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王子

バン!乱暴に執務室の扉が開かれてズカズカと1人の男性が入って来ました


王子です。


「デュークは」


「会議に行っております」


「待つか、茶を貰おう」


「はい・・・」


偉そうに王子はドッカリとソファーにふんぞり返ります

絡むと面倒なので言われたまま、言われた事しかしませんよ。


カチャ・・・、無言でソーサーを置き、そそと壁際に控えます


勘ですが多分私が座ると、勝手に王子(おれ)と同席か?みたいな感じで叱責して来そうな不機嫌オーラがあります


て、何故私が王子にお茶を入れないといけないのか・・・

弱小とはいえ一応伯爵令嬢なんですけど、王子がやれといったらやらないといけないのかな?



「ッチ、不味い、やはりアーリンの入れた茶以外は止めておくんだった」


と、早速の悪態を吐きます

アーリンと言うのはベテランの侍女官様で、恐らくこの城の中で最も侍女として優れた御方だと思います


何故私が知っているかと言うと

不慣れな私を気に掛けて下さって、時間を見付けては何かとお世話して戴いたから

仲良くなってお茶の入れ方も教わったんです


「これなら陛下方に出しても問題無い程ですよ、シンデレラ様は変わった方ですね」


と、アーリン様のお墨付き貰ったんだけどなー

仮に味が同じでも私がやったものには難癖付けられそうだ

やたらと王子は私に敵意剥き出しで嫌になる


あ、私が変わった方というのは本職の侍女を目指す訳でも無いのに真面目にお茶の入れ方を覚えたからです

単純に料理もそうですが、美味しく出せるなら覚えて損は無いと思うんですけど

実際、教わったお茶をデューク様に出したらとても喜んでいましたしね!

人が喜ぶのを見るのは良いものです、特に好きな人が笑顔なら私も笑顔になれますから。



「・・・無愛想な女だな」


「・・・」

はあ、すいません。

単純に貴方に愛想を振り撒くつもりが無いだけです


「不味い茶を出した謝罪も無いのか?」


謝罪って何様だよこの人!

王子様か・・・


「申し訳ございません・・・」


「ふん」


1ふん戴きました!

やっぱり王族だけあって態度がデカいよね、いや王族だから普通なのか

これは近くに居てもお互いに良い方には転がらないなー

キッチンでお昼の下拵えでもしよう


基本昼食は屋敷の料理人が作ったお弁当をバスケットに入れて持って来ている

但し、私も料理を出来るという事で執務室にあるキッチンで手料理を振舞っていた

今日はその日、いつものバスケットに屋敷から材料だけ用意して来るのだ


「ふんふんふん、ふふんふーん」


「チュ、」


チュー太が胸元から出て来た

私の護衛として常にチュー太は傍に居る、基本的には服の中に隠れて貰っている

デューク様の傍がこの国で最も安全な場所だけど

今回みたいに会議に行ったりする場合は私は1人になってしまう

かと言って大公家の護衛を置くのも、城の、王家の安全に対して角が立つのでチュー太に白羽の矢が立った


ネズミの姿のままでも気を引いたり出来るし

いざとなれば人型になって戦う事も出来る

しかもお屋敷の護衛と手合わせしたら勝ってしまうほどの強さで驚いた



「チュー太、今王子が来てるから隠れてて」


「チュ!分かったでチュ!」


「ごめんね、後でチーズあげるから」


「チュチュ!」


了解!と敬礼、モゾっと服の中に戻ったのを確認して下拵えを再開した






「ふーんふふー、んーんー♪」


「おい!」


突然怒鳴り声に近い強い声で呼ばれて驚く

王子がキッチンの入り口に立っていた


「客を置いて何をしている」


「・・・デューク様の昼食の準備を」


「お前が?」


「・・・はい」


「ふうん、なら俺も貰おうか」


はあああぁぁん!?二人分、デューク様と私の分量しか材料持って来てないんだけど!

何なの、何様なのコイツ!王子様だよ!知ってるよ!


「かしこまりました・・・」


えーい!反論するのも面倒臭いし、王様俺様王子様と喧嘩するのも馬鹿らしい


シンデレラは自分の分を諦めて料理を作る事にした



そして丁度お昼前にデュークが戻って来て

王子、デューク、シンデレラで昼食を摂ることになったのだが・・・


「やはり素人だな、デューク出直す」


王子は1口2口だけ食べて執務室を出て行った

ミシ・・・、シンデレラが持つ木のカップが軋みをあげる


「・・・シンデレラ、すまん、彼奴は、いや王族とはああいう存在なのだ」


「分かっています」


メニューはコロッケパン、チーズ、コンソメ野菜スープ

庶民的な料理しか出来ないけど

お屋敷で初めて作った時はデューク様も美味しいと言ってくれて

偶に作ってくれと言う程だった


バスケットに材料を入れて持ってくる都合上、そうそう凝った料理は作れない


何?フルコースでも出て来ると思った?

人の食卓に横から割り込んでおいてコレ?


ふざけんな


王子だかなんだか知らないけど、食べ物を粗末に扱うなよ

有り得ない、本当に有り得ない・・・


ちょっとだけ齧られて置いて行かれたパン

勿体ない、食材に罪は無いし

アイツの食べ掛けは嫌だけど食べるか


シンデレラのそんな心境をデュークは読んだのか、すかさず止める


「シンデレラ、他の男が口を付けた物を君に口にして欲しくない、私のと半分こにしよう。」


やだ、何このイケメン・・・


「デューク様好き!」


「只の独占欲だ、気にするな」


あ、もう好き!本当に好き!

こういう所って大事だと思うの、優しさというか思い遣りに溢れていて

そんな事をサラッと出来ちゃうデューク様

どんどん好きになってしまって困る!




王子の食べ残しはチュー太が人型になって全部食べてくれました

「こんなに美味しいものを残すなんてどうかしてるでチュー」

チュー太もいい子だった。


王族、いえ、王子は絵に描いた様な偉そうな奴だと再確認しました

国王陛下と王妃陛下はそんな感じじゃ無かったのにな

優しいオジ様オバ様といった様子で、しっかりデューク(宰相)様の婚約者だと認識した態度だったのに

王子はどちらかと言えば侍女扱いして来ていた


疑問なんだけど、私は転生してシンデレラになった

王子から逃走中な訳だけど

仮に物語通り王子様に嫁いでもシンデレラは上手くいったのかな?

勿論王子だって惚れた相手には優しくするだろうけど

ふとした拍子に見える気位の高さというか傲慢さというか

個人的にはかなり引っ掛かる部分だ、性格の不一致。


王族、次期国王だから偉いし、それを許される立場なのは理解出来るけど

そんな人が夫になるって大変だよ?


逆に、だ。

デューク様も王子と似た立場の筈なのにそういった面が全く無い

大公家当主、王国宰相、国王に並び立つ存在

氷の宰相と呼ばれているのは知っているから、私の前と職務中では顔を使い分けているのだろう

それでもこの2、3ヶ月過ごして思うのは、素敵な紳士、これに尽きる


かたや見目麗しい王子様、但し性格に難アリ

かたや一見冷たい宰相様、但し性格は穏やか紳士



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