1/1
序章:喪失
グーラである私が初めてヒトを喰らった時に思ったこと。
それは……
「これじゃない。」
私は確かに思ったのだ。
しかし、血統の高いグール一族に生まれた身として、口には出せなかった。
「どう、初めての味は?」
母が優しく微笑みかける。横では父も期待を込めた表情をしてる。
「美味しいです。」
私は精一杯の引きつった笑顔をした。
両親はそれに気づかず喜んだ。
不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い
目の前が真っ白になる。遠くから、使用人たちの慌てる物音と母の嘆き声、父の叱責が聞こえた。
そっと目を覚ますと、目の前には私の体内に入ったはずの肉片がより嫌悪感を増して転がっていた。
「どういう事だ!」
「どういう事なの、○○……。」
どうしよう、ヒトが食べられないなんて。両親を悲しませる。苦しめる。一族の恥だ。もう認めてもらえない。
私はヒトじゃない。ヒトなんかじゃ……。
「お前はもう、一族の一員ではない。グーラではない!」