にいろんな相談をしたし、助けてもらった事もあった。
そこに愛情があるって、わかってるから。
そもそも、愛情が無かったら無視されたりとか、もっと酷い目に遭わされたりするだろうし。
でも、御影先輩はそんな事一切しない。
だから、毎日ここに来るのが楽しみで楽しみで。
「こんちゃーっす」
「お、田辺も来たな」
「ふぁぁあ、眠いけど来てやりましたよ」
「・・・枕をかばんにかけてる時点で寝る気満々だな」
頭を掻き、大きな欠伸とともに田辺先輩も入ってきた。
滝本先輩と田辺先輩、同じクラスだって聞いてるから、先輩の色んな情報を得たくて時々いろんな事をお願いしているんだけど・・・
「田辺先輩」
「んあ?」
早速机に枕を置いて寝ようと企む先輩に一声かけて、意識をこちらに向けさせる。
「この前、滝本先輩の好きなもの聞いておいてってお願いしてた事、聞いてきてくれましたか?」
「あー・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、あの・・・」
次の言葉が気になってついつい口を開けると、田辺先輩の鼻から大きな提灯を作ったと思ったら、そのままこちらに顔を向けながら枕にコトン———
「はぁ・・・」
ため息を出すしか無かった。
田辺先輩にお願いした事は、九割以上の確率でこういう結果になる。
今日はまだ良いけど、例えば期日が決まっている物をお願いする時にもこんな事をされた時は、いくら先輩でも怒った事があった。
その時は御影先輩が全力で止めてくれたから、それ以上の事は起きなかったけど、田辺先輩のマイペースさはほとほと疲れてしまう。
「なに? なにか頼み事してたの?」
「あ、いえ。そんな大事な事じゃないんですよ」
「ふーん・・・」
さっきとは少し違う、今度はニヤリとした笑み。その笑みに僕の方が口を開けられないでいたけど、先輩の深追いはそこまでだった。
話を切り替えるスイッチのためか、先輩が大きな伸びをして深呼吸する。
「あともう一人くらい部員が欲しいね」
「そうですね」
今居るのは私と御影先輩と田辺先輩との三人だけ。
部活として申請出来るには、最低でもあと一人勧誘が必要になりそうだけど。
そう感じる度に、つくづく思う。
滝本先輩が入部してくれたら、ここも安泰なのに。
けど、そんな事を言っても仕方が無い。
まずは自分たちがやらなくちゃいけない事を、しっかりとやっていかないと。
「それじゃ、今日も部活頑張ろうか!」
「はい!」
御影先輩の一言に答えたのは僕だけ。
田辺先輩は、よだれまで流れ始めていた。
けど、これもいつもの事なんだよね。
「よし!」
両手で小さく握りこぶしを作る。今日も元気な部活動を過ごしていこう。
あ、自己紹介が遅れました。
僕の名前は『桐原天音』
家庭科部所属。一人称は『僕』だけど、れっきとした『女の子』です。
公開は、以下の内容で公開予定です。
・最短週一の不定期公開
・基本日曜日公開
よろしくお願いいたします。