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東京無職種 -トウキョウニイト-  作者: 疎達川るい
一幕 ― Configuration ―
6/14

5 魔女狩りの東京 III



 蒲田駅に入り込む線路の下は、駅の東西をつなぐ形の連絡通路が作られている。数十メートルにも渡る地下のトンネルだ。俺たちはチンピラ連中により、そこに連れ込まれてしまった。

 

「おい、待てよ。俺たちはニートじゃないって!」

「か、勘弁して欲しいんだな!」


 典夫と俺は必死に抵抗する。見た目からしてヤバイやつらにこんなところに連れてこられるとか、必ず嫌なことが起こるに違いない。


「じゃあニートじゃないって証明できんのか?」

「経済に貢献してるところ、見せてみろよ」

「いいぞカッちゃん!やっちゃって~」


 こいつらはそう言い、俺たちを取り囲む。


「はい、死刑~」


 首を傾げ、窪塚エミュレーターと化したチンピラAに、壁際に押し込められる。

 

「おい、人が来るかもしれないって……ほら!あっちあっち!」


 向こう側から連絡通路を歩いてくる人がいる。OLのようなスーツの女性が、ツカツカと。

 俺はそこを指差し、必死の説得をする。

 

「だからどうした?」

「誰もニートなんて助けねぇよ?」

「ニートをボコしても無罪だし~?」


 ギャハハハ!

 下品な笑い。

 そして奴らがこっちに向き直り、笑い顔が近寄ってくる。息が臭い。

 絶体絶命。もう逃げることは不可能なのか?このまま人生初ボコられをされてしまうのか?!


「はべっ!?」


 その時、カッちゃんと呼ばれていたチンピラが突如、もんどり打って倒れた。手足を広げ、その場でカエルのように腹ばいになっている。

 その後ろにいたのは、向こうからスタスタ歩いてきていた人だった。パンツルックのスーツに長身の……かなりの美人。

 その彼女がチンピラの延髄に一撃を食らわせた。事務的に、虫を払うように。俺はそれを見た。


「カッちゃん!大丈夫かよ!?」 


「ほ、ほまへ……はにひたんらよ?」


 受け身も取らず崩れ落ちたチンピラは地べたに転がり、ろれつの回ってない舌でそう言う。首から下が微動だにしていない。


「失礼、排除させていただきました」


 どういうことだ?俺は助かったのか?OLにしてはスタイリッシュすぎる彼女を見上げる。

 それより何より、とにかくここから去りたいんだが?


「この野郎……!よくもカッちゃんを!!」

「許さねぇ!!」


 リーダーを倒されたチンピラB・Cが逆上し、掴みかかろうとした、その時。


 ズガァン!


 いままで聞いたことのないような、耳をつんざく大音響とともに、血まみれの肉片が宙に舞った。

 半身に構えた彼女の片手には、拳銃が握られている。

 セミロングの髪から除くのは、どこか虚ろで無感動な眼差し。


「あ、ああ……」


 こいつ、やばい。

 一人を脊髄麻痺にしたかと思ったら、残り二人を撃った。頭の後ろがはじけてる。

 そこにぶちまけられた脳味噌……これはおそらく銃によるもの。こいつら二人は射殺されたことになる。映画なんかとは違って派手さはなく、ただ撃たれたやつが動かなくなった。これで人間が死んだなんて実感はない。

 そしてまばらに飛び散った脳味噌や頭蓋骨の破片。ともすれば「ピンクのお豆腐こぼしちゃった♡」で済みそうな光景だけど、火薬の臭いがこれは現実であるってビンビンに伝えてる。


「……っ!狭い空間で撃つと、やはり反響音がきついですね」


 銃を持った側の耳を押さえ、自分の耳の聞こえ具合を確かめるようにそう言ってる。

 その黒スーツ女がこっちに向き直ったかと思ったら、俺に話しかけてきた。

 

「そろそろ時間ですので、私と一緒に来て下さい」


 銃声で遠くなった耳に、その言葉が響く。


「ほい!ほまえ!!あんらよ!!なんなんらよ!!」


 ヒルのように這いつくばったカッちゃんが、回らない舌で必死に叫ぶのを尻目に、来た道を戻るよう促される。俺と典夫は黙ってそれに従う。

 こいつはいとも簡単に、映画のように人間を射殺してみせた奴。どんなに不服だろうが、従わざるを得ない。

 畜生、こんな奴に連行されるくらいなら、ヤンキーに絡まれてるほうがまだマシかもしれない。



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