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文官の目撃

「デューク様に印を貰って来い」

先輩文官に言われて渋々デューク様の居る執務室へと向かう

急遽必要になった書類を手に向かう足取りは重い


デューク様直属の文官になって3年

昔よりは慣れたと言っても、あの鋭い眼光は怖い

立場や爵位を笠に着て無体を強いる御方でないのは知っているけど

大公で宰相なんて、ほぼ国王陛下と同じ様な御方に緊張しない人は居ないだろう。


先輩に行けと言われてしまえば、後輩の女性文官の彼女は行くしかない

のそのそと歩いていたが、遂に執務室に到着してしまった・・・


運悪く、お昼の休憩時間になってしまった

以前同じ時間に訪れて睨まれた記憶が蘇る

「休みの時間を邪魔するな」と言わんばかりの態度が恐ろしかった




尚、これは彼女の被害妄想と先入観によるもので

デュークは怒ってもいなければ、休みの時間を邪魔するな、とも思っていない。



トントントン「失礼しまーす!」


中の返事を待つことも無く執務室に入ってしまった

やってしまった!つい、と心の中で自分の迂闊さを後悔したが、既に体は執務室。

怒られると身構えるも、


・・・



・・・・・・



・・・・・・・・・



あれ?

何も言われない、と顔を上げて中の様子を見た



「・・・すー、・・・すー」


「・・・」


デューク様に膝枕をして、髪を優しく梳いているシンデレラ様が居た

その表情は正に愛しい人に向ける慈愛の顔で、メガネを外している姿を初めて見た

透き通った碧の瞳はとても美しく、差し込む光の加減で神々しく見える。


デューク様は眠っている、この人眠るんだ・・・などと失礼な事を思いながらも、信じられない光景に言葉を失う文官。



ポーっとシンデレラに見蕩れていたのは数分か、もしかすると数十秒にも満たない時間だった

ふと、目が合う


「どうしましたか?」


「あ、えと、デューク様に印を貰いに・・・」


「・・・ごめんなさい、ついさっき眠ってしまって、少しだけ待って下さい」


「あ、いえ!こちらこそ、出直しますのでお気になさらず!」


「ありがとうございます、伝えておきます」


「はい、失礼します」


シンデレラ様にドキドキしながら執務室を出る


「あ、あれ?シンデレラ様ってあんなにお綺麗だったかな・・・」


「やっぱり、そう思うか?」


「へ?」


文官の独り言に、護衛騎士が同意する


「俺も最近思ったが、シンデレラ様って最初は本当にモッサリしていたよな」


「で、ですよね!」


ぐるぐる瓶底メガネに三つ編み、暗い髪色に、猫背

パッとしないのは明らかだった

だけど、たった今見たシンデレラ様は

整った顔立ちで瞳は美しく

背筋もピンと伸びて、そのお陰か胸もかなり立派だと判明した、猫背では分からない筈だ・・・

敢えて言うのなら、ドレスの色味とデザインがひと昔前だけど

歳相応のドレスを身に纏えば相当な・・・


「「なんであんな格好なんだろ・・・」」


「え?」「お?」


文官と騎士は顔を見合わせる

互いに考えていた事は同じ様でハモってしまった


「ふふ」「はは」


おかしくて笑い合う2人


「まあ、宰相様の婚約者だ、俺は彼女がどんな姿だろうが護るだけだ」


「私も別にデューク様の婚約者さんが綺麗でもなんでも関係ありません、何か理由があるんですよ」


「だな」


宰相程の地位に居るデューク

そのデュークの横に並ぶのなら生まれ持った容姿はどうにもならないにしても、しっかり着飾るのは当然と言える

それを敢えてしないのは理由があるのだろう


2人は追求もそこそこに己の職務に邁進するだけ、そう納得をして余計な首を突っ込む真似はしなかった。





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