対面
「陛下お久しぶりです」
「ああ久しぶりだねデューク、その子が?」
「はい、シンデレラ」
「お初にお目にかかります国王陛下・・・、シンデレラ・トゥラヴス伯爵令嬢です・・・」
「あ、ああ・・・、じみ・・・、とても素朴な娘さんだね、なあエリス」
「え、ええ、とても真面目そうな子ね・・・」
「・・・」コクリ・・・
失礼にならない程度、ボソボソと陰気に挨拶します
明らかに国王陛下も王妃陛下も困惑しているのが伝わりますが問題はそこではありません
声も小さ目に、何故なら・・・
「デューク!それがお前の嫁か?」
王子も居ますからね。
「まだ婚約者だが、あと私の婚約者をそれ呼ばわりは止めてもらおう」
「お前見た目はそれなりに良いのに、そんな女で良いのか?」
「ライン!なんて事を!」
「そうよ!貴方の価値観を他人に押し付けないの!」
うんうん、そうですよ!
美醜は人それぞれですし、頭からそれとかそんな女扱いなんて紳士とは言えませんよ
そして残念な事に、いえ私達にとっては幸運な事に全くもってバレておりません
まあ舞踏会の翌日に学校でのガラスの靴テストで王子も立ち会っていてもスルー安定でしたから
完全に私のガワしか見ていないのでしょうね・・・
「私にはシンデレラ以外有り得ない、彼女しかな」
「ふーん、そうか、じゃあ俺はこれで」
「ライン!」
叱責する国王陛下を無視して王子は出て行ってしまった
「ごめんなさい、ラインは消えた姫君が見つからなくて最近ずっと不機嫌で・・・」
「いえ、現状で私の婚約者の紹介は嫌味に取られても仕方ありませんから」
「すまんなデューク、ラインもいい加減諦めてしまえばいいものを・・・
国中に報せを出して1ヶ月強、姫君が現れないのはどう考えてもフラレたというのに」
そうなんですよね、通常の思考であれば
王子の止める声を無視して逃げた
しかも探していると国中に王命で報せても
件の姫が現れないのは、本人が王子の隣に立つ事を良しとしていない証です
今も捜索は続いていて
何故か王子は諦めないんですよね・・・
「ラインはこれまで女性に袖にされる事が無かったから
きっと意地になっているのよね・・・」
あー、王子+美形のプライドという感じですか
「儂は初恋だと思うがな」
「ふふ、それもあるかも知れません・・・」
「と、それより今日はデュークの事だな
驚いたぞ、突然デュークの婚約者が攫われたなどと聞いた時は」
「そうですよ、知らない婚約者にも、攫われた事にも」
「申し訳ございません、彼女の家はトゥラヴス伯爵家で当主不在なものですから・・・」
「ふむ、トゥラヴス家だと数年前に当主が亡くなったのだったかな、今は後妻である奥方が当主代行だったか?」
「はい、当主不在、直系はシンデレラだけでしたので話し合いに時間が掛かりまして
それも少し前に済んだのですが、彼女の成人を待ってからと」
「そうか、直系が・・・」
婚約(偽)の時は適当に誤魔化す予定が
デューク様の本気の愛と、私も好きになってしまって
婚約(真)になった事で設定が本当になってしまいました
一応、お母様はトゥラヴス伯爵家当主代行のまま
私は直系で本来婿を取らなければなりませんが、夫になるデューク様は大公家の跡取り
どちらかが家を出なくてはなりません、此処は常識的な判断で
私がデューク様の所へ嫁ぎ
私達の子供、2人目以降がトゥラヴス家を継ぐという話になりました
長男は勿論大公家跡取りとして、です。
2人目以降と言うのは都合良く男の子が生まれるとは限らないので
男の子でも女の子でも、外から婿か嫁を呼べば解決という話になります。
ここで大事なのは私の血が通っているという事ですからね
「王子の件もありまして機会を見計らっていましたが、そこで彼女が攫われて」
「良い良い、皆まで言うな、シンデレラ嬢には辛い事だろうからな」
「・・・ありがとうございます」
「それで婚約の事なのですが、」
「家同士で話し合いが済んでいるなら儂からは何も言わんよ、デュークの事だ礼儀は尽くしておろう?」
「おめでとう、デューク、シンデレラさん」
「はい、ありがとうございます」
サクッと国王陛下達に祝福されて御挨拶も終わりました!
特に問題も無く好きにしていい、とは
これまでのデューク様、お父様、ロード大公家の積み重ねた信頼あってこそですね。