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正体

「シンデレラ、君は数年前いや10年くらいになるか

毎週決まった日、決まった時間に出掛けていただろう?」


「え、ええ、まあ・・・」


「そこの通りを通って、下町にでも行っていたのかな」


「あ・・・」


「気付いた様だね、丁度屋敷の前の通りを金髪の女の子が共も付けずに1人で出歩いている

まあ、目に付くよね」


「・・・」

確かに・・・


「君がそこの通りを通る時、私はほぼ休みの日でね

最初は何気なしに眺めていたんだけど、見ていて不思議に思ったんだ、貴族の子供が1人で、というのもあるけど、行く時は下を向いて、帰りはご機嫌でスキップをしている時もあったね」


「う、」


「ある日、君は決まった日に通らなかった

毎週欠かさず通っていたのに何故か、何があったのかと気になってね

でも翌週、同じ時間に今度は家族4人が歩いて行った、その時は君が居なくて

でも後から気付いたのだけど、あの日から君は髪を染めて眼鏡まで掛けていたんだ」


それは多分お父様が亡くなった週と、その翌週の事だろう

お葬式があって出掛けなかった週

そして、お母様と姉様達との誤解が解けて、みんなで下町にお出掛けした日だ。


「その後は、友達か姉妹かな?3人で行く事が多くなっていったね

近年は殆ど出歩かなくなった

私は舞踏会の日まで、金髪のあの子はどこかヘ引っ越したか何かあったのだろうと思っていた」


「舞踏会の日まで?」





「ああ、でも舞踏会、王子の前に現れた姫君を見て気付いた。

家族と出掛けていた、あの子だ、とね、

歩き方には癖があると言ったけど、そもそも癖のない人間なんか居ない」


なるほど、昔から私の歩き方を見ていたから

地味子シンデレラ=美少女シンデレラにも自然と行き着いたのか

ん?、


「デューク様、それは私の事が消えた姫君に行き着く理由ですよね

私を助ける理由にはなっていないと思うのですが・・・」


「それは、その・・・」


「?」


デューク様が突然歯切れ悪くなった


「王子とダンスをしただろう?」


「はい・・・」


「まあ、知っての通り王子とは腐れ縁でね、あいつの事は大体知っている

君を見た瞬間、アイツが君に恋に落ちた事も分かってしまった

王子はこの子を選ぶだろう、娘も王子に求められたとなれば拒否しないだろう、と」


「・・・」


「だけど、ダンスが終わって君は「逃げた」ね、しかもとても嫌そうに」


「まあ・・・」


「その姿を見て君に興味を持ってね、元々屋敷から眺めて話したいと思ってはいたんだ、でも・・・」


「でも?」


1度言葉を切るデューク様

言い難い事なのか、逡巡した様子が見て取れる



「実際シンデレラに会ったら、その、・・・だな」


「??」


「端的に言って、惚れてしまった・・・」


「・・・はあ」


「・・・」


「はあっ!?」


デューク大公様が私に惚れた!?

アレ、私瓶底メガネ掛けてるよね?掛けてる!

髪もくすんだブロンドだよね?くすんでる!

格好も下町の拠点に紛れるつもりだから気取った服は着てないし・・・


実際に会ったらって事は、この姿に!?


「あの、デュ、、えと・・・」


「・・・」


アワアワと何を言っていいのか分からなくなる

デューク様は私の目の前で来て膝を付いて、じっと待っていた


「こ、この姿ですよ?」


「私は美醜にはそんなに拘らない、・・・ああ、シンデレラは容姿に苦労したのか

似た経験があるよ、最も私の場合は容姿ではなく家や爵位だけどね」


聞けばデューク様は大公家の跡継ぎという事で

それ目的の女性が沢山寄って来ていたそうだ

下手な者と結婚する訳にもいかないし、何よりも欲に満ち、媚びた視線がどうしても受け入れられなかったという


そんな中、舞踏会で王子を袖にした私はこれまでの女性とは違うのでは無いか、そう思ったらしい

この国の次期国王たる王子に興味を示さないどころか、嫌悪を浮かべ逃げて行ったシンデレラとはどの様な女性なのか、と。


で、実際会ってみれば、媚びた様子は全く無い

デュークと呼んで構わないと言っても自分の考えを譲らずに話して来た私は余程珍しかった。

許した事はないが、これまでの女性なら嬉嬉として「デューク」と呼び、自分は大公様に気に入られたとでも吹聴する事は容易に想像出来た、と



いやいや私としては、貴族の考えは理解は出来ても自分では無理ってだけなんだけどね

極論で言えば、これまでデューク様が出会った女性達は王妃様か大公夫人になれるならば簡単に身体を許すって話だ。

子供産めばいいんだろう?みたいな・・・


現代の記憶がある私にとってそれはちょっと無理だ

お金や地位が欲しいなら相手が誰であれ結婚出来るという人も多からず少なからず居るとは思うけど

私は毎日の糧に困らない程度の生活であれば十分だと思うし

やはりお互いに好きな人と夫婦になりたいと思う

まあ男性経験ゼロですけどね?



「今すぐに答えを出さなくていい、王子との件は必ず解決すると約束しよう。

こんな状況では信じられないかも知れないが・・・」


「え、こんな状況?」


「ああ、これでは私を選ばなかったら分かってるんだろうな?と脅しているとも取れるから・・・」


「あ、ああ!」

なるほど、確かに!

現実的にデューク様が私の全てを握っている

騎士団を呼んで突き出してもいいし、王子の元に引っ張って行ってもいい

私は足を怪我しているから逃げる事も抵抗も出来ない


「でも、デューク様はそんなことはしませんよね?」


「勿論だ、そんな卑怯な事はしない」


うん、ほら、凄い良い人!

だって王子か自分か2択を迫るなら、それこそ此処に王子を呼んで

「すぐそこに王子が来ている、さあ今この場でどちらかを選べ」

で、良いのだから。


「この件が解決したら、私に機会をくれないか?」


手をそっと取られ、真剣な眼差しで見詰められる

どこまでもデューク様は紳士で、真摯でした。


男性経験が無い私は当然告白なんてされた事も有りません

う、顔が赤くなるのが分かります・・・


「あ、う、」


バン!!

扉が突然開かれて

「ダメよ!そんなの絶対に許さないわ」


そこにはデューク様のお母様、リュシエル・ロード様が立っていた。



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