お仕事
「おはようございます、王子殿下」
「・・・ふん」
朝必ず王子とは顔合わせします
ええ、私シンデレラ、只今デューク様の補助役として付き従っているのです
王子からは「ふん」か「・・・」というお返事しか頂けません
デューク様の分析によると
王子が嫁探しをしているのに、デューク様が婚約者を職場に連れ歩いているから気に食わない
特にポッと出た私が婚約者ヅラして幼馴染のデューク様の横にいるから、と。
王子様、そんな器で大丈夫なんですか?次期王様なんですよね?
幼馴染が婚約者連れて仕事するのが気に食わないなんて・・・
と素直に思った事を言ったらデューク様は大声で爆笑していました
いえ、まあ、全ての原因である私が言うなって話なんですけど
「気にするな、私はシンデレラが居てくれて助かっている」
「お茶と食事の準備しかしてませんけど?」
そう、補助役と言っても部外者、書類仕事を手伝う訳にもいかず
デューク様の休憩時間を見計らってお茶と菓子の準備
お昼は偶に執務室に備え付けてあるキッチン室を使って食事を作ったり、お弁当を広げたりしているだけ
他の時間はリュシエルお母様とカイトお父様から渡された課題の勉強、編み物、読書とゆっくり過ごしています
宰相の執務室だけあって各部署から人の出入りが結構あります
無難にお茶を出して静かにするだけです
一応、偶に、ごく稀に私の事を侍女扱いする人がいますが、その時はデューク様が婚約者だと紹介します
大体は「え!?コレが!」みたいな反応ですが、それで構いません
デューク様の隣に居る地味メガネは婚約者だ、という事実を周知させる事が目的ですからね
毎朝デュークと一緒に王子にも挨拶をしに行きます
バレません、全然。
これから1週間毎に変装は変更していきます
取り敢えず厚い瓶底メガネが普通の瓶底メガネになりました。
バレません!
そんな訳で特に仕事も無くお屋敷に居た時と変わらない時間を過ごしているのですが、デューク様から言わせると、
「そのお茶と食事の準備もまともに出来ない者が多くてな・・・」
聞けば、王子に劣るとはいえ大公様の妻の座を射止めようと侍女達がこぞって色々と仕掛けてくるそう
大体お城の侍女って3割位はお貴族様の泊付けの為にお嬢様が来ていたり、結婚相手を見付けに来ていたりするんですよね
デューク様付きの侍女となれば接触する機会も多くなります、その担当も家の力を使ってとまかり通ってしまうので
デューク様の元にはそういう目的の侍女が集まる。
お茶の中や食べ物に髪の毛や身体の一部(一時恋愛のおまじないで流行ったらしい)を混ぜられたり
やたらと不必要なボディータッチが多かったり
香水がキツかったり
徐ろに侍女服を脱ぎ始めたりと
仕事の邪魔にしかならなかったそうで、追い出して大公家の者を連れて来ていた
それも私が雑用補助をする事で全て解決
普通のお茶に普通の食べ物(当たり前)
不必要なボディータッチ(寧ろやってくれ)
香水(着けてません)
服を徐ろに・・・(脱ぎません)
「普通って大事ですよね、分かります」
「ああ・・・」
そりゃあ「氷の宰相」対応にもなるってもんですよ。
「1度だけあったのは、休憩から帰って来たら執務机の上でベビードールを来た女が・・・」
「・・・」
ドン引きです、執務室は夜のお店なんですか?
「まあ、私の方は大丈夫だ、シンデレラのお陰で安心して仕事に集中していられる。
シンデレラはどうだ? 変わりないか?」
「私は、まあ偶に本職の侍女に間違われるだけですね
多分侍女服着たら普通に混ざれると思います」
「普通に家事やってるからな・・・、大体の人には会ったからこれからはそうそう間違われないとは思うが、なにかあったら言ってくれ」
「はい」
執務室にはデューク様の机の他に客間やキッチン、トイレもあるので1人では城を出歩きません
特に困ったことも無く計画は進行中です。